今、ビジネスの世界で最も注目されているAI(人口知能)。
AIの技術を支えているのが「ディープラーニング」という技術です。これにより、AI(人工知能)の制度が飛躍的に上がったとされています。
機械学習と呼ばれている、開発者が予めすべての動作を決めておく従来型のプログラムとは異なる、与えられた情報を元に学習し、自律的に法則やルールを見つけ出す手法やプログラムを一歩進めたものが、ディープラーニングと呼ばれるものです。
機械学習では、人が何を学習するかというのを、当初から決めておく必要があります。ですが、ディープラーニングでは、学習する事柄もAI自身で決めて動作します。自律型AIなんでいう言葉も生まれましたが、まさにAI自身が決めて学習するというものです。このディープラーニングが発展したおかげで、AIの精度が飛躍的に向上したと言われています。
【2019年1月1日加筆】
2019年1月1日から改正著作権法が施行され、AIビジネスが、後押しされるようになりました。
【2019年12月13日加筆】
AI・データの最新ガイドラインが改訂されました。
「AI・データの利用に関する契約ガイドライン 1.1版」を策定しました
17世紀のオランダ画家・レンブラントの画風を機械学習や顔認識で分析し、3Dプリンタを使って“新作”を描く、そんなプロジェクトが見事実現し、レンブラントの作風をまねた新しい作品が完成しました。
人工知能が描くレンブラントの“新作”絵画 機械学習・3Dプリンタを活用
このプロジェクトは、米Microsoftやオランダのデルフト工科大学などの共同チームにより実現されました。
もうAIが、クリエイティブな創作も行えるようになった時代わけです。ではAIが生み出した著作権は、日本の法律ではどのような処理がなされるのでしょうか?
コンテンツが、著作権法上の「著作物」(著作権法2条1号)にあたる場合、そのコンテンツには、著作権が発生します。他人が当該コンテンツを使用することは、コンテンツ権利者の許可なく無断で利用することができなくなります。
そこで現在、AIが創作したコンテンツが、著作権が発生するのかが問題になります。
この点については、政府でも議論されています。2016年4月8日(金)、知的財産戦略本部の報告では、創作物について以下の3パターンに整理されました。
- 人による創作
- AIを道具として利用した創作
- AIによる創作
『次世代知財システム検討委員会 報告書(案)』より引用
パターン①は、人が創作をしているため、当然に著作権により保護されます。それでは、AIが創作したコンテンツは、パターン②と③に著作権が認められるのでしょうか?
【2023年7月加筆】
AIと著作権の関係について、文化庁が見解を出しました。
まずは、AIが創作した著作物が、著作権法上の「著作物」に当たるのかが問題になります。
この点、日本の著作権法で「著作物」とは、以下のように定義(著作権法2条1号)されています。
思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。
AI(人工知能)が生み出したコンテンツは、どれも特徴的で、(オリジナリティ)はあるものばかり。「創作的に表現したもの」といってもいいのではないと思われます。
しかし、問題は「思想又は感情を」という部分。AI(人工知能)に「思想や感情」はあるのかということが問題となってくるのです。
ここで、コンピュータを使った創作物が著作物に当たるかというテーマは、従来からなされていました。文化庁・著作権審議会で1993年に、『著作権審議会第9小委員会(コンピュータ創作物関係)報告書では、次のように書かれています。
つまり、著作物と認められるためには、あくまで人間の関与が必要で、人間が関与して創作したコンテンツのみが著作物になるというのが、日本政府としての理解です
以上のことからすると、パターン②は、人間がAIを道具として利用している以上、人間の関与があるため「著作物」といえ、著作権により保護されます。
では、人間がAIに創作指示をするだけであるパターン③はどうでしょうか?たしかに、人間がAIに創作指示をしている点で「人間の関与がある」とも言えそうです。
しかし、著作権で保護されるためには「思想又は感情を創作的に表現」(著作権法2条1項)する必要があります。AIに創作指示をするだけでは、創作物に人間の思想や感情が反映されているとは言えません。したがって、パターン③は著作権により保護されないことになります。
レンブラントの新作は、おそらくパターン③にあたります。よって、日本で同様にAI創作物が生み出された場合、その創作物は著作権により保護されないことになります。
著作権により保護されない創作物は、いわゆるPD(パブリックドメイン)として誰でも利用できることになります。
つまり、パターン③のAI創作物については、AIに創作指示をした人間が、無断でその創作物を使用されたとしても、利用料の請求や使用の差し止めなど、何らの権利行使ができないことになります。
しかし、これでは時間と労力をかけて、AI創作物を世に出した人が報われません。では、どのような権利保護が考えられるのでしょうか?
