これまでの当ブログでも投稿一覧、ICOの法律規制については、記事を書いてきました。弊社(グローウィル国際法律事務所)にも、ICOをしたいという企業からの、ご相談がたくさん来ています。
金融庁でも、仮想通貨交換業・ICOに関する研究会(仮想通貨交換業等に関する研究会)を開催し、ICOについての法律的な規制を議論しています。
また、弊社は、仮想通貨、ICO事業者の顧問先が、50社以上あるため、日々、ICOの法律について、回答しています。また、日常的に、金融庁やその他の行政機関にも照会し、適法性を調査しています。
そこで、弊社がICOの法律実務を行っていく上で、最新のICOの法律的規制を解説していきます。
【2019年1月30日加筆】
最新の仮想通貨・ICOの法律は、以下を参照してください。
セキュリティトークンやユーティリティトークンなどのICO法律的規制の今後とは
徹底解説!2019年の仮想通貨(暗号資産)とICOの法律改正の4つのポイント
【2019年5月31日加筆】
仮想通貨(暗号資産)に関する法律改正が、成立しました。
暗号資産(仮想通貨)における法律改正が成立!その内容は?いつから施行?
【2020年1月20日加筆】
仮想通貨(暗号資産)の改正法における具体的ポイントが発表【政令・内閣府令案の公表】
【2020年4月5日加筆】
暗号資産(仮想通貨)の施行日は、2020年5月1日になりました。
弊社に、ご相談に来る方でも、「ICOを日本で行うことは、法律的に難しいんですよね」という知識をもっておられる方が増えてきました。現在、日本でICOを行うには、どのような規制があるのでしょうか?
自社の発行するトークンが、法律上の「仮想通貨」に該当すると、仮想通貨法の適用があります。
それでは、仮想通貨法上の「仮想通貨」とは一体どういうものなのでしょうか?
法律上の仮想通貨には、1号仮想通貨と2号仮想通貨があります。
1号仮想通貨、2号仮想通貨ともに、以下のように「不特定の者」というのがポイントになります。
この「不特定の者」というのは、金融庁ガイドラインでは以下のような要素を考慮するとされています。
以上のような定義によると、自社が発行するトークン、特にそれが上場前のトークンについては、以下の点から、法律上の仮想通貨には当たらないともいえそうです。
しかし、金融庁としては、以下のようなトークンについては、法律上の仮想通貨になると、解釈しています。
例えば、ICOのホワイトペーパーで、「このトークンは、将来的に上場します」といったような記載がされていると、金融庁としては、そのトークンは、「仮想通貨」に該当することになります。
また、トークンの機能として、特定の人間でも、売買や譲渡できる機能がついている、また、それを制限していないのであれば、法律上の「仮想通貨」になるのです。
ICOを日本で行う方法としては、以下の方法が考えられます。
上記のように、自社発行のトークンが、「仮想通貨」に該当すると、仮想通貨法の適用があるという話をしました。
そこで、自社発行トークンを、法律上の「仮想通貨」に該当させない必要があります。
例えば、将来的に上場する可能性のあるトークンについては、金融庁としては、法律上の「仮想通貨」に該当するとされているところから、ホワイトペーパーなどに、「トークンの上場可能性」については、記載しない。セミナーなどでも、「上場します」「上場可能性がある」という話はしないなどの対応が必要が必要です。
また、トークンの機能として、売買や譲渡できないという機能を実装することも必要になります。
法律上の仮想通貨に当たらないトークンの例としては、以下のようなものが挙げられます。
販売したトークンが、「会員券」のような性質をもったトークンです。例えば、そのトークンを所持しておくことにより、何か特典が得られる。そのトークンを持っているしか買えない商品があるなどです。
販売したトークン所持者に、事業利益を分配するというものです。以下のようなことが、いわゆるファンドをするというものです。
ファンドを行う場合には、金融商品取引法の規制が問題になるのですが、金商法上ファンド規制の対象となるのは、「出資者が金銭や有価証券によって出資した場合」と限定されています。
イーサリアムやビットコインは「仮想通貨」であり、「金銭や有価証券」ではないので、当然には、金商法上のファンド規制は受けません。
しかし、金融庁からの「ICO(Initial Coin Offering)について~利用者及び事業者に対する注意喚起~」では、次のようにされました。
ICOが投資としての性格を持つ場合、仮想通貨による購入であっても、実質的に法定通貨での購入と同視されるスキームについては、金融商品取引法の規制対象となると考えられます。
「実質的に法定通貨での購入と同視されるスキーム」というのが、どういうものかは明らかにされていませんが、例えば、事業者が、投資家に仮想通貨を用意して投資させている場合には、このスキームに当たる可能性が高いです。
自社発行トークンが、法律上の「仮想通貨」に該当するとなると、ビットコインやイーサリアムなどの「仮想通貨」を支払ってもらい、自社トークンという「仮想通貨」と交換するということになるので、「仮想通貨交換業」の取得が必要になります。
仮想通貨交換業者の具体的な取得手順については、以下を参照してください。
弊社でも、仮想通貨交換業の申請サポートを15社以上行っておりますが、最近では厳しくなっています。また、仮想通貨交換業の登録を受けた後も、厳しい監督が待っています。
先日も、ビットフライヤーをはじめ、仮想通貨交換業者が、一切に処分されました。
仮想通貨交換業を取得すれば、大々的に日本でICOができるため、非常に魅力的ですが、仮想通貨交換業の取得には、高いハードルがあります。
自社で、仮想通貨交換業の取得をしないのであれば、既存の仮想通貨交換業者に、販売・交換を委託することも考えられます。
例えば、テックビューロ社の「COMSA(コムサ)」を利用することも考えられます。
また、自社のトークンを、既存の仮想通貨交換業者に販売してもらうことも考えられます。ただ、日本で、新たな仮想通貨・トークンを販売することは、金融庁の認可が必要です。
日本で新たな仮想通貨(コイン・トークン)を販売する上での法律的規制とは
この認可は、仮想通貨交換業者が、金融庁に申請し、認可を受ける必要があります。
ただ、現在のところ、仮想通貨交換業者自身も、金融庁から立入検査などがあり、業務改善命令を受けるなど、自社体制の見直しもしています。すぐには、新規トークンの販売を受け入れるのは、難しいかもしれません。
ICOとは少し観点が異なりますが、自社のトークンについて、エアードロップ、つまり無償で、トークンを配布することが考えられます。これは、仮想通貨を販売・交換しているわけではないため、法律上は問題ありません。
例えば、以下のような手法です。
このような方法は、徐々に行われてきており、一つのモデルになります。
以上のように、日本でICO行うには、交換業の取得のハードルがあります。そこで、海外法人を設立し、ICOをすればいいのでは?という意見もありますが、これは、法律的にどうなのでしょうか?
