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仮想通貨交換業「みなし業者」の「ミスターエクスチェンジ」と「東京ゲートウェイ」が金融庁に登録取り下げを申し出ました。
また、みなし業者の「ビットステーション」と「bitExpress」「来夢」の3社が登録申請を取り下げています。
このように、仮想通貨交換業「みなし業者」が、相次いで登録申請を取り下げているのは、どうしてなのでしょうか?
このような流れになっているのは、1月末に起きた「コインチェック事件」が大きく影響しています。コインチェック事件以降、システムリスクについては、金融庁も大変重視をしています。
「仮想通貨交換業者」は、登録制なので、金融庁の許可が必要です。そうなると、金融庁としても、変なところに、許可を出して問題が起こると大変ことになります。
よって、金融庁としても、仮想通貨交換業の登録には慎重になっているのです。
特に、仮想通貨交換業の「みなし業者」については、金融庁も目を光らせています。
「みなし業者」とは、仮想通貨法(改正資金決済法)施行日である2017年4月1日以前から仮想通貨交換業を行っており、2017年9月30日までに、申請書を金融庁に提出した企業は、登録結果が出るまでは、仮想通貨交換業を続けられるというものです。
あのコインチェックも、仮想通貨交換業の登録を受けておらず、「みなし業者」であることが大きな話題になりました。
要するに「みなし業者」とは、仮想通貨交換業の登録を受けていないが、運営している業者ということになります。
「みなし業者」であるコインチェックが、あれだけ大きな事件を起こし、金融庁も世間の批判を浴びました。金融庁としても、「みなし業者」に、立入検査が入り、業務体制が万全か検査しています。
これから、仮想通貨交換業の登録申請をするところは、どのようなことに注意するべきでしょうか?
弊社も仮想通貨交換業の申請サポートをこれまで、10社以上行っています。登録された業者もありますし、みなし業者、新規で登録を目指している企業もあります。
そこで、現状の仮想通貨交換業の登録申請が、どのようになっているかを見ていきましょう。
登録申請のおおまかな流れや過去の状況については、以下の記事を参照してください。
仮想通貨交換業登録申請の最新状況について仮想通貨(Fintech)に詳しい弁護士が解説
まずは、現在の仮想通貨交換業の登録申請ですが、どのくらいの期間がかかるものなのでしょうか。
金融庁からは、標準処理期間といって、登録申請業者には、一応の目安が示されています。それによると、申請作業がスタートし、登録が出るまで、6ヶ月程度とされています。
しかし、実際は、6ヶ月では終わりません!
弊社のクライアントで、2017年6月から、新規で申請作業をスタートしている企業がありますが、まだ登録結果が出ていません。
金融庁の方も言ってましたが、現在、登録申請をしている企業数が、100社を超えています。
そんな中、実際、申請作業がスタートしてから登録結果が出るまでは、8ヶ月~12か月ほどはかかるとみておいた方がよいでしょう。
よくご質問されることに、仮想通貨交換業の登録のためには、どのような体制を整えておけばいいですか?というものがあります。
これについては、仮想通貨法、内閣府令、金融庁ガイドラインについては、明確には書いていません。
しかし、申請作業をしている実務上の経験や「みなし業者」の立入検査に同行させて頂き、金融庁の方が、現場で仰っていたことを元に解説していきます。
「みなし業者」への立入検査で、金融庁の方が気にしていたのが、仮想通貨交換業を行うに当たっての「システムリスクへの備え」です。
コインチェック事件が、会社の管理体制、特にシステム体制の不備から生じたことから、金融庁も、これに関しては、相当敏感になっています。
よって、これから、新規で仮想通貨交換業を申請される企業は、以下のようなことをきちんと整備し、金融庁に説明できるようにしておく必要があります。
また、金融庁の方が、現在、システムに関する審査基準を上げることを検討していると仰っていました。
実際、どのような審査基準になるのかは未定で、時期も未定のようですが、これから新しく申請するところは、注意が必要です。
また、人員の手配も必要になってきます。「登録のためには、何人いればよいのか」といったご質問も受けるのですが、何人であればいいといった基準はありません。
しかし、金融庁としては、最低でも以下のような人員の確保は必要であるという認識です。
これは、自社内に最低1人は必要です。システムを外注している場合でも、システムリスクが起こった場合に、対応できる人間が、社内に1人はいないと、適切な対応ができません。
また、自社内にコンプライアンス、内部監査ができる担当を置く必要があります。
金融庁の方も「金融機関に勤めていた経験がある方などが望ましい」とは言っていました。
また、金融庁として重視しているのは、利用者からの問い合わせに対して、迅速に答えられる体制を整えているかという点です。
こちらについても、どのような体制を整えているか、問い合わせに対しては、迅速に処理できる体制をとっているかなどを、金融庁に説明する必要があります。
また、仮想通貨交換業の申請に当たっては、監査法人による監査が義務付けられています。よって、監査法人との契約が必要です。
また、法律事務所との契約は、法律上は求められていませんが、金融庁の担当者からは、「弁護士さんはいるのですか」という質問がされています。
金融庁からの初回面談から、質問されるので、できれば申請の段階から、弁護士についてもらった方がよいかもしれません。
上記のように、8か月~1年ほどかかる登録申請作業ですが、そんな長い期間、何をするのかというと、主に以下の2つです。
「仮想通貨交換業登録申請の最新状況について」に詳しい手順は記載してありますが、通常の申請書類のほかに、以下のような書類を作成していく必要があります。
また、金融庁からは、こちらからの書面に対して、追加の質問集である「作業整理表」が随時出されます。
それに対して、事業者としては、的確にかつ迅速に回答していく必要があるのです。このような応酬が、8か月~1年間ほど続くのです。
よく「仮想通貨交換業登録のハードルは、どのくらい高いですか」というご質問をされます。これについては、なかなか数値化するのは難しいのですが、簡単でないことは確かです。
しかし、仮想通貨交換業の申請について必要なのは、金融庁の要求に的確に応えるということです。
具体的には、以下のようなことを確保することができれば、仮想通貨交換業登録の道も見えてくることになります。
弊社クライアントも、上記のような険しい道を進みながら、登録に至った事業者、みなし業者で登録を結果を待っている事業者、新規で行っている審査中の事業者がいます。
弊社クライアントは、大企業ばかりでなく、中小・ベンチャー企業も多いですが、登録申請は進んでいます。
仮想通貨交換業の登録申請については、上記の通り、簡単ではありません。しかし、決して不可能なわけではありません。金融庁の要求さえ満たせば、登録されます。
仮想通貨交換業登録申請の最前線にいて思うことは、金融庁の要求に真摯に応えていく覚悟が必要ということです。
仮想通貨交換業は登録申請は、これから厳しくなることはあっても、ゆるくなることはありません。つまり、一旦、仮想通貨交換業を取得すれば、堂々と仮想通貨ビジネスをすることができます。
大変な分、そのメリットは大きいので、正しい手順で、仮想通貨交換業を取得するようにしてください。