昨年から今年にかけて、個人間決済・送金アプリが流行っています。
その代表が、昨年リリースされた「paymo(ペイモ)」です。paymoのアプリをダウンロードし、レシートを写真に撮って、割り勘してほしい友達に送るだけという手軽さから、人気になっています。
このような人気の個人間送金・割り勘アプリですが、法律上、注意すべき点はあるのでしょうか?
個人間送金・割り勘アプリは、個人間で金銭が移動するという点で、資金決済法上の資金移動業に該当する可能性があります。
資金移動業に該当するかどうかは「為替取引」に該当するかどうかで決まります。
そして、判例上、為替取引とは「隔地者間で直接現金を輸送せず に資金を移動する仕組みを利用して資金を移動することを内容とする依頼を受けて、これを引き 受けること、又はこれを引き受けて遂行すること」とされています。
具体的には、銀行振り込みなどは、この典型例です。従って、この為替取引は、銀行などの金融機関しかできないとされています。
しかし、資金決済法の改正により、「資金移動業」として登録を行えば、上記のような仕組みができるとされました。
もっとも、資金移動業を行うためには、資金移動業者の内閣総理大臣への登録が必要になるほか、以下のような規制がかかります。
また、資金移動業者の取引金額は、1回あたり、100万円以下にする必要があるなど、様々な制限があります。よって、資金移動業の登録は、中小・ベンチャー企業にとっては、非常に高いハードルがあるのです。
資金移動業は上記の通り、非常に高いハードルがあります。
そこで、注目されているのが、決済代行(収納代行)サービスです。
決済代行サービスとは、商品やサービスの提供者のために、第三者が、サービスを提供された人から代金を受け取り、それを提供者に渡すという仕組みです。コンビニなどの 公共料金の受取サービスがこれに該当します。
また、クラウドソーシングサービスでも、事業者が買い手(発注者)から代金を預かり、商品の引き渡しや仕事の完成が完了したことを確認した時点で、第三者が売リ手(受託者)にお金を支払うサービスも、出てきています。
この決済代行サービスは、現時点では、資金決済法上の資金移動業などの規制の対象外とされています。
これは、金融庁の金融審第二部会報告書 金融審第二部会WG報告でも述べられています。
しかし、決済代行サービスは、実際上のお金の流れは「為替取引・資金移動業」と一緒です。
しかし、決済代行サービスの場合には、代行業者が、単に代金を預かるだけでなく、支払者が代行業者に代金を支払った時点で、受取者と支払者との間の決済が完了するというのが、ポイントです。。
つまり、仮に、代行業者が倒産しても、支払者は、二重に代金を支払う必要はないということなのです。(その代わり、受取者は、損害を被る可能性はあり)
よって、このような決済代行サービスを行いたい場合には、利用規約や契約書に、上記のような仕組みであることを明示し、資金決済法上の資金移動業ではなく、決済代行サービスであることを示す必要があるのです。
paymo(ペイモ)の利用規約でも「当社は、当社所定の決済事業者又は収納代行業者から入金される対象債権にかかる代金を、代表会員を代理して受領するものとします。」と規定していて、利用規約でも、決済代行サービスであることを宣言しています。
そして、仕組み上も、レシートの添付を義務付けるなどして、事業者として、あくまで決済代行であることを補強しているのです。
【2021年4月加筆】
収納代行も割り勘アプリなどの個人送金は、一定の要件を満たす場合には、法律的に資金移動業になるとされました。
Fintech事業を行う際には、金融法をはじめとする各種法律を遵守する必要があります。
金融法の多くは、刑事罰も規定されている重要な法律ばかりです。事業を行う際には、事前に法律を注意するようにしましょう。