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【解説】ECサイトなどウェブサービスごとの利用規約作成の注意点まとめ【2020年5月加筆】

利用規約の法律

利用規約の作成のポイントをビジネスモデルごとに解説

ウェブサービス・アプリで、必要になってくる利用規約。このブログ記事でも、利用規約の作成のポイントを解説してきました。

IT・ウェブサービス事業者向け利用規約作成のチェックポイントまとめ

・弁護士が教えるIT企業向け「利用規約作成」のポイント

利用規約については、上記のような一般的な注意点を守ることも大事ですが、ビジネスモデルごとに利用規約の作成の注意点があります。

そこで、ビジネスモデルごとに、利用規約で気を付けるべき法律的ポイントを解説します。

ECサイトなど、事業者がユーザーに対して、直接商品・サービスを販売するウェブサービスで、必ず問題になるのが、商品に欠陥があった場合の対処法です。商品に欠陥があれば、事業者としては、交換や損害賠償などをする必要があります。

ただ、販売してしばらく経ってから「欠陥があるのですが…」と申し出がされても、事業上困りますよね。

そこで、①商品に欠陥があった場合に、ユーザーが事業者に対して主張できる期間②事業者の責任で商品に欠陥があった場合、どんな責任を取るのか(損害賠償・商品の交換)を定めておく必要があります。

具体的には、次の例のとおりです。

第●条(瑕疵担保条項)
当方が、納入後6カ月以内に当方の責に帰すべき事由により不具合が発生した場合には、当方はユーザーの請求に基づき、当方の責任と負担においてその不具合を補修もしくは代品を納入するものとします。

プラットフォームサービスの利用規約

このモデルは、事業者が自ら販売するのではなく、商品・サービスを買いたい、売りたい、仕事を発注したい人と仕事を受注したい人をつなげるサービスです。

このモデルの特徴は、事業者自らが契約の当事者になるのではなく「場を提供するにすぎない」ということです。

そうすると、契約当事者であるユーザー同士のトラブルは、ユーザー同士で解決してもらうということが必要になってきます。

ユーザー同士のトラブルに対する利用規約(例)

第●条(ユーザー同士のトラブル)
契約当事者であるユーザーのトラブルについては、ユーザー同士で解決するものとし、当社は責任を負わないものとする。

事業者の免責事項(例)

また、事業者の免責事項として、次の条項を入れておくことも検討しましょう。

第●条(免責)
1 当社は、個別取引において売買される商品の内容、品質、適法性、安全性、有用性などについては、一切保証いたしません。そのため、商品に瑕疵・不具合などがあった場合でも、当社は一切の責任を負わないものとします。

2 当社は、個別取引に関する商品の引渡しまたは代金の支払い可能性に関し、一切保証いたしません。そのため、個別取引において、商品の引渡しがないまたは代金の支払いがない場合であっても、当社は一切の責任を負わないものとします。

3 利用者と他の利用者との間の論議・紛争その他のトラブルについて、当社は一切責任を負わないものとします。利用者と他の利用者でトラブルになった場合でも、両者同士の責任で解決するものとし、当社には一切の請求をしないものとします。

直接連絡・契約の禁止(例)

また、このモデルのキャッシュポイントは、取引が成約したら、成約手数料を取るということにあると思います。

そうすると、ユーザー同士で直接契約をされてしまうと、この事業の根幹が崩れてしまいます。これを禁止するには、利用規約で規定しておくことも抑止力になります。

そこで、次の例のように、利用規約でユーザー同士の直接契約を禁止する旨を規定し、そのような行為をした場合の罰則なども定めておくと、効果があります。

第●条(直接連絡・契約の禁止)
1 ユーザーは、本サービスを経由せずに、ユーザー同士の連絡、商品売買等の取引をすることを禁止します。

2 ユーザーが前項の規定に違反した場合には、ユーザーは当社に対して違約金として、○○万円を支払うものとします。ただし、当社が当該金額以上の損害を生じた場合には、当社はお客様に対して超過部分の損害賠償をすることを妨げないものとします。

