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LINE株式会社が提供するゲーム内アイテムが、資金決済法の適用のある「前払式支払手段」に当たる恐れがあるとして、関東財務局が立入検査に入ったとの報道がなされました。
この点については、LINE株式会社も、
・「前払式支払手段」に該当するか否かに関しては、関東財務局と協議中。
・立入検査は、前払式支払手段発行者に対して数年に一度定期的になされているもの
というプレスリリースを発表しています。
参照サイト:【コーポレート】一部報道内容に関する当社の見解について
この問題、どこに問題があるのでしょうか?
ゲーム内通貨・ポイントは、「前払式支払手段」に該当すると、資金決済法の適用を受けます。
どういう場合が、「前払式支払手段」に当たるかは、以前のブログ(【資金決済法】ウェブサービス内に「ポイント制や仮想通貨」を導入するときに必要な法律)に詳しく記載していますが、簡単にいうと、以下の3要件を満たすものとされています。
(1)「100ゴールド」「魔法石●個」といった形で金額や数量が記録される。
(2)現金などの対価を得て発行される
(3)そのポイントやアイテムが、他の商品やサービスの提供に使われる
よって、ユーザーから前もって、ゲーム内通貨やアイテムなどを現金(クレジットカード)で購入してもらう場合には、「前払式支払手段」に該当する場合が多いのです。
今回問題となっているのは、LINE POP「宝箱の鍵」です。LINE社のプレスリリースでは、
LINE POP「宝箱の鍵」に関して、社内担当者による初期段階でのメールによる問題提起をうけ、専任の法務担当者および資金決済法に関し豊富な知見を有する外部弁護士への相談、検討を経て、同年7月における仕様変更前であっても「宝箱の鍵」の外観や使用場面等を総合考慮して前払式支払手段に該当しないと判断しております。
という見解が示されています。
今回、問題となっているLINE POP「宝箱の鍵」は、直接現金等で購入するものではなく、アイテムショップにてルビーと交換することによって、入手できるものです。
そして、ルビーは、ユーザーが現金等で購入するものです。
参考サイト:ラインポップ 宝箱と鍵の入手方法
現金→ルビー→宝箱の鍵という形になるわけです。そうなると「ルビー」については、前払式支払手段にあたることは間違いありません。
ただ、そのルビーと交換できる「宝箱の鍵」が「前払式支払手段」に当たるのかが問題になります。つまり、1次アイテムであるルビーと交換できる「2次アイテム」にまで「前払式支払手段」適用があるのか、前払式支払手段に当たるかの要件である(2)「現金などの対価を得て発行される」に当たるのかが問題となっているわけです。
また、今回問題となっている「宝箱の鍵」ですが、使い道としては、もともと持っていたユーザーが持っていた「宝箱」を開けるためのアイテムです。この「宝箱の鍵」を使うことによって、「宝箱」が開けられ、宝箱の中にあるアイテムなどを得ることができるというわけです。
そうすると、「宝箱の鍵」は、あくまで「宝箱」を開けるために使われるのであって、「宝箱の鍵」自体によって、ユーザーは他のアイテムと交換したり、LINEからサービスを受けられるといった効果はないのではないか。
前払式支払手段の(3)そのポイントやアイテムが、他の商品やサービスの提供に使われるという要件が満たされるのか、といったことが問題になっていきます。
LINEのプレスリリースで、「前払式支払手段に該当しないと判断」したのは、以上のような事情があるのではと思います。
もし、仮に「宝箱の鍵」が「前払式支払手段」に該当すると、どうなるのでしょうか?
「前払式支払手段」に該当すると、企業にとって、資金決済法上の様々な義務が生じます。特に負担となるのが、供託義務
ポイントや仮装通貨の未使用残高が1,000万円を超えるときには、未使用残高の2分の1以上の金額を営業所の最寄りの供託所に供託しなければなりません。供託をするということは、資金が眠ってしまうということであり、企業にとっては命取りになりかねない事態なのです。
なお、この供託義務は、銀行等との間で、発行保証金保全契約をすることで、その一部を免れることもできます。
今回の報道では、一部報道機関とLINE社の主張は、真っ向から対立しています。一番問題なのは、「前払式支払手段」に当たると、企業としては供託義務などの重い義務が生じるにもかかわらず、その基準が明確にされていないこと。
LINE社のプレスリリースでも、
一定額の供託を要することとなる「前払式支払手段」に該当するか否かに関しては、専門的、技術的な問題があり、法令上も行政実務上も判断基準が明確でない
と指摘しています。
基準が不明確な中、後から「前払式支払手段」に当たるとされて、多額の「供託金」を支払わされる。そんな事態が生じたら、企業としては、たまったものではないなぁと思います。
その意味で、行政がどういう判断をするのか、注目です。