IT法務・AI・暗号資産ブロックチェーンNFT・web3の法律に詳しい弁護士|中野秀俊
グローウィル国際法律事務所
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日本におけるドロ-ンに関する規定の歴史と将来的な法律

ロボット・AI・ドローンの法律

ドロ-ンにおける法律「ロードマップ」

ドローンについて、ここ3~4年ほどで、法律的な整備が急速されてきました。まずは、これまでのドローンにおける法律について、整理します。

まずは、2015年11月13日で、政府の「小型無人機に関する関係府省庁連絡会議」は、「小型無人機の安全な飛行の確保と『空の産業革命』の実現に向けた環境整備について」を取りまとめました。

その中では、技術開発、実用化支援など多方面にわたって環境整備を官民が連携して進めていくための課題を整理するとともに、「小型無人機に係る環境整備に向けた官民協議会」を立ち上げ、2016年夏頃を目途に制度設計の方向性を整理することを決定しました。

官民協議会は、2015年12月7日に第1回会議を開催して以降、継続的に議論を進めており、2016年4月28日「利活用と技術開発のロードマップと制度設計に関する論点整理(案)」を取りまとめ、官民が目指すべき方向としてのロードマップを示しました。

このロードマップでは、小型無人機の利用形態を、[目視内/外]、[有人/無人地帯]といった区分に応じて「飛行レベル1~4」として分類し、全国的な本格運用についての達成目標時期を示しています。

ドローンの主な運用形態は空撮や農薬散布等で、主に操縦者の目視内において遠隔操縦または自動飛行するというものです(レベル1、2)。

また、2018年10月26日付で、国土交通省は、日本郵便株式会社からのドローンによる福島県小高郵便局~浪江郵便局間約9kmの荷物配送(目視外補助者無し飛行)に向けた飛行申請について、平成30年10月26日付けで承認しました(レベル3)。

2020年代頃からは都市部等の有人地帯において多数の自律飛行するドローンが活躍する社会(レベル4)の実現を目指すこととされています。

ドローンの将来的な法律

官民協議会は、上記の2016年4月28日付の「利活用と技術開発のロードマップと制度設計に関する論点整理(案)」において、ドローンのさらなる安全確保に向けた制度設計についての論点整理を公表しました。

これに基づいて官民協議会が安全確保に向けた制度設計の具体的な方向性を取りまとめたものが、2016年7月29日付第5回の「小型無人機の更なる安全確保に向けた制度設計の方向性」です。

そこで取り上げられている今後の個別の取組みは多岐にわたりますが、現行法の下では手当てがされていない論点として、例えば機体の認証制度、操縦者の資格制度、事故の場合の義務報告制度といった各種枠組みの導入の是非について検討するとされていることが注目されます。

また、アルコールやドラッグの影響下での操縦や、飛行前の機体や周囲の点検についても、ルール整備の検討の必要性が指摘されています。これらの点については、ルール策定で先行するアメリカをはじめとする諸外国の規制との国際的調和の観点も重要と考えられます。

また、上記の論点整理や方向性においても言及されていますが、行政による規制以外にも、ドローンによる撮影等に伴うプライバシーの問題や上空飛行に伴う土地の所有権との関係についても、違法性の有無についての線引きは必ずしも明確ではありません。

プライバシーの問題に関して留意すべき事項については、総務省ガイドラインや国交省による「無人航空機(ドローン、ラジコン機等)の安全な飛行のためのガイドライン」が公表されています。

撮影画像をインターネット上で公開する場合にのみ適用がある限定的なものですし、紛争が発生すれば最終的な判断は裁判所が行うことになります。

以上のように、今後のドローンに関する制度設計についての本格的な議論はまだ始まったばかりですが、安全な運航とビジネスの健全な発展のバランスをとりつつ、スピード感のある法整備が行われていくことが引き続き期待されるところです。

さらに、前述の2016年7月29日付の第5回官民協議会において取りまとめられた「小型無人機の更なる安全確保に向けた制度設計の方向性」では、ドクターヘリ等とドローンの衝突への懸念等から、2017年3月末を目途に、航空機とドローンの衝突、ドローン同士の衝突を回避するためのルールの検討・調整を行うこととされました。

これを受けて2016年11月8日には「航空機と無人航空機相互間の安全確保と調和に向けた検討会」の第1回が開催され、2017年3月30日付の同検討会の第3回では、中間とりまとめ(案)が策定されました。

衝突回避ルールとして以下の要件があげられています。

  1. 航空機と無人航空機間で飛行の進路が交差し、または接近する場合には、無人航空機側が回避すること
  2. 無人航空機を飛行させる者が、無人航空機の飛行空域・周辺空域における航空機の飛行情報を事前に共有できるシステムを構築すること
  3. 無人航空機を飛行させる者は、無人航空機の飛行中に、その飛行空域・周辺空域において航行中の航空機を確認した場合は、無人航空機を安全な場所に着陸させるなどの回避行動をとること

これらの基本的ルールは、今後ガイドラインに盛り込むことや航空法に基づく審査要領の改正により許可・承認の要件となることが予定されています。