IT法務・AI・暗号資産ブロックチェーンNFT・web3の法律に詳しい弁護士|中野秀俊
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日本における仮想通貨のこれからの法律的規制とは【仮想通貨交換業等に関する研究会を参考に】

仮想通貨・デジタル通貨に関する法律

仮想通貨の今後の法規制は

仮想通貨の法規制をみる上で、非常に重要な金融庁の「仮想通貨交換業等に関する研究会」ですが、このところ頻繁に開催されています。(9月12日に第5回、10月3日に第6回、10月12日に第7回が開催されています。

過去の研究会の内容は、以下の関連記事をご参照ください。

・【弁護士解説】今後の仮想通貨・ICOの法律的規制。金融庁「仮想通貨交換業等に関する研究会」を参考に。
・【最新版】仮想通貨交換業登録申請のポイントを仮想通貨の法律に詳しい弁護士が解説
・マイニングやブロックチェーン、仮想通貨決済における今後の法律的規制について

ここにきて、頻繁に研究会を開催する背景としては、金融庁として、仮想通貨への法的規制について、方向性を打ち出したいという思惑があります。

では、実際に、仮想通貨交換業等に関する研究会では、どのようなことが議論されているのでしょうか。

ICOに関する法規制

仮想通貨事業者としては、ICOの法規制がどうなっていくのかは注目なところであると思います。この点については、結論はまだ出ていないのですが、研究会のメンバーの中では、ICO推進派とICO規制派で意見が対立しています。

現状、ICOの法律は、ありません。しかし、実際上は、金融庁から実質的な規制があります。

ICO・仮想通貨の法律的規制を日本法人と海外法人で合法的に行う方法を弁護士が解説

ICOについては、規制vs擁護が拮抗

第5回研究会での意見としては、以下のような点があります。

  • トークン自体は価値がないものであるにもかかわらず、セカンダリーマーケットで、高額で売れてしまう現状を放置していくことは、問題をさらに深刻・複雑なものにしかねず、投資家保護の問題をより大きく引き起こしかねないのではないか
  • トークンの流通市場を何らかの規制によって、合理的なものにできるかどうかが重要ではないか
  • ICOについては、少なくとも一般の投資家への販売は禁止すべきではないか

このように、ICOについては、今後、トークンについての規制、一般投資家への販売規制がかけられる可能性があります。

しかし、一方で、ICOを擁護する立場の意見もあります。

  • 実際に、ICOがスタートアップの資金調達に有効に効いている例はないのか、事例を調べる必要があるのではないか
  • 海外のICOの募集に応じること自体を禁止することは、技術的には難しいと考えられるので、どういう形での啓発や投資家保護が望ましいのかを考えていく必要があるのではにないか

海外ICOについては、日本の法律が直接的には、適用されず、購入禁止などは技術的にも難しいです。それを踏まえての議論が必要だとされています。

ICOトークンの性質により、金融法規制

また、第6回の研究会では、仮想通貨は、支払・決済手段としての性格にとどまらず、投資・資金調達手段等、様々な性格を有し得るということが述べられています。

ICOにおいて発行されるトークンには、例えば、有価証券のように収益の分配を受ける権利を表象するもののほか、イベント参加権等を表象するものや、何の権利も表象しないが実態として流通しているものも存在するとして、トークンの性質の分析がされました。

こうした複合的な性格を有する仮想通貨に係る各種行為について、金融規制の要否を検討していくに当たっては、以下の視点が重要と考えられるとしています。

  • 仮想通貨を用いた個々の行為が、金融(金銭の融通)の機能を有するかどうか
  • 金融の機能を有する場合、仮想通貨の将来の可能性を含む社会的意義や投機の助長

そして、収益分配型のICOトークンについては、投資・資金調達の面が強いとして、金融規制の対象にすることが検討されています。

上記のように、ICOトークンの規制については、一律に規制するのではなく、トークンの性質により、投資の側面が強いトークンについては、既存の金融法規制がされる可能性があります。

仮想通貨のデリバティブ・証拠金取引への規制

仮想通貨のデリバティブ・証拠金取引については、日本国内の仮想通貨取引の8割を占める取引となっています。

金融サービス利用者相談室における、2018年でも、376件の苦情相談が寄せられているとのことです。

第7回の研究会は、この仮想通貨のデリバティブ・証拠金取引の規制をどうするかというテーマでした。現状、仮想通貨のデリバティブ・証拠金取引の規制については、金融商品取引法などの金融法の規制の対象外です。

しかし、第7回の研究会では、具体的にどのように規制していかについて、話し合いがされています。

例えば、現状の金融商品取引法上、通貨関連店頭デリバティブ取引を業として行う者(第一種金融商品取引業者)には、規制が課されているところ、仮想通貨デリバティブ取引を業として行う者に対しても、その機能や取引内容の類似性に鑑み、少なくとも同様の対応を求めることが必要なのではないかという意見が出されています。

現状の第一種金融商品取引業者に課せられている規制は、以下の通りです。

  • 最低資本金・純財産規制
  • 業務管理体制の整備義務
  • 広告・勧誘規制 (虚偽告知、不招請勧誘等)
  • 契約締結前書面等の顧客への交付・説明義務
  • 顧客財産と自己財産の分別管理義務
  • 証拠金倍率の上限やロスカットに関する規制 等

仮想通貨のデリバティブ・証拠金取引については、上記のような規制がかけられる可能性があります。