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【バイオベンチャー・法律】バイオベンチャーのライセンス契約のポイントを弁護士が解説【2020年7月加筆】

バイオベンチャーのライセンス契約での特徴とは
バイオベンチャーが、ライセンス契約を締結する際の注意点を解説します。
バイオベンチャーの特許は、すぐに権利化されるわけではない
バイオベンチャーのライセンス契約についての特徴としては、「最先端の知財」を売り物にしているということです。
例えば、特許にしても、製薬企業との契約の時点では「出願中」の段階というのは、よくあります。
特許というのは、特許出願をしただけでは、「特許権」を取得したことにはなりません。出願後に審査請求を行い、審査に通らなければ「特許権」は認められません。
出願から「特許権」が取得できるまで、1~2年くらいはかかります。1~2年となると、最先端の価額技術を売り物にするバイオベンチャーをとりまく環境は、変化していきます。
一方で、バイオベンチャーは、資金が豊富にあるわけではありません。そうなると、特許権の権利化を待たずに、製薬企業とライセンス契約を締結し、事業資金を得ることが必要になってきます。
ライセンス契約を締結する際にも、この先の1~2年にビジネス環境、法律環境などを予測し、契約書の条項に盛り込むことが必要になってくるのです。
バイオベンチャーのライセンス契約の気を付けるべきポイント
特許の修正、変更に対応できているか
特許は、出願後に、そのまま権利化されることもあるのですが、出願後に分割、補正されることが多いです。
上記のように、特許権が権利化される前に契約を締結するということになると、特許が分割、補正された際に対応できる内容になっているかを確認する必要があります。
また、開発していくうちに、当初想定していた要素とは違う用途での使用も考えられるかもしれません。
このように、バイオベンチャーについては、まだ「形になっていない特許」の段階で、企業等と契約締結作業をする必要があります。
バイオベンチャーにとって、契約時だけでなく、その先に待ち構えていることも含めて、検討する必要があるのです。
バイオベンチャーのライセンス契約で特に気をつける条項
- ステアリングコミティーの設置条項
- 支払条項
- Change of Control 条項
- 解除条項
以上の4点が気をつけるべき条項です。
ステアリングコミティーの設置条項
ステアリングコミティーとは、バイオ関連のライセンス契約ではよくある条項で、バイオベンチャーならびに製薬企業などで構成される運営委員会のことです。
ステアリングコミティーは、バイオ分野の開発、ビジネス、販売等のプロジェクトマネジメントを行うことを目的とします。ステアリングコミティーが、うまく機能していないと、研究開発の遅延などが起こってしまう可能性が高いです。
当事者の実状にあったステアリングコミティーを設置、問題発生時の対応方法、進捗管理の方法などを事前に決めておきましょう。
支払条項
バイオベンチャーにとって、どのような支払条件であるかは、非常に重要な問題です。
バイオベンチャーのライセンス契約では、開発の進行によって、ある事項を達成したら、その都度、お金を支払うという支払形態がよく取られます。
マイルストーンペイメントなどと呼ばれますが、この方法ですと、支払が1~2年後というケースもありえます。
このときの注意点としては、どういった場合に、支払われるのかについて、明確に記載することが必要です。
ここを曖昧に書いてしまうと、実際に支払われないといったことが起こる可能性があります。
たとえば、支払日を「第Ⅰ相臨床試験開始日」などのように設定したとします。しかし、この記載だと、何をもって「開始日」とするのかが不明確です。このように解釈が生じる可能性があると、お互いに紛争の原因になる場合があります。
「第Ⅰ相臨床試験第 1症例目の登録日」などのように客観的かつ明確な支払日を規定しておくのがよいです。
このような記載をすることにより、相手方からの支払拒絶を防ぐことができるのです。
また、医薬品の開発では、開発品目・疾患領域を変更することは、珍しくありません。よって、開発品目・疾患領域を変更された場合でも、支払対象であることを明示しておくことが必要になります。
Chane of Control 条項
製薬企業は、買収などのM&Aが盛んです。製薬企業側で、会社の支配権の移動が起きる際の取決めをしておく必要があります。これが、Change of Control 条項です。
会社の支配権が変わってしまうと、別の会社になってしまいます。例えば、以下のような条項を入れることが考えられます。
- 支配権の移動が起きる際には、あらかじめステアリングコミッティーに通知する
- 支配権をバイオベンチャー側の承諾無く譲渡できない
- バイオベンチャー側に解除権が生じる
解除条項
バイオベンチャーは、契約先の製薬企業に対し、立場が弱いことが多く、契約解除のための条項も、製薬企業側に有利になることが多いです。
そのときに注意するべきなのは、契約が解除された場合に、それまでに蓄積された開発データの取り扱いについてです。
契約解除後のデータの取り扱いについては、トラブルになるケースは非常に多いです。中には、契約相手方が、仕掛かりデータを利用して、特許申請してしまう場合もあります。
バイオベンチャーにとって、開発途上のデータは、非常に重要です。そのため契約解消後のデータの取り扱いについて契約において明確にしておく必要があるのです。
相手企業がM&Aで、契約が解除された場合でも、パイプラインのデータが保護されるようなライセンス契約を作りこんでおくことが必要になります。
バイオベンチャーは、契約関係のチェックを入念に
以上のように、バイオベンチャーは、最先端の技術を扱うとともに、まだ権利化されていない、形になっていないものを扱うものです。
それだけに、権利義務の内容を定める契約関係は、非常に重要になっていきます。バイオベンチャーは、契約関係には、入念にチェックするようにしましょう!