IT法務・AI・暗号資産ブロックチェーンNFT・web3の法律に詳しい弁護士|中野秀俊
グローウィル国際法律事務所
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日本で新たな仮想通貨(コイン・トークン)を販売する上での法律的規制とは

仮想通貨・デジタル通貨に関する法律

日本において新たな仮想通貨を販売したい

弊社(グローウィル国際法律事務所)には、Fintech事業者からの相談が非常に多くきています。

その中で、自社発行のコイン・トークンを、日本で販売したいという相談が、数多くきます。また、自社発行のコイン・トークンを、日本の仮想通貨取引所に上場させたいという相談も多いです。

そこで、日本で、自社発行の仮想通貨(トークン)を、日本で販売したいという場合では、法律的にどのようなことに気をつける必要があるのでしょうか。

仮想通貨の販売には、仮想通貨交換業の登録が必要

まず、日本において、仮想通貨の販売をする場合には、仮想通貨通貨交換業の登録が必要になります。仮想通貨通貨交換業に該当する事業は、以下の通りです。

  1. 仮想通貨の売買又は他の仮想通貨との交換
  2. 上記(1)行為の媒介、 取次ぎ又は代理
  3. 上記(1)(2)に関して 、 利用者の金銭又は仮想通貨の管理をすること

仮想通貨交換業の登録申請は、以下の記事で記載しておりますので、参考にしてください。

仮想通貨交換業登録申請の最新状況について仮想通貨(Fintech)に詳しい弁護士が解説

そのコインが、法律上の仮想通貨に当たるのか

上記の通り、日本において仮想通貨を販売する場合には、仮想通貨交換業の登録が必要になります。

そこで、まず、発売予定のコインが、法律上の仮想通貨に該当するかを検討する必要があります。

法律上の仮想通貨には、法律上、2つの種類があります。どちらかの要件を満たせば、法律上の仮想通貨になります。

1号仮想通貨

  1. 物品を購入し、若しくは借り受け、又は役務の提供を受ける場合に、これらの代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができ、かつ、
  2. 不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる財産的価値(電子機器その他の物に電子的方法により記録されているものに限り、本邦通貨及び外国通貨並びに通貨建資産を除く。次号において同じ。)であって、
  3. 電子情報処理組織を用いて移転することができるもの

2号仮想通貨

  1. 不特定の者を相手方としてビットコインなどの仮想通貨と相互に交換を行うことができる財産的価値であって
  2. 電子情報処理組織を用いて移転することができるもの

上記をまとめると、仮想通貨該当性のポイントとしては、以下の3つになります。

  • 「不特定の者に対して」使用できる
  • 「不特定の者を相手方として」購入及び売却を行うことができる
  • 「不特定の者を相手方として」ビットコインなどの仮想通貨と相互に交換を行うことができる

不特定の者」というのがポイントになります。この「不特定の者」というのは、金融庁ガイドラインでは以下のような要素を考慮するとされています。

  • 発行者と店舗等との間の契約等により、代価の弁済のために仮想通貨を使用可能な店舗等が限定されていないか
  • 発行者による制限なく、本邦通貨又は外国通貨との交換を行うことができるか

つまり、特定の発行者がいて、その発行者が認めた範囲内で使用できる場合には「仮想通貨」には該当しないのです。

よって、事業者としては、自社発行のコイン・トークンが、法律上の「仮想通貨」に該当するかを検討するようにしましょう。

日本で仮想通貨を販売する場合には、金融庁の認可が必要

上記のように自社発行コインが、仮想通貨に該当する場合に、すでに仮想通貨交換業登録を受けている取引所で、上場してもらいたいと思うかもしれません。

仮想通貨の販売について、すでに仮想通貨交換業登録を受けているところは、日本において、仮想通貨を販売できます。そうはいっても、どんな仮想通貨でも販売できるわけではありません。

金融庁のガイドラインでは、「当該仮想通貨の取扱いが仮想通貨交換業に係る取引に形式的に該当するとしても、利用者保護ないし公益性の観点から、仮想通貨交換業者が 取り扱うことが必ずしも適切でないものもあり得る」として、日本で販売予定の仮想通貨については、金融庁で認可したものしか売れないということになっています。

現在のところ、日本で販売していい仮想通貨は、仮想通貨交換業者登録一覧「取り扱う仮想通貨」に記載されているもののみです。列挙してみると、以下の通りです。

日本で販売していい仮想通貨(2018年4月1日時点)

BTC(ビットコイン)、ETH(イーサリウム)、BCH(ビットコインキャッシュ)、ETC(イーサリウムクラシック)、LTC(ライトコイン)、XRP(リップル)、MONA(モナコイン)、FSCC(フィスココイン)、NCXC(ネクスコイン)、CICC(カイカコイン)、XCP(カウンターパーティー)、ZAIF(ザイフ)、BCY(ビットクリスタル)、SJCX(ストレージコインエックス)、PEPECASH(ぺぺキャッシュ)、ZEN(ゼン)、XEM(ゼム(ネム))、QASH(キャッシュ)

これ以外の仮想通貨を販売するには、新たに金融庁にOKをもらわないといけません。

仮想通貨について、どのような審査が行われるか?

では、仮想通貨交換業者が、新たな仮想通貨を金融庁に認可してもらう場合、どのような審査が行われるのでしょうか?

仮想通貨交換業者は、「仮想通貨の該当性・適切性についての説明」という書面を提出させられます。この書面の中には、以下の項目を記載することになります。

  • 取り扱う仮想通貨
  • 仮想通貨該当性
  • 仮想通貨の適切性に係る見解

また、仮想通貨の適切性に係る見解」には、以下のことを記載する必要があります。

  • 仮想通貨の仕組み
  • 想定される用途
  • 流通状況
  • プログラムのバグなどの内在するリスク

このような書類を提出し、金融庁からの追加質問に応える必要があるのです。

時価総額が上位の仮想通貨は、問題ないでしょうが、新たなコインとなると、金融庁も慎重にならざるを得ません。

金融庁の認可を受けたい場合には、きちんとした資料と説明を金融庁に対してする必要があります。

新たなコイン・トークンを、日本で販売するには、ハードルが

以上のように、新たなコイン・トークンを日本で販売するには、金融庁の認可というハードルがあります。

事業者としては、いきなり日本で上場するのが難しいと感じた場合には、一旦、海外取引所で上場させ、実績を積んで日本で販売するということも考えられます。

いずれにしても、新たな仮想通貨を日本で販売するには、きちんとした手順を踏むようにしましょう。