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仮想通貨取引所や販売をする場合に必要な仮想通貨交換業登録ですが、金融庁の審査内容が強化されるとのことです。
この金融庁の方針は、今年1月のコインチェック事件を受けてのことであり、金融庁としても、第二のコインチェック事件を防ぐために、このような方針を打ち出しました。
弊社は、これまで仮想通貨交換業の登録申請サポートを10社以上行っていますが、当初に比べて、仮想通貨交換業の登録申請の審査内容が変わってきたことを肌で感じています。
そこで、今回は、今後、仮想通貨交換業の登録申請をする事業者向けに、仮想通貨交換業の登録申請にの実際について、解説していきます。
仮想通貨交換業の登録申請の審査が厳しくなることは、金融庁の担当者レベルでは、今年の3月くらいから話がされていました。
仮想通貨交換業者「みなし業者」が登録申請の取り下げへ!仮想通貨交換業登録の最新状況とは
今回、どの部分が強化されるのかが、金融庁から発表されたことになります。重点項目としては、以下の通りです。
法律上、仮想通貨交換業者は、顧客と事業者の資産を分けて管理する分別管理が要求されていました。
しかし、みなし業者への立入検査などを通じて、事業者側が、顧客の財産を事業資金に流用するなどの事態が発覚していました。
そこで、分別管理の徹底として、顧客資産残高のチェックを1日1回ではなく、時間単位で行うことが義務付けられました。
これにより、顧客財産が外部に流出した場合でも迅速に対応できるようにし、事業者の流用についても、素早く対応できるようにすることを求めています。
顧客資産残高のチェックを時間単位で行うということは、仮想通貨交換業者としても、それ専用の人員を配置する必要があります。
仮想通貨交換業者には、内部管理体制の強化も求めています。
具体的には、株主と取締役などの経営の分離を求めること、システム開発担当とそれを管理する担当の分離です。
特にシステム面については、申請をする事業者にとっては、非常に重要な問題です。システム開発については、外注するという事業者もいるかもしれませんが、開発については外注しても、それを管理する人が別に必要になります。
そして、金融庁の審査状況をみると、それを管理する担当者は、自社内で用意することが求められています。
よって、仮想通貨交換事業者としては、システム面での体制強化が求められることになります。
仮想通貨交換事業者の仮想通貨の保管について、オンライン状態での仮想通貨の保管を禁止します。
これは、コインチェック事件の発端が、仮想通貨をインターネットに接続されていた状態で、管理されていたことを踏まえての措置になります。
また、仮想通貨の送金をする際には、複数のパスワードを用意するなどの対応が求められています。
先日のG20でも、仮想通貨のマネーロンダリング防止が話題になりました。
それを受けて、仮想通貨交換業者には、高額取引時の本人確認などの措置をとっているかなどの措置が求められることになります。
マネーロンダリング対策の強化は、実際の申請手続きの現場でも、金融庁から指摘されています。金融庁からは、マネロン対策のガイドラインが出ています。
「マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に関するガイドライン(案)」及び「主要行等向けの総合的な監督指針」等の一部改正(案)の公表について
仮想通貨交換業を申請する事業者は、これらの資料を参考に、マネーロンダリング対策を進める必要があります。
また、上記のマネロン対策の一環としてですが、匿名性の高い仮想通貨については、取り扱いを認めないこととしました。
匿名性の高い仮想通貨とは、どういうものかについては、金融庁の「仮想通貨交換業等に関する研究会」の議論が参考になります。
この研究会では、日本における今後の仮想通貨交換業登録申請やICOについての規制が議論されています。
この第1回の研究会では、匿名性が高くマネーロンダリングに悪用されるリスクがある仮想通貨「DASH」「Monero」などの取り扱いを制限するべきではないかという意見が出されました。
【弁護士解説】今後の仮想通貨・ICOの法律的規制。金融庁「仮想通貨交換業等に関する研究会」を参考に。
また、第2回研究会では、研究会のメンバーから「ランサムウェア等が「Monero」「Zキャッシュ」など匿名性の高い通貨で身代金を要求する例が増えて
日本で仮想通貨の取り扱いをするためには、その仮想通貨を取り扱っていいかについて、金融庁の認可が必要になります。
日本で新たな仮想通貨(コイン・トークン)を販売する上での法律的規制とは
また、仮想通貨交換業の登録申請する事業者は、事前に「取り扱う仮想通貨」を事前に金融庁に申請することが必要です。
これから、仮想通貨交換業の登録申請する事業者は、匿名性の高い仮想通貨については、取り扱いが認められないことも視野に入れておく必要があるでしょう。
また、上記のほかにも、仮想通貨交換業の登録申請の審査について、重要な点があります。
「仮想通貨交換業等に関する研究会」の第2回の資料で、金融庁からは「仮想通貨交換業者に対するこれまでの対応等」という資料が出されました。
その中で、(主な監督上の着眼点)として、以下の項目が列挙されています。
疑わしい取引の届出を行うに当たって、顧客の属性、取引時の状況などを勘案し、犯収法第8条第2項及び犯収法施行規則第26条、第27条に基づく適切な検討・判断が行われる態勢が整備されているか。
以上のような項目は、金融庁としても、重点的に審査ポイントですので、しっかり対策をするようにしましょう!
金融庁は、仮想通貨交換業の「みなし業者」や登録業者に対し、立入検査をした結果、業務改善命令や業務停止命令などの行政処分が下しています。
金融庁としては、同じような体制の業者には、仮想通貨交換業の登録を認めない方針です。
よって、仮想通貨交換業登録を目指す事業者としては、金融庁が、どのような項目について、行政処分を受けているかを検討する必要があります。
「仮想通貨交換業等に関する研究会」第2回の資料「仮想通貨交換業者に対するこれまでの対応等」では、これまでの金融庁から事業者に対する行政処分がまとめられています。要約すると、以下の項目で行政処分が下されています。
⇒事業者としては、取り扱う仮想通貨の性質をよく理解し、それに沿った体制を整備しておく必要があります。速やかな仮想通貨交換業の取得のためには、BTCやETHなどのメジャー仮装通貨のみを扱うという戦略も考えられます。
⇒自社発行仮想通貨の仮想通貨については、金融庁も厳しく審査しています。
自社発行仮想通貨だからといって、利用者に不利益が被る場合には、行政処分の対象になる可能性がありますので、注意しましょう。
⇒マネロン対策については、金融庁に敏感になっているところです。仮想通貨交換業者は、しっかりと準備しましょう。
⇒顧客への情報開示については、利用者保護の観点から、金融庁は重視しています。利用者への情報開示の体制は、整えるようにしましょう。
⇒利用者財産の流用については、業務停止になる重大な問題ですが、それ以外にも、分別管理が不十分な場合にも業務改善命令が出ています。
分別管理の体制整備は、今後厳しく求められて生きますので、十分に注意しましょう。
⇒コインチェック事件以降、システムリスクについては、金融庁も敏感になっています。
システム障害が起こらないように未然の防止は必要ですが、万が一起こった場合にも迅速な対応ができるように規程を設けておく必要があります。
⇒仮想通貨交換業者は、全て自社で行っているとは限らず、外部委託している部分もあると思います。
そんなときに、外部委託先の状況を把握、報告を受ける体制整備が必要になるのです。
以上のように、仮想通貨交換業の登録申請については、刻一刻と状況が変化していきます。
仮想通貨交換業の登録申請をする事業者は、最新の情報をチェックするようにしてください。