ドローンの認知も高まってきて、ドローンがビジネスで活用できる幅も広がってきました。例えば、倉庫内の在庫管理にドローンの利用を考えられます。
大規模な倉庫内の在庫管理は、多大な時間と労力を要するものであり、ビジネスにおいては大きなコストになります。これをドローンによって自動化することで、企業はコストを削減することが可能になります。
実際にアメリカの大規模スーパーマーケットチェーンであるウォルマートでは、倉庫管理にドローンを導入することが決定しているだけでなく、RFID(電子タグ)とドローンを組み合わせた全自動の倉庫管理を検討しています。
このような倉庫内の在庫管理にドローンの利用する場合、法律的に注意するべき点はあるのでしょうか?
ドローン(ホビードローンを含む)を飛ばす際に注意するべき法律まとめ
屋内でのドローンの飛行は、航空法による規制の適用がありません。したがって、倉庫内でのドローンの利用には航空法上の許可・承認は不要です。
もっとも、航空法による規制が課されない場合であっても、倉庫内で就業する従業員の安全に配慮する必要があります。
ドローンが従業員にぶつかってケガをさせた場合には、使用者には安全配慮義務違反等があるとされ、損害賠償責任を負うことがあります。
倉庫内の在庫管理にドローンを利用する場合には、当該会社の使用者は倉庫内の従業員の安全を確保するために倉庫内での業務従事に際してヘルメットの装着を義務付ける、ドローンの操縦についての社内規則を制定する等の措置を講じることが適切です。
労働安全衛生法上、ドローンは産業用ロボットには該当せず、ドローンを用いることは、特別教育を必要とする危険または有害な業務には当たりません。
しかし事業者は、労働安全衛生法において一般的に労働者の安全を確保する責務、労働者の危険を防止する義務を負っています。
ドローンによる気象観測はビジネス上、注目を集めている分野です。
有限会社タイプエスは、上空で風速や温度など5つの気象情報を観測して地上にデータを送る気象観測ドローンを開発しました。また、株式会社ウェザーニューズは、エアロセンス株式会社と協力し、ドローンによる気象観測ネットワークを構築しています。
ウェザーニューズ、エアロセンス社と協力しドローンによる気象観測ネットワークを構築
気象衛星による気象観測やアメダス等の定点観測に加え、ドローンによる各地域の上空での気象観測は新たな気象観測を可能にするものであり、注目を集めています。
企業など政府機関・地方公共団体以外の者が気象観測をすることは、原則として自由に行うことができます。しかし、次の2つの観測については、気象庁の定める技術上の基準に従って行う必要があります(気象業務法6条2項)。
なぜならば、これらの観測は、観測者の自己責任を超えた社会的影響があると考えられているからです。このような技術上の基準に従う必要がある気象観測については、施設を設置した場合の届出義務や、検定に合格した気象測器の使用などが義務付けられています。
もっとも、以下の気象観測については、例外的に技術上の基準に従う必要がなく、自由に行うことができるとされています。
このうち、ドローンによる観測が⑤に該当するか否かですが、気象業務法に「航空機」の定義はなく、航空法における「航空機」と同様に無人航空機を含まないかは明らかではありません。
しかし、同法施行規則9条1項では航空機に関連して航空法を準用していることからも、航空法と同様に「航空機」には、無人航空機は含まないものと考えられます。よって、ドローンによる観測がすべて例外に当たるわけではありません。
現状は、ドローンによる気象の観測は、特殊な環境によって変化した気象のみを対象とするか(上記1)、臨時に行うもの(上記3)が多く、これらは自由に行うことができます。しかし、このような例外にも該当せず、成果の発表や災害防止への利用を目的とする場合には、技術上の基準に従って行う必要があります。
気象観測を行うためには、人口集中地区の上空を含む様々な地域で飛行させることが想定されます。人口集中地区の上空におけるドローンの飛行には、国土交通大臣の許可を受ける必要があります。
また、150m以上の上空を飛行する場合も国土交通大臣の許可が必要となります。さらに、人または物件から30m以上の距離を確保できなければ、国土交通大臣の承認が必要となります。
そして、夜間の飛行や目視外の飛行が想定されるような場合も、同様に国土交通大臣の承認が必要となるので注意が必要です。