まず、海外法人を立てて、日本居住者以外の人に、トークンを販売するというのは、どうなのでしょうか?結論的には、これは適法です。
そもそも、日本居住者に対して、販売しないのであれば、日本の法律が適用されません。
もっとも、ICOについては、インターネット上で行われるものであり、日本居住者が買おうと思えば、買えてしまいます。「日本居住者以外に販売」というのは、どのようにすればよいのでしょうか。
この点、「日本居住者以外」に販売いえるためには、以下のような対策が必要です。
以上のような対策が必要になります。要するに、日本居住者には売っていないということを徹底する必要があるのです。
それでは、海外法人が、日本居住者に、トークンを販売する場合には、どのような規制があるのでしょうか。
そもそも、海外法人なので、日本法が適用されないので、問題ないといえるのでしょうか?
マカオに本社をおくブロックチェーンラボ社については、以下のようなことをしていました。
中国ブロックチェーンラボに金融庁が警告 —— 登録申請せずに仮想通貨の交換業
金融庁は、ブロックチェーンラボ社については、日本で事業活動をしている実態があるとして、警告を出しました。
このように、海外法人でも、日本での営業実態があると、金融庁からは摘発される可能性があります。
タイに本社をおくTavittは、ICOに際して、日本の投資家からの資金調達も行っていました。
これに対して、金融庁は、海外法人が、日本居住者向けにトークンを販売するのは、「仮想通貨交換業」にあたり、これを無登録のまま行うことは資金決済法に違反するものであるとの警告がなされました。
このように、海外法人であっても、日本居住者向けに、ICOを行うと、金融庁からの警告がされる恐れがあるのです。
上記のように、海外法人が日本居住者向けにICOをした場合、金融庁からの警告がされる可能性があります。
これは、海外法人のメールアドレス宛に、金融庁から、「貴社の行っていることは、資金決済法に違反している恐れがある。」「以下の質問に答えてください」といった照会書面がきます。
では、金融庁から、海外法人に対して、罰則などを加えることができるのでしょうか?海外法人であれば、当然に日本法が適用されるわけではありません。
そのため、金融庁から、業務改善命令や業務停止命令を、海外法人にできるか(したとして、効力があるのか)は、不明確なところがあります。
また、資金決済法については、刑事罰もありますが、刑事罰の場合には、原則「属地主義」といって、日本で行為が行われていない場合には、刑事罰が科すことはできません。
また、海外法人に刑事罰を科すためには、その国に協力(捜査共助)してもらう必要があるため、非常にハードルが高いことは確かです。
これまで、金融庁は、海外法人に対して、警告は行っていますが、それ以上の措置はしていません。今後、金融庁として、どこまでの措置をするのかは、注目です。
日本法人が、日本居住者以外で売る場合には、仮想通貨交換業は必要なのでしょうか?
この点、あくまで日本居住者以外に販売するのであれば、不要です。もちろん、上記の日本居住者の除外を徹底することは、同様です。
ただし、あくまで日本法人なので、日本法が適用されますし、金融庁の監督範囲内です。
例えば、海外投資家に対して、変な売り方をして、当該国などから指摘された場合には、金融庁から日本法人に業務停止などの処分が下る可能性があります。
グローウィル国際法律事務所は、仮想通貨・ICOに関する法律問題を専門的に扱う日本でも数少ない法律事務所です。
弊所では、仮想通貨・Fintechビジネスを扱う顧問先企業が50社以上、交換業申請のサポートも15社行っており、相談件数は年間200件を超えています。
また、仮想通貨・Fintechに強い弁護士ということで、幻冬舎GOLD ONLINEで連載をしているなど、仮想通貨・Fintech関連の法律を扱う日本で有数の事務所として認められています。
仮想通貨・Fintech関連の法律は、グローウィル国際法律事務所にお任せください!