システム開発やアプリ開発、AI開発などIT企業の法律・法務に強い弁護士事務所です
グローウィル国際法律事務所
03-6263-0447
10:00~18:00(月~金)

病院・歯科医院・美容外科クリニック必見!医療法改正における広告規制を弁護士が解説。

医療法の改正により、病院・歯科医院・美容クリニックの広告規制が

医療に関する広告については、患者等の利用者保護の観点から、医療法医療法施行規則等の規定によって制限されています。

従前、医療機関のウェブサイトに関しては、法律の規制対象ではなく、関係団体等の自主的な取り組みに任されていました。しかし、近年、美容医療に関する相談案件が増加したことから、医療機関のウェブサイトに対する法的規制が必要であるとの議論がされてきました。

そこで、平成29年に法が改正され、医療機関のウェブサイトも他の広告媒体と同様に規制の対象となりました。

医療法改正による広告規制 基本的な考え方

禁止される広告

広告規制で禁止される広告とは、以下のような広告です。

  1. 内容が虚偽の広告
  2. 比較優良広告・誇大広告・公序良俗違反の広告
  3. 患者の主観等に基づく体験談・誤信のおそれのある治療の前後の写真

以上の広告は、患者に著しく事実に反する情報を与えることで、適切な受診機会を喪失したり、不適切な医療を受けるおそれがあるため禁止されています。

広告可能な事項(詳細は、後述)

  1. 法6条の5第3項記載の事項
  2. 医業、歯科医業若しくは助産師の業務又は病院、診療所若しくは助産所に関して広告することができる事項(平成19年厚生労働省告示第108号)

以上の事項であっても、上記の情報については、患者の治療選択等に資する情報であることを前提とし、医療の内容等については、客観的な評価が可能であり、かつ事後的な検証が可能な事項に限られます。

また、法律で記載可能でも、景表法や医薬品医薬機器等法の他の法令に違反する場合があるため、注意が必要です。

規制違反の場合の罰則

医療法の広告規制に違反した広告を行っている場合、以下のような手順で、行政庁から指導及び措置がなされることが想定されます。

まず、法に違反することが疑われる広告を行政庁が発見した場合は、任意の調査として、広告を行っている医療機関に対して説明を求める等の調査が行われます。
そして、法に違反する広告と判断されると、広告の中止や内容を是正することを行政指導として医療機関に求めることになります。

次に、医療機関が上述の任意の調査に応じない場合や、応じても説明に疑義がある場合は、行政庁は、必要な報告を命じること(報告命令)、又は広告を行った者の事務所に立ち入り文書等の検査を実施すること(立入検査)ができます。

さらに、行政指導に従わない場合や、違反を繰り返す等の悪質な場合は、行政庁は当該広告の中止や是正の命令(中止命令・是正命令)をすることができます。

そして、以下のような場合には、行政庁の告発により、刑罰の対象となります。

  1. 直接罰の適用される虚偽広告を行った者が、中止・是正の行政指導に応じない場合
  2. 上述の報告命令に対し、報告を怠り、虚偽の報告をした場合
  3. 上述の立入検査を拒み、妨げた場合
  4. 上述の中止・是正命令に従わず、違反広告が是正されない場合

なお、刑罰としては、①④の場合は、6月以下の懲役又は30万円以下の罰金、となり、②③の場合は、20万円以下の罰金が科されます。

その他、行政処分として、医療機関の開設の許可の取り消し処分がなされる場合があります。また、行政指導に従わなかった場合は、原則として事例が公表されることになります。

広告規制の対象範囲

広告とは

そもそも、今回の規制の対象となる「広告」とは、なんなのでしょうか。法令、ガイドラインでは、以下のいずれの要件も満たすものと定義されています。

  1. 患者の受診等を誘引する意図があること(誘引性)
  2. 医業若しくは歯科医業を提供する者の指名若しくは名称又は病院名若しくは診療所の名称が特定可能であること(特定性)