また、プラットフォームサービスについては、エスクローサービスを導入する事業者が多いと思います。

しかし、エスクローサービスは、資金決済法上の「資金移動業」との関係で、問題になる可能性があります。

これを回避するためには、「決済代行」というスキームを取る必要があります。エスクローサービス・決済代行スキームについては、こちらをご覧ください。

個人間送金・割り勘アプリで注意するべき法律をIT専門の弁護士が解説

SNS機能をもつウェブサービスと利用規約

「Facebook(フェイスブック)」「Instagram(インスタグラム)」「LINE(ライン)」などのSNSは、すでに生活の一部になっていますが、ウェブサービス・アプリでも、SNS機能がついている場合、利用規約の作成のポイントを解説します。

違法な投稿を禁止する条項

SNS機能がついている場合には、ユーザーが、サービスに投稿することが想定されます。そうすると、どのような投稿をするのか分からないリスクがあります。

そこで、事業者としては、利用規約で予め、投稿してもらっては困る事項を禁止事項として、規定しておくことが考えられます。

この禁止事項があれば、例えば、ユーザーが、他人のコンテンツをパクッて投稿した場合や他人の名誉やプライバシーを侵害するようなものである場合、いちいち投稿したユーザーにお伺いを立てるまでもなく、運営側の判断で削除できます。

会員が、以下の情報を投稿すること

  1. 第三者の権利および財産に対して損害を与えるリスクのある情報
  2. 第三者に対して有害な情報、第三者を身体的・心理的に傷つける情報
  3. 犯罪や不法行為、危険行為に属する情報およびそれらを教唆、幇助する情報
  4. 不法、有害、脅迫、虐待、人種差別、中傷、名誉棄損、侮辱、ハラスメント、扇動、不快を与えることを意図し、もしくはそのような結果を生じさせる恐れのある内容をもつ情報
  5. 事実に反する、または存在しないと分かっている情報
  6. 会員自身がコントロール可能な権利を持たない情報
  7. 第三者の著作権を含む知的財産権やその他の財産権を侵害する情報、公共の利益または個人の権利を侵害する情報
  8. わいせつ、児童ポルノまたは児童虐待にあたる画像、文書等の情報
  9. その他当社が不適切と判断する情報

投稿コンテンツの著作権

ユーザーが投稿できるサービスですと、投稿したコンテンツについての権利関係が問題になります。前提として、ユーザーが投稿したコンテンツは、ユーザー側に著作権があります

そこで、企業側として、投稿コンテンツを活用したい場合には、ユーザー側が投稿したコンテンツの著作権を譲渡してもらう、また利用できるように、使用許諾を得ることが必要です。

著作権の定め方としては、以下のようなことが考えられます。

  1. ウェブサービスの継続、メンテナンスなどの必要な範囲内において、変更を許諾してもらうパターン
  2. 投稿者のコンテンツを、無償で、事業者が利用する許諾をとるパターン
  3. 投稿者コンテンツの著作権を事業者に譲渡してもらうパターン

事業者にとって、一番有利なのは、③ですが、利用規約に③の条項を入れて、炎上してしまった例があります。

ユニクロ「UTme!」騒動に見る 正しい利用規約の作り方

事業者としては、①、②の条項が無難といえるでしょう。以下では、②のパターンの条項例を記載しておきます。

第●条(知的財産権等)
当社は、利用者が本サービスにおいて投稿、アップロード又は保存した全ての情報(文字情報、画像情報等を含みますがこれらに限られません)について、これらを保存・蓄積した上、本サービスの円滑な運営、改善、当社又は本サービスの宣伝告知等(第三者のメディアへの掲載を通じた紹介記事・コンテンツ等も含まれます。)を目的として、あらゆる態様で利用できるものとし、利用者はこれに同意するものとします。