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従業員が「うつ病」になった時の会社側の守り方とは。

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従業員がうつ病になった…会社側の守り方

以前の記事では、「うつ病」の可能性がある、もしくは、「うつ病」を患ってしまった従業員に対しての、会社の対応について記載をしました。

うつ病の従業員に対して求められる会社や上司の対応とは?

上記の記事は、労使が穏便にことを収めるための手段の一つとしてご紹介しましたが、正直な話、会社側としては痛手となる部分は多いかと思います。

もちろん、うつ病となった従業員が一番大変なのですが、労働法上はあらゆる側面から守られていると言っても過言ではありません。

しかし、痛手となっている会社側は、誰も守ってはくれません。

今回は「うつ病」従業員への対応策の第2弾として、従業員が「うつ病」になったときの会社側の守り方について検討していきたいと思います。

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証拠を紙で残す

  • 自己判断で勝手に休職し始めた!
  • 会社に無理やり復職させられた!

お互いの捉え方の違いで「言った言わない」が後の労使トラブルの種です。

従業員に対し、休業や復職などの指示・命令をする場合は、可能な限り書面で行い、証拠として残しましょう

書面に記載する内容は、命令の日、命令の内容、誰から誰に、必要であれば署名捺印を貰うのも効果的です。

単純かもしれませんが、大事なところで効いてきます。特に、訴えられたりした際は、まさに証拠として役に立ちます。

そもそも危ない人は雇わない!「うつ病」になりやすい人の見分け方

水際の対策としては、単純ですが、うつ病になりそうな人を雇わないというのが、一番です。

そこで知りたいのは、健康状態病歴しょう。

ただ、病歴などは隠されてしまいがちです。この様な場合は、「アンケート」として情報を収集するのが効果的である場合もあります。

ポイントとしては、内容にあえて「記載したくない事項は、記載しなくても構わない。」などの一文を入れ、強制力がないことをアピールすることで「記載をしない」という選択肢を与えることです。

記載をしてくれなければ意味がないのでは?と思うかもしれないが、ここで注目すべきところは、その書かれなかった項目です!

やはり、聞かれたくないこと、知られたくないことは、強制力がなければあえて答える人は少ないところです。

だからこそ、答えない項目は、知られたくないことである可能性は高いです。核心はつけないかもしれないが、判断材料にはなるでしょう。

そして、アンケートのポイント二つ目は、最後に署名・捺印の欄を作りましょう。本人が、自筆で記載したことの証明となります。

その他、面接時に、休日の過ごし方、仕事以外にはまっていること等の質問で、ストレス発散がうまくできるのかの判断材料となります。

また、面接や筆記試験などは朝一番から行うと効果的です。うつ病の方は、朝が苦手なことが多いそうです。もちろん、それだけでは判断できませんが、一つの参考材料にはなります。

見直しておきたい就業規則とその記載例

同じく、水際の対策としては、あらかじめ就業規則を整備しておくことも忘れてはいけません。

ここをしっかりやっておけば、入社後にうつ病等になったとしても、対策を講じることができます。

「休職期間は180暦日以内とする。」という規定を設けており、かつ、「休職期間満了時までに休職事由が消滅しない場合は、休職期間満了をもって自然退職とする。」

このように規定されている就業規則をよく見ます。この場合、一度復職し、再度休職を申し出た場合の休職期間のカウントはどうなるのでしょうか?

この表記だとリセットされるとも読み取れます。非常に曖昧な表現です。こういったどちらとも取れる曖昧な表現がトラブルの種となるのです。

期間の規定を「通算」とすることにより、復職によるリセットとされるという誤認を防ぐことができます。

また、あらかじめ「必要がある場合は、会社側が医師を指定できる。」といった規定をしておけば、医師と結託して、不正に休職を請求されるといったことを防ぐことができます。

復職の際のセカンドオピニオンとしての効果もあり、復職が可能かの判断材料にもなります。

他には、あらかじめ「必要に応じて、現職と異なる職務に配置することがある。」といった規定をしておけば、復職後、休職前と同様の職務につかせるのが望ましくないが、本人が強く希望する場合などに、不当に移動を強要されたなどと言われることを防ぐことができます。

休職中の給与については、必ずしも支給する必要はないのですが、社会保険については、支払いを続けなければなりません。

そのため、社会保険料分について、会社側で一時的に立て替えをするか、その都度、休職中の従業員に負担分を振り込んでもらうかの対応をしなければなりません。

あらかじめ「傷病手当金」の受取代理人として会社名義にする規定を設けていれば、その都度に請求する手間や、踏み倒しを防ぐことができます。

まとめ

会社側は、従業員という大勢の人生を抱えています。

他人事だと思わず、会社を守る方法を一度検討しておくことがとても大切です。