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【薬機法(旧薬事法)】化粧品の「比較広告や「お客様の声」を載せるための法律ポイント解説

インターネット法律

化粧品で比較広告はOKなのか?

化粧品は、毎月のように新しい商品が販売されます。新商品は、新しい成分が入ったものや新製品がいくつも開発されています。

実際にライバル会社よりも、良い商品ができたら、それを消費者にアピールしたいと思うかもしれません。このようなライバル会社との「比較広告」は、許されるのでしょうか?

薬機法の規制

化粧品の広告については、「医薬品等適正広告基準」を守る必要があります。

その項目9で「他社の製品のひぼう広告の制限」という項目があり、その中で、以下のように規定されています。

医薬品等の品質、効能効果等、安全性その他について、他社の製品を誹謗するような広告は行わないものとする。

「他社の製品を誹謗」というのは、他社製品の悪口をいうのは、もちろんアウトですが、他社製品よりも、優れているというのもアウトとされています。

よって、他社製品の商品名やブランド名などは無断で使用することもアウトですので、注意しましょう。

禁止されている広告例とは

では、実際に、禁止されている広告例とは、どのようなものでしょうか?

①他社商品の悪口をいう広告

例:「A社のリップは、30年前に流行ったものであり、流行遅れだ。」

②他社商品の内容について表現した場合

例:「一般のメイク落としでは落としきれなかったメイクまで、さっぱり落とせる。」

③具体的な会社名は出していないものの、他社製品より優れていると表現した場合

例:「大手会社のものより保湿成分が優れた化粧水です」

薬機法(旧薬事法)上、許される比較広告とは

それでは、薬機法(旧薬事法)上、許される比較広告とは、どういったものでしょうか?

従来の自社製品と比較すること

他社製品との比較広告は禁止されていますが、自社製品との比較広告はOKです。。

自社の従来品と比較して、新商品の性能が良くなったという広告は、許されており、実際多くの化粧品でも用いられている広告です。

適正な比較方法を用いていること

また、自社製品と比較する場合でも、比較する方法が適正である必要があります。

  1. 比較広告で主張する内容が客観的に実証されていること
  2. 実証されている数値や事実を正確かつ適正に引用すること
  3. 比較の方法が公正であること

当たり前ですが、調査結果の数字などは、客観的に真実であるものしか記載できません。アンケートや成分調査についてはなどは、いい加減な数字を書くことのないようにしましょう。

また、調査の方法についても、きちんと根拠のある方法で行う必要があります。特に消費者の感想を聞く場合には、自社内よりも、第三者機関を使うことが望ましいといえます。

さらに、よく問題になるのが、数年前に行ったデータなど、古いデータにも関わらず、最新のデータかのように言うことです。

許される比較広告の記載例

許される比較広告の具体的な記載例は、どのようなものでしょうか?例えば、次のような記載になります。

「従来の化粧水と比べ、保湿力が30%アップ※。」
※当社従来品 ○○(商品名)と比較

「従来の化粧水」という表現ですと、他社製品も含めたものとも解釈できるため、注釈を入れる必要があります。

使用者の体験談はどこまで、許されるのか?

化粧品広告では、使用者の体験談が掲載されていることがよくあります。

化粧品は、直接肌につけるものであり、消費者に効果を実感してもらうために、体験談は有効なツールです。

一方、そのような有効なツールだからこそ、過剰な表現になりやすいことも事実であり、消費者庁からの摘発事例も、相次いでいます

そこで、適法な使用体験談の表記をみていきましょう。

薬機法(旧薬事法)上の規制

「医薬品等適正広告基準」では、使用体験談については、次の通り規制されています。

医薬品等の効能効果又は安全性について、具体的効能効果等又は安全性を摘示して、それが確実である保証をするような表現はしないものとする。

東京都福祉保健局の医薬品等適正広告基準の解説では、体験談について次のような記載があります。

愛用者の感謝状感謝の言葉等の例示及び「私も使っています。」等使用経験又は体験談的広告は、客観的裏付けとはなりえず、かえって消費者に対し医薬品等の効能効果等又は安全性について誤解を与えるおそれがあるので行わないこと。

使用体験談であっても、薬機法(旧薬事法)で認められた以外の効果を謳うのを禁止

そもそも、化粧品広告については、薬機法上、広告可能な効能効果としては、56項目に限定されています。

弁護士が解説する薬事法!化粧品・健康食品・サプリメントの広告表現の注意点まとめ

そして、使用体験談の中であっても、上記で認めらている以外の効能効果に触れる記載があると、ユーザから本当に送られた使用体験談だとしても、誤解を与える可能性があるとして禁止されています。

本当に、使用体験談として送られてきたものを、そのまま掲載できないのは、事業者として、もどかしいところですが、消費者保護を全面に置いている薬機法の考えからしたらやむを得ないことなのかもしれません。

使用体験談の具体的な記載方法

では、実際に、使用体験談を記載する上で、注意するべき点をみていきましょう。

使用感・香りのイメージ等の記載

上記のように、化粧品の効果についての表現はNGですが、使用感や香りのイメージ等の範囲内では、記載することができます。

具体的には、以下のようなものです。

  • ベタつきが少なく、サラサラとしていました
  • 肌のなじみがよく、スッーとしていくところが、満足です
  • 非常に落ち着く香りで、癒されています

このように、効能効果を記載せず、使用感や香りのイメージを共有するのは、なかなか線引きが難しいところです。

使用体験談は事実である必要

また、当たりまえですが、使用体験談は、実際に送られてきたものを掲載する必要があります。

使用体験談が送られてないのに、事業者が創作して、使用体験談を記載するようなことは、景品表示法違反になる可能性があります。

また、使用体験談の内容を変えて、事実ではない表現してしまうことも、景品表示法違反になる可能性があります。

行き過ぎた(過度な)表現はNG

上記のような使用感は香りのイメージでも、過度な表現はNGとされています。

何を記載すると、「過度」という明確な基準はないのが現状ですが、以下のような表現は、認められないでしょう。

  • 今までで、一番
  • 全ての化粧水の中で、最高品質

ただ「過度」がどうかは、評価を含むので、基準があいまいです。特に、ここ最近では、昨年まで大丈夫だったものが、ダメというケースも出てきています。

このあたりは、これまでの経験や行政対応の最新事情に精通している専門家と対応を進めていく必要があります。

「※あくまで個人の感想です」を書けば許される?

使用体験談には、「※あくまで個人の感想です」と記載されているのを、よくみかけます。

「個人の感想です」と記載すれば、何を書いても許されるのではないかという質問を受けますが、それは間違いです。「個人の感想です」と記載しても、違法な表現は違法なことには変わりません。

弊社でも、クライアントから、「お客様の声をそのまま載せているし、注意書きもつけているから問題ないですよね」というご質問を受けるのですが、それは通用しないのです。

あくまで、使用体験談やお客様の声も、広告の一部になので、薬機法(旧薬事法)の適用を受けることに注意しましょう。

比較広告、使用体験談(お客様の声)は、記載を十分に注意を

以上のように、比較広告や使用体験談については、薬機法(旧薬事法)上、非常に細かい制約があります。

その中で、消費者に訴求する広告をどう作るかは、模索する必要があります。

最近は、消費者庁からの規制も厳しくなってきているところです。事業者としては、十分注意するようにしてください。