金融庁が、企業が独自の仮想通貨を発行して資金を調達する「新規仮想通貨公開(ICO)」の規制を検討していることが報道されました。
金融庁が仮想通貨での新調達規制へ 法改正も視野 差し止め含め検討
ICO規制については、これまで、このブログ記事でも取り上げてきました。
金融庁がICOについて実質的な取り締まりへ!事業者がICOを進めるためのポイント
金融庁からICOに関する注意喚起が発表!ICOに関する法律まとめ
仮想通貨(ビットコイン、イーサリアム、リップル等)やICOの法律を弁護士が解説
先日、金融庁が、マカオに本拠地を置くブロックチェーンラボに、警告を出しました。
中国ブロックチェーンラボに金融庁が警告 —— 登録申請せずに仮想通貨の交換業
このように、金融庁も、ICO案件については、規制強化の動きを見せています。そこで、今回は、ICO規制の現状と日本でICOを行う方法について、解説していきます。
現状、ICOについての法律は規定されていません。よって、ICOが、直接的に法律上、規制されているということはありません。
昨年の8月に、ALISが日本発のICOを行いましたが、法律的に特に規制はなかったため、昨年は多くのICOが日本でも行われました。
しかし、2017年10月27日に、金融庁から、ICOに関する注意喚起が出されました。
ICO(Initial Coin Offering)について~利用者及び事業者に対する注意喚起~
そして、2017年11月末あたりから、ICOで発行するトークンのうち、以下のようなものは、仮想通貨法上の「仮想通貨」であるという解釈をしました。
ICOというのは、投資家からビットコインやイーサリアムなどの仮想通貨を投資してもらい、自社独自の「トークン」を発行するものです。
そして、投資家が、「トークン」について、投資するのは、将来上場した場合に、値上がりするので、値上がり益を期待するというものでした。
2017年11月末までは、すでに上場している「トークン」については、法律上の仮想通貨ですが、上場前のものは法律上の「仮想通貨」ではないという解釈でした。
しかし、上記のように、将来的に上場する可能性があるものやトークンが、売買や譲渡できる機能がついているものも、法律上の仮想通貨になるということは、従来のICOを日本で行うために、事業者は仮想通貨交換業登録が必要になるということです。
よって、現状で、仮想通貨交換業登録業者以外のものが、ICOを行うことは、難しくなっています。現状で、ICOを進める場合には、事前に金融庁の面談が必要になっています。
金融庁がICOについて実質的な取り締まりへ!事業者がICOを進めるためのポイント
【2018年10月31日加筆】
最新のICO規制については、以下を参照してください。
日本における仮想通貨のこれからの法律的規制とは【仮想通貨交換業等に関する研究会を参考に】
【2018年10月31日加筆】
日本又は海外で、合法的にICOを行いたい事業者は、以下もご参照ください。
ICO・仮想通貨の法律的規制を日本法人と海外法人で合法的に行う方法を弁護士が解説
以上のように、日本でICOを行うことが実質的に難しくなっています。そこで、ICOをしたい事業者は、一体どのようにすればよいのでしょうか。
一番の正攻法は、ICO事業者が、仮想通貨交換業登録を取得することです。仮想通貨交換業登録をすれば、正面から堂々と、ICOで自社トークンを販売できます。
しかし、仮想通貨交換業登録は、非常にハードルが高いです。弊社も、10社以上の申請サポートしていますが、金融庁から求められる要求水準も高いですし、期間も、8ヶ月~1年ほどかかります。
参考記事:仮想通貨交換業登録申請の最新状況について仮想通貨(Fintech)に詳しい弁護士が解説
自社で仮想通貨を販売するのではなく、すでに、仮想通貨交換事業者登録しているところに、販売委託をすることが考えられます。
ただし、これには、仮想通貨交換事業者登録の協力が必要となります。また、日本で新たな仮想通貨を販売するためには、金融庁の認可が必要です。
金融庁のガイドラインでも、「仮想通貨交換業者が 取り扱うことが必ずしも適切でないものもあり得る。」としています。
そうすると、既存の仮想通貨交換業者も、金融庁に新しい仮想通貨(トークン)を販売していいか、お伺いを立てることになるため、既存の仮想通貨交換業者も、「積極的に販売委託いいですよ」はならないのです。
ICOが日本で仮想通貨交換業者のみしかできない理由は、ICOの自社トークンが、法律上の「仮想通貨」に当たると金融庁が解釈しているからです。
そうなると、自社トークンが「仮想通貨」に当たらないようにすればよいです。
前述の通り、以下が、自社トークンが「仮想通貨」に当たると解釈されているポイントでした。
そこで、「自社トークンは上場しない、可能性もない」というトークンをすれば、仮想通貨と解釈されることはなくなります。
しかし、上場可能性のない自社トークンについて、投資家は、なぜ買うのでしょうか。上場以外に、自社トークンを買うインセンティブが必要になります。
例えば、以下のような場合には、投資家がトークンを買う意味が出てきます。
ここで、出資者から金銭を集め、事業を行い、その企業から得られた利益を出資者に分配するというのは、いわゆるファンド規制、金融商品取引法の集団的投資スキームに当たらないのかが問題になります。
このようなファンドの投資家を募る行為は、第二種金融商品取引業に該当し、同免許がないとできません。
しかし、この金融商品取引法のファンド規制は、出資者が金銭や有価証券を出資と言う場合に限られており、仮想通貨で出資してもらう場合は、含まれていません。
よって、仮想通貨で投資したもらう分には、ファンド規制はかからないのです。
仮想通貨ファンドやマイニングなどの仮想通貨関連ビジネスの法律上の規制とは
また、自社トークンを持っている人だけが購入・利用できる商品・サービスがあるというスキームもあります。自社トークンが会員権的な役割を果たすのです。
しかし、これを行うには、投資家が納得するような魅力的な商品・サービスが必要になります。
また、自社トークンを使って、商品・サービスを購入できるとなると、その自社トークンは、「ポイント」の性質を持ち、資金決済法上の「前払式支払手段」に当たる可能性があります。
資金決済法上の「前払式支払手段」に当たった場合の規制については、以下を参考にしてください。
LINEゲームのアイテムに資金決済法適用!?資金決済法の「前払式支払手段」とは
例えば、ICOの情報を提供する場合には、仮想通貨交換業は必要ありません。
仮想通貨交換業とは、法律上、以下のいずれかに該当する場合をいいますが、単なる情報提供は、上記いずれにも当たりません。
もっとも、単なる情報提供にとどまらず、投資家に代わって、ICOを購入する(購入代行)やICO購入の仲介をする場合には、仮想通貨交換業の「媒介、 取次ぎ又は代理」に該当する可能性があります。
【2018年10月31日加筆】
仮想通貨ビジネスの法律について、詳しく知りたい方は、こちらもチェックしてください。
【仮想通貨・法律】仮想通貨ビジネス (ICO、仮想通貨交換業、DApps、エアードロップ) で質問される法律事項への弁護士回答
以上のように、日本でICOを行う場合には、金融庁の規制が厳しくなっています。
一説では、今後、金融庁が、違法ICOの摘発に乗り出すという話もあります。法律的なスキームを考えるなど、十分注意するようにしてください。