広告に該当する媒体

広告の定義は上述のとおりですが、広告の規制対象となる媒体の具体例としては、以下のものが考えられます。

  • チラシ・パンフレット・ダイレクトメール
  • ポスター・看板
  • 新聞紙・雑誌・放送
  • Eメール・インターネット上の広告、ホームページ
  • 不特定多数者への説明会、相談会

広告に当たる例

事業者としては、広告規制を逃れるため、上記のような要件を満たさないように、ホームページなどの記載を変更することを考えるかもしれません。

しかし、ガイドラインでは、このような脱法的な行為に対しても、記載がされています。広告規制の対象となることを避けるために、外形的に上記①②に該当しないような表現を使っても、「広告」に当たる場合があるとされています。

例1:「医療法の広告規制のため、具体的な病院名は記載できません。」との表示があるが、住所・電話番号・ウェブサイトのアドレスから病院等が特定可能な場合

例2:治療法を紹介する書籍・冊子およびウェブサイトの形態を採っているが、特定の病院の名称が記載されていたり、電話番号やアドレスの記載から、一般人が容易に当該病院を特定できる場合

広告に当たらない例

学術論文・学術発表

学会や専門誌等で発表される学術論文、講演等は、社会通念上広告とみなされることはありません。

しかし、学術論文等を装いつつ、不特定多数者にダイレクトメールで送ることで、実際には特定の医療機関に対する患者の受診を増やすことを目的としているような場合は、広告として扱われます。

新聞や雑誌での記事

新聞や雑誌等の記事は、通常は広告には該当しません。

しかし、費用を負担して記事の掲載を依頼し、患者等を誘引するいわゆる記事風広告は、広告規制の対象となります。

患者が自ら掲載する体験談・手記

自己の経験や・家族からの伝聞により、特定の病院を推薦する手記を個人が作成し、出版物やしおり等により公表した場合や、口頭で評判を広める場合には、個人が特定の病院を推薦したにすぎないため、通常は広告に該当しません。

しかし、特定の病院からの依頼に基づくものであったり、病院から謝礼を受けている等の場合は、広告に該当します。

また、個人が、病院の経営に関与する者の家族等である場合で、病院の利益のためと認められる場合は、広告に該当します。

院内掲示・院内配布用パンフレット

院内掲示等は、その情報の受け手が既に受診している患者等に限定されるため、広告には該当せず、情報提供や広報として扱われます。

医療機関の職員募集に関する広告

求人広告等は、医療機関への受診を誘引するものではないため、規制対象の広告には該当しません。

禁止される広告

広告が可能とされていない事項の広告

医療に関する広告は、患者等の治療選択に資する情報として、法や広告告示により広告可能とされている事項を除いては、原則、広告が禁止されています。

例えば、「専門外来」との記載は、広告が可能な診療科名と誤認を与える事項なので、禁止されます。ただ、保険診療や健康診査等の広告可能な範囲(花粉症・糖尿病等)であれば、特定の治療や検査を外来の患者に実施する旨の広告は可能です。

また、死亡率や術後生存率等は、医療機能情報提供制度において報告が義務づけられている事項以外は、広告が禁止されています。さらに、未承認医薬品による治療の内容に関しても、広告が禁止されています。

虚偽広告

内容が虚偽の広告は、患者の受診決定に重大な影響を与えるため、罰則付きで禁止されています。具体例としては以下のものがあります。

  • 「絶対に安全な手術です!」
    →医学上ありえない
  • 「厚生労働省の認定した○○専門医」
    →専門医の資格認定は学会がするものである
  • 加工・修正した術前術後の写真の掲載
    →あたかも効果があるように見せるために加工したものは虚偽となる
  • 「○%の満足度」
    →根拠や調査方法の提示がないもの・提示があっても公正なデータとはいえないものは虚偽とされる
  • 「○○研究所を併設しています」
    →研究の実態がない場合は虚偽となる

比較優良広告

特定不特定の他の医療機関と自らを比較の対象とし、施設の規模・人員配置・提供する医療の内容等について、自らの病院が優良である旨を広告するものは、医療に関する広告として認められません。

