医療に関する広告については、患者等の利用者保護の観点から、医療法・医療法施行規則等の規定によって制限されています。
従前、医療機関のウェブサイトに関しては、法律の規制対象ではなく、関係団体等の自主的な取り組みに任されていました。しかし、近年、美容医療に関する相談案件が増加したことから、医療機関のウェブサイトに対する法的規制が必要であるとの議論がされてきました。
そこで、平成29年に法が改正され、医療機関のウェブサイトも他の広告媒体と同様に規制の対象となりました。
広告規制で禁止される広告とは、以下のような広告です。
以上の広告は、患者に著しく事実に反する情報を与えることで、適切な受診機会を喪失したり、不適切な医療を受けるおそれがあるため禁止されています。
以上の事項であっても、上記の情報については、患者の治療選択等に資する情報であることを前提とし、医療の内容等については、客観的な評価が可能であり、かつ事後的な検証が可能な事項に限られます。
また、法律で記載可能でも、景表法や医薬品医薬機器等法の他の法令に違反する場合があるため、注意が必要です。
医療法の広告規制に違反した広告を行っている場合、以下のような手順で、行政庁から指導及び措置がなされることが想定されます。
まず、法に違反することが疑われる広告を行政庁が発見した場合は、任意の調査として、広告を行っている医療機関に対して説明を求める等の調査が行われます。
そして、法に違反する広告と判断されると、広告の中止や内容を是正することを行政指導として医療機関に求めることになります。
次に、医療機関が上述の任意の調査に応じない場合や、応じても説明に疑義がある場合は、行政庁は、必要な報告を命じること(報告命令)、又は広告を行った者の事務所に立ち入り、文書等の検査を実施すること(立入検査)ができます。
さらに、行政指導に従わない場合や、違反を繰り返す等の悪質な場合は、行政庁は当該広告の中止や是正の命令(中止命令・是正命令)をすることができます。
そして、以下のような場合には、行政庁の告発により、刑罰の対象となります。
なお、刑罰としては、①④の場合は、6月以下の懲役又は30万円以下の罰金、となり、②③の場合は、20万円以下の罰金が科されます。
その他、行政処分として、医療機関の開設の許可の取り消し処分がなされる場合があります。また、行政指導に従わなかった場合は、原則として事例が公表されることになります。
そもそも、今回の規制の対象となる「広告」とは、なんなのでしょうか。法令、ガイドラインでは、以下のいずれの要件も満たすものと定義されています。
広告の定義は上述のとおりですが、広告の規制対象となる媒体の具体例としては、以下のものが考えられます。
事業者としては、広告規制を逃れるため、上記のような要件を満たさないように、ホームページなどの記載を変更することを考えるかもしれません。
しかし、ガイドラインでは、このような脱法的な行為に対しても、記載がされています。広告規制の対象となることを避けるために、外形的に上記①②に該当しないような表現を使っても、「広告」に当たる場合があるとされています。
例1:「医療法の広告規制のため、具体的な病院名は記載できません。」との表示があるが、住所・電話番号・ウェブサイトのアドレスから病院等が特定可能な場合
例2:治療法を紹介する書籍・冊子およびウェブサイトの形態を採っているが、特定の病院の名称が記載されていたり、電話番号やアドレスの記載から、一般人が容易に当該病院を特定できる場合
学会や専門誌等で発表される学術論文、講演等は、社会通念上広告とみなされることはありません。
しかし、学術論文等を装いつつ、不特定多数者にダイレクトメールで送ることで、実際には特定の医療機関に対する患者の受診を増やすことを目的としているような場合は、広告として扱われます。
新聞や雑誌等の記事は、通常は広告には該当しません。
しかし、費用を負担して記事の掲載を依頼し、患者等を誘引するいわゆる記事風広告は、広告規制の対象となります。
自己の経験や・家族からの伝聞により、特定の病院を推薦する手記を個人が作成し、出版物やしおり等により公表した場合や、口頭で評判を広める場合には、個人が特定の病院を推薦したにすぎないため、通常は広告に該当しません。
しかし、特定の病院からの依頼に基づくものであったり、病院から謝礼を受けている等の場合は、広告に該当します。
また、個人が、病院の経営に関与する者の家族等である場合で、病院の利益のためと認められる場合は、広告に該当します。
院内掲示等は、その情報の受け手が既に受診している患者等に限定されるため、広告には該当せず、情報提供や広報として扱われます。
求人広告等は、医療機関への受診を誘引するものではないため、規制対象の広告には該当しません。
医療に関する広告は、患者等の治療選択に資する情報として、法や広告告示により広告可能とされている事項を除いては、原則、広告が禁止されています。
例えば、「専門外来」との記載は、広告が可能な診療科名と誤認を与える事項なので、禁止されます。ただ、保険診療や健康診査等の広告可能な範囲(花粉症・糖尿病等)であれば、特定の治療や検査を外来の患者に実施する旨の広告は可能です。
また、死亡率や術後生存率等は、医療機能情報提供制度において報告が義務づけられている事項以外は、広告が禁止されています。さらに、未承認医薬品による治療の内容に関しても、広告が禁止されています。
内容が虚偽の広告は、患者の受診決定に重大な影響を与えるため、罰則付きで禁止されています。具体例としては以下のものがあります。
特定不特定の他の医療機関と自らを比較の対象とし、施設の規模・人員配置・提供する医療の内容等について、自らの病院が優良である旨を広告するものは、医療に関する広告として認められません。
これは、優秀性について、著しい誤認を与えるおそれがあるため禁止されているものです。そのため、事実であったとしても、「日本一」等の最上級の表現は禁止されます。
具体例としては、以下のものがあります。
必ずしも虚偽ではないが、事実を不当に誇張して表現したり、人を誤認させる広告は禁止されます。誤認させるかどうかは、一般人が広告内容から認識する印象や期待感と、実際の内容に相違があると言える場合をいいます。誤認することを証明したり、実際に誤認したという結果は必要ではありません。具体例は以下のとおりです。
医療機関が、治療等の内容・効果に関して、患者自身の体験や家族からの伝聞に基づく主観的な体験談を、当該医療機関への誘引を目的として紹介することは、禁止されています(省令1条の9第1号)。
こうした体験談は、個々の患者の状況等によって感想は異なるため、誤認を与えるおそれがあるため禁止されています。
いわゆるビフォーアフター写真は、個々の患者の状態等によって治療結果は異なるため、禁止されています。
ただし、術前術後の写真に、通常必要とされる治療内容・費用等に関する事項や、治療の主なリスク、副作用に関する事項等について詳細な説明がある場合は、許されます。
わいせつ若しくは残虐な図画や映像又は差別を助長する表現を使用した広告は禁止されます。
品位を損ねる内容の広告や、他の法令・ガイドラインで禁止されているものは禁止されます。
病院・歯科医院・美容クリニックなどのウェブサイトなどで、広告可能な表現というのは、法律上決まっています。
医療法法6条の5第3項の規定により、広告が可能とされている事項以外は、広告をすることはできません。
具体的には、以下の通りになります。
前述のように、広告が可能な事項以外は、原則として広告が禁止されています。
ただ、医療機関のホームページやパンフレット、、メルマガなどの患者が自ら求めて入手する情報については、適切な情報提供が円滑に行われる必要があるとの考えから、条件を満たした場合のみ、例外的に、広告可能事項以外の事項についても広告が可能となります。
このような例外が認められるのは、以下の要件を全て満たした場合のみです。
以上のように、医療機関については、上記の広告規制が適用されることになります。
お金をかけてホームページを作成したのに、法令違反になってしまう…なんてことにならないように、気を付けましょう。
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