この点については、政府の知財計画2016で、議論されています。この報告書には、すべての「AI創作物(著作物に該当するような情報)を知財保護の対象とすることは保護過剰になる可能性がある」としている一方で、「フリーライド抑制等の観点から、市場に提供されることで一定の価値(ブランド価値など)が生じたAI創作物については、新たに知的財産として保護が必要となる可能性があり、知財保護の在り方について具体的な検討が必要である
この報告書では、「AI創作物を作ったこと」ではなく、「AI創作物を世に広めて一定の価値(ブランド価値など)を生じさせたこと」に対して権利を付与する方向性が打ち出されました。
そして、この報告書では、AI創作物の保護について、「商標、または不正競争防止法の商品等表示の保護に類するような仕組みが想定される」と明記されています。
つまり、法律上保護されるAI著作物は、次のもののみが保護されるということです。
上記のことからいえることは、AIを実用的なものとするためには、AIに機械学習(ディープラーニング)をさせ、最適なアウトプットを導き出せる学習済データを生成する必要があります。
この学習済みデータを生成するためには、大量のデータを読み込ませることが必要です。「大量のデータ」には、それぞれの著作権が発生しているはずです。そうすると、著作権との関係で、問題になってくると思われますが、実際のところ、どうなのでしょうか?
学習済みデータの開発者自らが、自分が著作権を持っているデータを利用する場合、また、データについて、第三者の著作物でも、第三者から許諾を得ればこれも問題がありません。
例えば、インターネット上にアップロードされている大量の画像を収集し、それを学習させるような場合に著作権法上の問題となりえます。
よく、インターネット上にアップされている情報については、公にアップされているのであるから、著作権はないという方がいますが、これは大きな間違いです。これらの情報については、法律上の著作物に該当する場合には、作成した人に著作権が生じます。無断で使用すると著作権法上問題が生じますので、注意が必要です。
機械学習をすることに関しては、これらのデータを、ある人のストレージに保存することが必要です。そうすると、誰かの著作物を複製することにあたり、著作権者の複製権を侵害する可能性があります。
この点について、著作権法47条の7では「電子計算機(コンピューター)による情報解析を行うことを目的とする場合には、他人の著作物をメディアなどに記録することが許される」と規定しています。ここで言う情報解析とは「大量の情報から、必要となる情報を抽出し比較・分類その他の統計的な解析を行うこと」をいいます。
そうすると、機械学習(ディープラーニング)をする場合に、大量の情報から要素を取り出し比較し、解析を行うような態様で行う場合には、情報解析を行うことを目的とする場合といえ、著作権法による例外に当たり、問題がないことになります。
よって、このような場合については、機械学習(ディープラーニング)を目的とした他人のコンテンツについて、自分のストレージに保存するという行為は、著作権法上の適法に行えるということになります。
AIのプログラム自体や学習済モデルは、それ自体として、著作権法始め、知的財産法上、保護されるのでしょうか。この点について法律上はどうなのかを見ていきたいと思います。
AI(人口知能)は、プログラムの1つです。この点、AIのプログラムについて特許を取得すれば特許法に基づいて保護されることになります。
プログラムの発明は、ソフトウェア特許の取得が考えられます。事業者として、AIプログラムを特許で守りたいという場合には、特許を取得できるかを検討することになります。
このソフトウェア特許ですが、プログラムについて、特許が認められるためには、そのプログラムがハードウェアを用いて具体的に実現されていることが必要です。よって、プログラム自体では、特許権の取得は認められません。
また、特許取得の際に、気をつけなければならないのは、特許出願をすると、その出願をした内容が、第三者にも公開されてしまうこと。よって、他者が、基本的なアイデアは同じでも、特許出願内容と構成を変えた類似のAIプログラムを作成される可能性があります。
また、あえて、特許出願をせずに、シェアを取りに行き、盤石な地位を確立してから、特許を取得するという戦略も考えられます。
次に、著作権の問題を考えてみます。プログラムに著作権が認められるためには、判例上、以下の点で要件が必要です。(知財高裁平成18年12月26日)
プログラムの全体に選択の幅があり、かつ表現に作成者の個性が表れているものであること
通常のプログラムについては、定型的なものも多く選択の幅が限られています。また、プログラムは論理的であることが求められているため個性が発揮しづらいということもあります。そうすると、プログラムについては著作権が認められづらいのが、通常です。
このようにAIのプログラム自体については、著作権や特許権で保護されるというのは、限定的になるというのが現状です。
AIについては人間が、最初の段階においては、人間がAIに対して学習をさせること(機械学習)が最初に必要です。
そうするとAIのプログラムそれ自体よりも、人間が機械学習させた成果として生成された学習済モデルの方が価値が高いともいえます。ではこのようなAIの学習済モデルについては、法律上どのような保護が認められのでしょうか?