これは、優秀性について、著しい誤認を与えるおそれがあるため禁止されているものです。そのため、事実であったとしても、「日本一」等の最上級の表現は禁止されます。

具体例としては、以下のものがあります。

  • 「○○の治療では、日本有数の実績を有する病院です」
  • 「当院は県内一の医師数を誇ります」
  • 「著名人も○○医師を推薦しています」
  • 「当院は全国展開し、最高の医療を広く国民に提供しております」

誇大広告

必ずしも虚偽ではないが、事実を不当に誇張して表現したり、人を誤認させる広告は禁止されます。誤認させるかどうかは、一般人が広告内容から認識する印象や期待感と、実際の内容に相違があると言える場合をいいます。誤認することを証明したり、実際に誤認したという結果は必要ではありません。具体例は以下のとおりです。

  • 「知事の許可を取得した病院です」
    →知事の許可を得ることは必須であるから、許可を得たことを強調する場合は、特別な許可を得た病院であるとの誤認を与えるおそれがある
  • 「医師数○名」
    →現在の医師数が大きく減少した場合は、誇大広告となるため、随時更新が必要となる
  • 「顔面の○○術1か所○○円」
    →実際は、表示の値段は5か所以上同時にした場合のものであり、1か所の場合は倍の費用がかかるというときは、注釈があっても、注釈を見落とすものと常識的に判断できる場合は、誇大広告となる
  • 手術や処置等の効果、有効性を強調するもの
    →撮影の状況や被写体の状況を変えて撮影した写真等をウェブサイトに掲載し、その効果、有効性を強調することは、誇大広告となる
  • 伝聞や科学的な根拠に乏しい情報の引用
    →テレビの健康番組での紹介による治療や生活改善法等の紹介は、それだけでは客観的な事実であるとの証明はできないため、誇大広告となる

患者の体験談

医療機関が、治療等の内容・効果に関して、患者自身の体験や家族からの伝聞に基づく主観的な体験談を、当該医療機関への誘引を目的として紹介することは、禁止されています(省令1条の9第1号)。

