試用期間は、従業員の適性を判断するための「お試し期間」と思っている会社がとても多いですが、決してお試し期間という訳ではありません。
「お試し期間」と勘違いをしているがゆえに、後に様々な労使トラブルになることも多くあります。試用期間を正しく運用するためには、以下の項目について次の様な注意が必要となります。
労務問題は、
賃金に関して、本採用時とは別に、試用期間時の賃金が設定されていることがあり、本採用時より低い水準とすることが多くあります。
その試用期間時の賃金を決める際には、各都道府県の最低賃金を下回っていないかを必ず確認するようにしましょう。
本採用時の賃金を最低賃金ギリギリに設定していると、試用期間時の賃金が容易に下回ってしまいがちです。
また、残業代や休日出勤等の支払いも、もちろん必要です。
試用期間の上限については、法律での規定はありませんが、判例などから最長1年が合理的理由として認められる期間と考えられています。
1年以内であれば、延長も可能です。ただし、以下のような条件を見てしている必要があります。
これらが満たされていないと、延長部分は試用期間として認められません。
試用期間であっても、労働契約が締結されている状態のため、一部の短時間労働者を除き、会社側は、雇用保険、健康保険、労災保険、厚生年金などの各種保険等に加入させる義務があります。
確かに試用期間中の解雇は通常の解雇よりも広い範囲で自由が認められている(=解雇が認められやすい)とされています。
しかし、試用期間中も労働契約が結ばれている状態のため、その法的性質や従業員へ与える影響などを考慮すると、何の理由もなく自由に解雇ができると言う訳ではありません。
基本的には、試用期間といえども、通常の解雇と同様の扱いになり、正当な事由がない限り、その解雇は無効とされます。
「何となく合わない」「期待していた能力ではない」などの理由では、もちろん認められません。
それでも、解雇する場合には、通常の解雇と同様に30日前に予告するか、解雇予告手当として30日分以上の平均賃金を支払うことが義務付けられています。
ただし、例外があります。
試用期間の開始から14日以内であれば、企業はいずれの義務も果たさなくても解雇できるという特例があります。
この特例のイメージが強く、試用期間=解雇ができると勘違いをしてしまいがちですが、初日から14日以内の解雇に限られますので、注意が必要です。
なお、解雇予告や解雇予告手当の義務がないだけで、正当な解雇理由は必要となりますので、注意して下さい。
本採用の拒否は、法的には解雇に該当するものとなるので、正当な理由が必要となります。
試用期間が満了した後なので、当然上記の特例の対象とはなりません。「本採用拒否」となりますが「解雇」であることに違いはありません。
言葉の印象に惑わされないように気を付けましょう。
従業員の雇用で試用期間とは言え、労働法上本採用時とほぼ同等の保護がなされます。
試用期間だからと言って、不当な扱いにならないように、会社と実際に運用する管理者や直属の上司などは制度についてしっかりと理解しておく必要があるでしょう。