ドローンについては、そのビジネスの可能性も含めて、様々な議論がされています。
弊所法律事務所でも、3年ほど前から、ドローン関連企業から、ご相談を受けており、ドローン関連の顧問先も、10社を超えています。
また、私が経営しているベンチャーキャピタル会社でも、ドローン企業に投資をしているため、法律だけでなく、ビジネス面でも、精通しています。
ドローンに関する法律については、当ブログでも、以前から、以下のような記事を書いています。
ドローンレースを行うときの法律的注意点を弁護士が解説 | IT企業のインターネット法務、法律に強い弁護士|中野秀俊
食品日用品の配送でドローンを使う場合の法律をドローンに詳しい弁護士が解説! | IT企業のインターネット法務、法律に強い弁護士|中野秀俊
ドローンが事故を起こしてしまった場合、誰がどのような責任を負うのかについては、議論があります。最近のドローンの事故としては、以下のようなものがあります。
相次ぐドローン落下事故 専門家が正しい使用法を解説
ドローン、伊丹空港を飛行か JAL便が着陸をやり直し – 産経ニュース
姫路城にまたドローンが、操縦名乗り出た米国人男性から事情聴く – 産経WEST
このように事故事例には、事欠かないドローンですが、ドローンが事故を起こした場合、誰がどのような責任を負うのでしょうか?
ドローン事故が起きた場合に、誰かがケガなどの損害を被ったとします。被害者としては、損害を賠償してもらいたいと考えて、損害賠償を請求することが考えられます。
損害賠償の請求対象として、考えられるのは、以下の人たちです。
順番に、その責任についてみていきます。
ドローンを操縦する人は、不法行為責任を負う可能性があります。
不法行為責任とは、故意または過失により、他人に損害を与えたときに、損害賠償責任を負うというものです。
ドローンを操縦する人は、まさに事故を引き起こした張本人になりますので、損害賠償責任を負うことは、理解できると思います。
ここで問題になるのは、ドローン操縦者に、故意または過失があるのかということになります。
「故意=わざと」「過失=うっかり」ということです。
わざと、ドローンを人、物にぶつけたというのであれば、責任を負うのは、当然です。
では、ドローン操縦者に過失があるかどうかは、どうやって判断するのでしょうか。
過失とは、不注意により、うっかり損害を与えたしまった場合を言います。
例えば以下のような場合が挙げられます。
反対に、問題なくドローンを飛ばしていたのに、予期できない突然の強風、落雷などで、ドローンが墜落してしまった場合には、ドローン操縦者に過失はなく、責任は生じないことになります。
実際に裁判なとでは、ドローン事故などが発生した場合には、ドローン操縦者に過失の推定が及んでいるような状態です。
よって、ドローン操縦者側で過失がなかったを主張、立証しないと、裁判で負けるなどのリスクが生じます。
そして、ドローン操縦者に故意又は過失があった場合で、他人に損害を加えた場合には、損害賠償責任を負うことになります。
他人の損害は、他人の身体や他人の建物などに危害を加えた場合に、発生します。
他人の身体に危害を加えた場合には、ケガの状況や通院歴などから、損害の金額を算定します。他人の建物などの物を壊した場合には、その修理費などが損害額になります。
ドローン操縦者が、個人で活動している場合には、問題になりませんが、ドローン操縦者が企業に属していた場合、ドローン操縦者だけでなく、当該企業にも、損害賠償責任が生じる可能性があります。
これを使用者責任といいます。
所属する企業が使用者責任を負う場合とは、ドローン操縦者が、その企業の事業として、ドローンを操縦していた場合です。
つまり、ドローン事業者が、プライベートで操縦していて、事故を起こした場合には、所属する企業は責任を負いません。
一方、ドローン操縦者が、所属する企業の業務の一環として、操縦していた場合には、企業は責任を負うことになるのです。
ただし、法律上は、以下の場合には、企業は責任を負わないとされています。
使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
つまり、企業が間違いないドローン操縦者についての人選をし、ドローン操縦者をしっかり監督していた場合などには、責任を負わないとしています。
しかし、この免責要件については、最近の判例で認められたことはありません。
実質上、ドローン操縦者が事故を起こし、不法行為責任が認められる場合で、それが業務上の事故であった場合には、企業は責任を免れないことになります。
次に、事故を起こしたドローンを製造したメーカーに責任が及ぶかが問題になります。つまり、ドローン自体に問題があって、事故に繋がったような場合です。
ここで、問題となるのは、製造物責任です。
製造物責任が認められるためには、以下の要件が必要となります。
この場合の「欠陥」とは、通常有すべき安全性を欠いていることです。
欠陥の判断にあたっては、製造者が知っているか否かにかかわらず、不具合がありそれが通常有すべき安全性を欠いている場合には、欠陥があったと認定されます。
例えば、通常のドローン操縦にも耐えられないようなドローンを製造してしまった場合には、ドローンメーカーも責任を負うのです。
ただし、ドローンメーカー側の主張としては、「開発危険の抗弁」というものがあります。
これは、ドローンに欠陥があったとしても、ドローンを製造したときの科学または技術水準では、当該ドローンに欠陥があることを認識することができなかったことを主張立証することにより、製造物責任が否定されるというものです。
ドローンメーカーとしては、開発当時の技術水準で、問題ないものを製造すればよいことになります。ただし、実際の裁判で、開発危険の抗弁が認められた例は、ほとんどありません。
よって、ドローンメーカーとしては、ドローンに欠陥があると認定されてしまうと、責任を負うことになるのです。
ドローンのイベントを開催する場合には、通常、ドローンイベントの主催者がいます。
広告代理店であったり、イベント会社などが多いでしょう。ドローンイベントで、ドローンによる事故があった場合には、ドローンイベントの企画者も責任を負う可能性があります。
以下のような場合には、イベントの企画者・主催者も、責任を負う場合があります。
以上が、民事上の責任です。民事上の責任は、言ってしまえば、損害賠償の問題であり、お金の問題です。
ですが、ドローンで事故を起こした場合には、刑事上の責任を負う場合があります。
故意にドローンを使って、人に傷害を与えた場合には、傷害罪が成立します。
また、結果的に人に当たらなかった場合でも、暴行罪は成立します。
また、故意にドローンを使って、人の所有物を壊した場合には、器物損壊罪になりますので、注意が必要です。
また、ドローンを飛ばして、墜落させ他人の業務を妨害した場合には、業務妨害罪が成立します。
過失により、人にケガを加えた場合には、過失傷害罪が成立します。
ドローンの飛行が仕事として行われていた場合には、業務上過失傷害の罪を負うことになります。
それでは、許認可権限のある行政との関係では、どのような責任を負うのでしょうか。
民事上、刑事上の責任は、裁判所から判断が下されるのに対して、行政上の責任は、まさに行政から下されることになります。
ドローンについては、航空法などの法律で規定されていますが、航空法などで、行政からの罰則については、規定されていません。
もっとも、航空法によって、ドローンの飛行については、国土交通大臣の承認が必要です。
この規定に違反した場合には、50万円以下の罰金が科せられることとなります。
ドローンビジネスをするのに知っておくべき法律【改正航空法と電波法】
よって、一度事故を起こした場合には、実質的に、以後、ドローン飛行の許可が下りないことが考えられます。
ドローンは、様々なビジネスに応用されています。以下の記事を参考にしてみてください!
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以上のようにドローンについては、事故が起きてしまうと、多大なる影響が生じてしまいます。
事前の予防策も含めて、ドローンにおける事故は、十分に注意をするようにしましょう!