こうした体験談は、個々の患者の状況等によって感想は異なるため、誤認を与えるおそれがあるため禁止されています。

ビフォーアフター写真

いわゆるビフォーアフター写真は、個々の患者の状態等によって治療結果は異なるため、禁止されています。

ただし、術前術後の写真に、通常必要とされる治療内容・費用等に関する事項や、治療の主なリスク、副作用に関する事項等について詳細な説明がある場合は、許されます。

公序良俗違反の広告

わいせつ若しくは残虐な図画や映像又は差別を助長する表現を使用した広告は禁止されます。

その他

品位を損ねる内容の広告や、他の法令・ガイドラインで禁止されているものは禁止されます。

  • 「今なら○円でキャンペーン実施中」
  • 「○○治療し放題プラン」
  • 「無料相談された方全員に○○をプレゼント」

広告可能な事項

病院・歯科医院・美容クリニックなどのウェブサイトなどで、広告可能な表現というのは、法律上決まっています。

医療法法6条の5第3項の規定により、広告が可能とされている事項以外は、広告をすることはできません

具体的には、以下の通りになります。

  1. 医師又は歯科医師である旨
    →日本の医師・歯科医師の免許を有しない場合は、医師・歯科医師である旨を広告できません。また、外国における医師・歯科医師である旨の広告はできません。
  2. 診療科名
    →医療法施行令3条の2で定められた診療科名に限られます。そのため、「呼吸器科」・「消化器科」・「インプラント科」等の法令に根拠のない名称を使用することは出来ません。
  3. 当該病院又は診療所の名称、電話番号及び所在の場所を表示する事項並びに当該病院又は診療所の管理者の氏名
  4. 診療日若しくは診療時間又は予約による診療の実施の有無
  5. 法令の規定に基づき一定の医療を担うものとして指定を受けた病院若しくは診療所又は医師若しくは歯科医師である場合には、その旨
    →保険医療機関である旨、母体保護法指定医である旨、精神保健指定医である旨等のみ記載可能です
  6. 地域医療連携推進法人の参加病院等である場合には、その旨
  7. 入院設備の有無、病床の種別ごとの数、医師、歯科医師、薬剤師、看護師その他の従業者の員数その他の当該病院又は診療所における施設、設備又は従業者に関する事項
    いつの時点の数なのか明記する必要があります
  8. 当該病院又は診療所において診療に従事する医療従事者の氏名、年齢、性別、役職、略歴その他の当該医療従事者に関する事項であって、医療を受ける者による医療に関する適切な選択に資するものとして厚生労働大臣が定めるもの
    →専門性の広告は、「医師○○○○(○○学会認定○○専門医)」のように、認定を行った団体を明記する必要があります。
  9. 患者又はその家族からの医療に関する相談に応ずるための措置、医療の安全を確保するための措置、個人情報の適正な取扱いを確保するための措置その他の当該病院又は診療所の管理又は運営に関する事項
    →休日・夜間の診療の実施、セカンドオピニオンの実施に関すること、個人情報の適正な取り扱いを確保するための措置、平均待ち時間等の記載が可能です。
  10. 紹介をすることができる他の病院若しくは診療所又はその他の保健医療サービス若しくは福祉サービスを提供する者の名称、これらの者と当該病院又は診療所との間における施設、設備又は器具の共同利用の状況その他の当該病院又は診療所と保健医療サービス又は福祉サービスを提供する者との連携に関する事項
  11. 診療録その他の診療に関する諸記録に係る情報の提供、その他の当該病院又は診療所における医療に関する情報の提供に関する事項
  12. 当該病院又は診療所において提供される医療の内容に関する事項(検査、手術その他の治療の方法については、医療を受ける者による医療に関する適切な選択に資するものとして厚生労働大臣が定めるものに限る。)
  13. 当該病院又は診療所における患者の平均的な入院日数、平均的な外来患者又は入院患者の数その他の医療の提供の結果に関する事項
  14. その他前各号に掲げる事項に準ずるものとして厚生労働大臣が定める事項

広告可能事項以外の広告ができる場合(ホームページ、パンフレットなど)

前述のように、広告が可能な事項以外は、原則として広告が禁止されています。

ただ、医療機関のホームページやパンフレット、、メルマガなどの患者が自ら求めて入手する情報については、適切な情報提供が円滑に行われる必要があるとの考えから、条件を満たした場合のみ、例外的に、広告可能事項以外の事項についても広告が可能となります。

このような例外が認められるのは、以下の要件を全て満たした場合のみです。

  1. 医療に関する適切な選択に資する情報であって、患者等が自ら求めて入手する情報を表示するウェブサイトその他これに準じる広告であること
  2. 表示される情報の内容について、患者等が容易に照会ができるよう、問い合わせ先を記載することその他の方法により明示すること
  3. 自由診療に係る通常必要とされる治療等の内容、費用等に関する事項について情報を提供すること
  4. 自由診療に係る治療等に係る主なリスク、副作用等に関する事項について情報を提供すること

病院・歯科医院・美容外科クリニックは、医療法の広告規制に注意が必要!

以上のように、医療機関については、上記の広告規制が適用されることになります。

お金をかけてホームページを作成したのに、法令違反になってしまう…なんてことにならないように、気を付けましょう。

医療法に強い法律事務所 グローウィル国際法律事務所

グローウィル国際法律事務所は、病院・歯科医院・美容外科クリニックなど、医療法人を法律面でサポートしております。
病院、歯科医院、美容クリニックなどの顧問先も、50社以上!
医療法改正に伴う広告制限についても、ウェブサイト、ホームページの法的チェックを多数行っております。

お問い合わせ

    会社名(必須)

    お名前 (必須)

    メールアドレス(必須)

    問い合わせ内容

    内容をご確認の上、よろしければ下記ボタンをクリックして下さい。