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金融庁からICOに関する注意喚起が発表!ICOに関する法律まとめ

仮想通貨・デジタル通貨に関する法律

金融庁からICOに関する注意喚起が発表に

2017年10月27日に、金融庁から、ICOに関して消費者及び事業者に対する注意喚起が出されました。

ICO(Initial Coin Offering)について~利用者及び事業者に対する注意喚起~

最近、ICOブームと呼ばれるように、様々な企業が、ICOを行うようになりました。その一方、資金集めるだけ集めて、その後、連絡を取れなくなるという案件も増えてきたため、金融庁も、今回の注意喚起をするようになったと思われます。

それでは、事業者として、今回の金融庁からのICOに関する注意喚起について、どのように捉えればよいのでしょうか?

ICOの定義

ICOとは、Initial Coin Offeringの略称です。そして、今回の金融庁からの注意喚起でも、「一般に、ICOとは、企業等が電子的にトークン(証票)を発行して、公衆から資金調達を行う行為の総称です。トークンセールと呼ばれることもあります。」とされています。

つまり、企業から電子的なトークンを発行し、それに伴い、一般の人からお金を集める仕組みをICOとしました。これは、現在行われているICOの実態を反映したものといえるでしょう。

トークンについての法律上の位置づけは、以下を参照してください。

仮想通貨事業で使われる「トークン」の法律規制はどうなっているの?

ICO事業者にとって注意すべき法律

今回の金融庁からの注意喚起で「事業者の方へ(ICOへの規制について)」という項目が記載されています。

その中で、ICOについては「ICOの仕組みによっては、資金決済法や金融商品取引法等の規制対象となります」と書かれています。

まず、資金決済法の問題としては「ICO において発行される一定のトークンは資金決済法上の仮想通貨に該当し、その交換等を業として行う事業者は内閣総理大臣(各財務局)への登録が必要になります。」と記載されています。

法律上の「仮想通貨」の判断基準

4月1日に施行された、仮想通貨法(改正資金決済法)では、仮想通貨の定義が規定されました。

仮想通貨に該当すると、それを販売等する場合には、内閣総理大臣(各財務局)に対して、仮想通貨交換業の登録をする必要があります。

金融庁のガイドラインにみる仮想通貨の範囲・仮想通貨交換業者の該当性のポイント

仮想通貨の定義は、法律上、以下のようになっています。

  1. 物品を購入し、若しくは借り受け、又は役務の提供を受ける場合に、これらの代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができ、かつ、
  2. 不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる財産的価値(電子機器その他の物に電子的方法に より記録されているものに限り、本邦通貨及び外国通貨並びに通貨建資産を除く。次号において同じ。)であって、
  3. 電子情報処理組織を用いて移転することができるもの

「仮想通貨」の定義とは?仮想通貨規制法案の概要をIT弁護士が解説!

つまり、「仮想通貨」に該当するかのポイントは、以下の2つです。

  • 「代価の弁済(代金の支払)のために不特定の者に対して使用することができる
  • 不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる」

さらに金融庁ガイドラインでは、「不特定の者に対して使用することができる」に対する考慮事項として、以下のようなことを指摘しています。

  • 発行者と店舗等との間の契約等により、代価の弁済のために仮想通貨を使用可能な店舗等が限定されていないか
  • 「発行者が使用可能な店舗等を管理していないか」等について、申請者から詳細な説明を求めることとする

つまり、特定の発行者がいて、その発行者が認めた範囲内のみで使用できる場合には、「仮想通貨」には該当しないのです。

また「不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる」ことを判断するに当たっては、以下の事項を考慮するとしています。

  • 発行者による制限なく、本邦通貨又は外国通貨との交換を行うことができるか
  • 本邦通貨又は外国通貨との交換市場が存在するか

こちらも特定の発行者がいて、特定の発行者が、法定通貨との交換を制限している場合には「仮想通貨」には該当しないのです。

まず、ICO事業者は、自社の発行するトークンが、法律上の「仮想通貨」になるかを検討する必要があります。

資金決済法上の「前払式支払手段」該当性

自社発行トークンが、法律上の「仮想通貨」に該当しない場合でも、資金決済法上の前払式支払手段には、該当する可能性があります。その場合には「前払式支払手段」の規制(登録制や供託義務)などが発生しますので、注意が必要です。

ウェブサービスの「仮想通貨」「ポイント」が資金決済法の適用を受けるとどうなるの?

ファンド規制(金融商品取引法)

金融庁の注意喚起では「ICOが投資としての性格を持つ場合、仮想通貨による購入であっても、実質的に法定通貨での購入と同視されるスキームについては、金融商品取引法の規制対象となると考えられます」としています。

そもそも、金銭を出資し事業を行い、その利益から配当をするというのは、金融商品取引法上のファンド規制(集団投資スキーム規制)がかかります。

よって、ICOとして金銭を出資してもらい、その後、利益を分配するためには、金融商品取引法上の規制がかかる可能性があります。

もっとも、この金融商品取引法上のファンド規制(集団投資スキーム規制)というのは、金銭や有価証券を出資してもらう場合に、適用されます。

よって、仮想通貨で出資してもらう場合には、この金融商品取引法上のファンド規制は、適用されないことになります。

ただし、今回の注意喚起で「実質的に法定通貨での購入と同視されるスキームについては、金融商品取引法の規制対象」という記載がされました。

例えば、ICO事業者又はその関連業者が、出資者に対して、事前に法定通貨から仮想通貨の交換をし、出資者は、その仮想通貨を出資し、事業者がトークンを発行するような場合は、実質的に「法定通貨での購入と同視されるスキーム」とされてしまい、ファンド規制がかかることになります。

ICOについても、本格的な法規制が

今回、金郵庁が、ICOについての注意喚起を出したということは、ICOについて、金融庁の監督が及んでいくということです。注意喚起の中でも、次のように書かれており、相談窓口に相談をすることを進めています。

ICOへの規制についてご不明な点があれば、まずは、資金決済法上の仮想通貨交換業者を所管する以下の相談窓口にご相談ください。

今後のICO事業者は、そのスキームについて、法律的にしっかりとした裏付けをもって、行うようにしましょう。