万が一、ドローンが何らかの原因により墜落してしまった場合に、幸いにも人にケガをさせたり他人の所有物を損壊させたりせずに済むケースも多く、そのような場合には、事故自体によって民事上の責任が発生するわけではありません。
ですが、ドローンが墜落して人や他人の所有物にぶつかってしまった場合には、事故に基づく民事上の責任が発生することがあります。
ローン事故は、2018年には、国土交通省に報告があっただけでも、50件ありました。
平成30年度 無人航空機に係る事故トラブル等の一覧(国土交通省に報告のあったもの)
事故の概要としては、他人の自動車や住居の屋根に損害を与えたケースもあり、実際に損害賠償の対象となっているものもあります。
それでは、ドローン事故があった場合には、誰がどのような責任を負うのでしょうか?
ドローンによる事故が発生した場合、ドローンを飛行させた者は、被害者に対して損害賠償責任を負う可能性があります。ここで、問題になるのが「過失」の要件が満たされるのかです。
「過失」とは、避けることができたにもかかわらず、実際に行ってしまった場合に、認められます。ドローン事故で問題になる「過失」事例は、以下の通りです。
現在、市販されているドローンの飛行時間は、長いもので30分前後とされており、ドローンがバッテリー切れによって墜落するケースはよくあるといわれています。
ドローンを長時間飛行させればバッテリーが減少し、最終的には墜落に至ることが予測できる以上は、ドローンの使用者はそのような事態を回避するために、常にバッテリーの残量に注意し、バッテリーが少なくなった場合には飛行を中止するなどの措置をとる必要があります。
そのため、バッテリー切れにより墜落した場合には、過失が認められることが多いでしょう。
なお、気温が低かったり、風が強かったりしてバッテリーの消耗が早かったとしても、そのような状況を考慮してバッテリーの消耗に配慮しつつ飛行すべきであるため、それだけで過失がないということにはなりません。
電波塔の近くや鉄橋や線路等の近くで飛行を行うと、電波干渉によりドローンのコントローラーの信号が伝わらなくなることがあります。
そのような場合、操縦不能となったまま墜落する可能性があります。
飛行前に電波障害が予測できる地域や環境下であえて飛行を行ったとすれば、過失が認められる場合があるので注意が必要です。
ほとんどのドローンは、穏やかな気象条件の下での使用が想定されています。雨天時の飛行でドローンの機体に雨が入り込んで故障したり、強風時の飛行でドローンが風に流されたりして、墜落する場合があります。
悪天候下でドローンを飛行させたとすれば、ドローンが墜落することも予測できるため、そのような飛行を実施することは避ける必要があり、それでもなお飛行を実施したことについては過失が認められる場合が多いと考えられます。
ドローンの操縦方向を誤ったり、スピードを出し過ぎることによって、墜落や衝突に至る場合があります。
このような操縦ミスに起因する事故では、基本的に過失が認められることになります。
現在市販されているドローンの中には、飛行させたい方向を指定するだけで自律飛行する機能や、設定した被写体を自動的に追尾する機能を持つものもあります。このようなドローンについては、「過失」が問題になります。
もっとも、事故を起こした瞬間には操縦をしていなかったとしても、飛行をさせる判断をした者に過失がなかったか、また、非常時の対応について十分に準備できていたかといった点で過失が問題となる場面は当然にあります。
具体的には、ドローンを自動飛行モードで飛行させた場合であっても、自動飛行モードにすべきではない状況(強風等)で自動飛行モードにした場合、また、自動飛行モード中でも非常時で人の操縦が必要になったにもかかわらず行わなかった場合には、過失が認められて操縦者が責任を負うことになります。
ドローン事故よって賠償をしなければならない「損害」とは、事故によって損壊した物の財産的価値、人に傷害を与えた場合はその治療にかかる費用や慰謝料等を合算したものが損害となり、ドローンを飛行させた者はその範囲で損害を賠償することになります。
また、ドローンが墜落した後、ドローンを飛行させた者が墜落したドローンを放置していたところ、電池から発火して火災を起こしてしまったような場合は、火災によって生じた損害も損害賠償責任の範囲に含まれることがあるので注意が必要です。
ドローンによる事故が発生した場合の過失の判断は、最終的には個別の事情によることになります。
ドローンを使用する者や会社等としては、ドローンを飛行させる際のチェック項目の整備や操縦者の技能向上・研修等を通じて、ドローンの事故を予防するための措置を講じておくことが重要です。
なお、航空法上の許可なしに飛行禁止区域を飛行したり、あるいは承認が必要な飛行方法にもかかわらず、承認を受けずに飛行を行った場合は航空法違反となりますが、その場合、直ちに民事上の不法行為責任が認められるというわけではありません。
しかし、航空法に違反するようなドローンの飛行を行っていることは、過失を基礎付ける重要な事実となりますので、この観点からも航空法による規制を遵守して飛行を行うようにしましょう。
ドローンビジネスをするのに知っておくべき法律【改正航空法と電波法】