まずこの学習済モデルが、著作権法上のプログラムと言えるかどうかが問題になります。
日本の判例では、著作権法上のプログラムと言えるためには、コンピューターを機能をさせて、ある結果を得ることが出来るようにするような指令を組み合わせたものであることが必要とされています。
学習済モデルというのは、計算結果としての数字の羅列に過ぎません。そうすると学習済モデルについては、著作権法上のプログラムに当たらず、著作権法によっては、保護されない可能性が高いです。
また、学習済モデルに対し、特許権を取得できるかを検討すると、ここは法律上、不明確なところです。しかし、判例上は、プログラムの関数自体には、特許権法上の発明するが認められないと言う見解が有力です。
そうすると、学習済モデルは、特許を取得できない可能性が高くなります。
著作権や特許権で法的保護は認められないとしても、不正競争防止法による保護が考えられます。
不正競争防止法の中に営業秘密と言う規定があります。これは営業秘密が、盗まれたり、勝手に使われた場合に損害賠償ができるというものです。
この営業秘密にあたるためには以下の3つの要件を満たす必要があります。
①の秘密管理性とは、情報を非公開として、社内でも特定の人のみがアクセスできる(アクセス制限)といった措置を取ることをいいます。
③の非公知性とは、まだ誰にも知られてないと言うことです。これは学習済モデルについて、非公開とする事が考えられますし、リバースエンジニアリングが困難な暗号がなされていれば、非公知性を満たすという指摘もなされています。
ロボアドバイザーとは、人工知能(AI)を使って、利用者の資産運用を支援するサービスです。現在、様々な事業者がサービスを開始しており、楽天の「楽ラップ」、みずほ銀行の「SMART FOLIO(スマートフォリオ)」などがあります。
このロボアドバイザーは、利用者に対して、投資リスクの許容度などを計るために、いくつかの質問をします。利用者が質問に答えていくと、その結果をもとに、利用者にあったポートフォリオを組んでくれるというもの。
このロボアドバイザーサービスは、通常、事業者に資金を預け、提示されたポートフォリオに従って資産運用を委託するのが通常です。このため、サービス事業者は、「投資運用業」の登録が必要となります。
投資運用業の登録を受けるためには、最低資本金・最低純資産額として、5,000万円が課されています。また、投資運用業には、業務範囲規制があり、他の業務を行う場合には、届出や財務支局長の承認を得ることが必要です。
インターネットを使って、投資関連情報を提供する場合には、事業者は投資助言業の登録が必要になる可能性があります。
投資助言業とは、報酬を得て、有価証券や金融商品の価値などについて、口頭、文書等により助言を行うことを約し、相手方がそれに対し報酬を支払うことを約することをいいます。
この投資助言業に当たるかは、慎重な判断が必要です。不特定多数の者を対象として、不特定多数の者が随時購入できる方法によって投資情報を提供する行為は、投資助言業に該当しないとされています。
たとえば、以下の方法による投資情報の提供は、投資助言業の登録を受けずに行うことができるのです。
また、監督指針では、ダウンロード販売などにより、いつでも誰でも自由に投資情報分析などができるアプリやソフトウェアを購入できる状態にあるときには、投資助言業には、該当しないとされています。
一方、そのアプリやソフトウェアを利用にするにあたって、販売業者などから継続的に投資情報に関するデータやその他のサポートなどを受けることが予定されているものであれば、投資助言業の登録が必要であるとされています。
上記のようなサービスをする際に、金融庁へ登録する場合には、金融庁の財務局の担当者と面談・折衝する必要があります。
金融庁では、登録に当たって必要な情報を一元的に管理・収集する「概要書」という書類を用意しています。登録を申し込む事業者は、この概要書を入手し、必要事項について漏れなく記載し、必要書類を添付し、担当官と面談する必要があります。
行政が相手になり、書類関係の不備については厳しいので、注意が必要です。
AI技術は、複雑かつ高度な技術を有しています。そのため、権利関係については、これから問題になっていくことが予想されます。
どのような権利が認められるか、最新情報も含めチェックすることが重要です!
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まだまだ規制が整備されていない分野だからこそ、最先端分野の法律を扱う当所が選ばれています。
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