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コインチェック流出事件にみる仮想通貨事業者が気を付けるべき法律的ポイント

コインチェックで仮想通貨流出!
国内仮想通貨取引所の最大手「コインチェック」で、利用者の仮想通貨「NEM(ネム)」580億円分が流出した事件が発生しました。
昨年末からは、出川哲郎さん出演のCMを流し、知名度を上げていた矢先の事件。すでに、ネット上では、コインチェックの姿勢を非難するものであったり、投資した人の阿鼻叫喚の声が上がっています。
このことについては、色々と私も言いたいことがあるのですが、弊社は、企業・事業者専門の法律事務所なので、この記事では、コインチェック事件を受けて、仮想通貨事業者は、どういう影響を受けるのかという観点から、解説していきたいと思います。
コインチェックは、仮想通貨交換業登録がされていない!?
日本において、仮想通貨取引所を運営していくためには、金融庁に対して、仮想通貨交換業登録をする必要があります。
仮想通貨交換業登録申請の最新状況について仮想通貨(Fintech)に詳しい弁護士が解説
ところが、コインチェックは仮想通貨交換業登録を受けてません。
しかし…仮想通貨取引所業務を行っていますし、CMまで流していました。なぜ、このようなことができるのでしょうか。
仮想通貨法は、2017年4月1日に施行されたのですが、それ以前に、仮想通貨交換業を行っていた事業者は、半年間の猶予期間が与えられていました。
つまり、その半年間で、仮想通貨交換業を取得してくださいということです。
そうなると、2017年9月30日までに登録しないといけないのですが、資金決済に関する法律の一部改正に伴う経過措置 第8条では、その6月間に登録申請をした場合は、その期間を経過した後も、その申請について登録又は登録の拒否の処分があるまでの間、当該仮想通貨交換業を行うことができるとされています。
コインチェックは、申請自体は済ませているため、登録されていないにも関わらず、仮想通貨取引所業務を行っているのです。
よくご相談で「コインチェックは、仮想通貨交換業登録していないのに、運営しているのはなぜですか?」「うちも、登録を受けずに運営できませんか?」という相談を受けるのですが、あくまで2017年4月1日以前から、事業を行っていた事業者のみが対象です。
仮想通貨事業者が守るべきシステムリスク対策とは
仮想通貨交換業登録申請については、仮想通貨交換業登録申請の最新状況についての解説記事でも記載しましたが、仮想通貨交換業登録をする際に、システムリスク対策については、非常に重要視されます。
弊社でも仮想通貨交換業登録のサポートを行っていますが、金融庁は、仮想通貨事業者がシステムリスクに対して、どのような体制を取っているかについて、詳細な説明を求めます。
例えば、仮想通貨交換業登録申請には、166項目のチェックリストがあるのですが、その中で、システムリスクに関する項目が、35項目あります。その項目の中には、以下のような質問項目が並んでいます。
- システムリスク管理の基本方針が定められているか
- システム管理部門は、システムの制限値を把握・管理し、制限値を超えた場合のシステム面・事務面の対応策を検討することとしているか
- 網羅的に洗い出した利用者の重要情報について、重要度判定やリスク評価を実施した上で、それぞれに応じた情報管理ルールの策定、情報漏えい等を防止する仕組みの導入等を行うこととしているか
- システムの脆弱性について、OSの最新化やセキュリティパッチの適用など必要な対策を適時に講じることとしているか
- コンティンジェンシープランが策定され、緊急時体制が構築されているか
これらに項目について、曖昧な回答をすると、さらに追加質問が来るなど、金融庁側も、システムリスク対策をしているかどうかは、非常に重要視しているのです。
仮想通貨交換業登録されている事業者は、このような金融庁の厳しい指摘、検査を潜り抜けてきたのですが、コインチェックは、まだ登録には至っていません。
コインチェックは、以下のような点についても指摘されており、同社のシステムリスクに対する認識の甘さが、今回の原因の一端でもあったのです。
- 顧客からの預かり仮想通貨を、外部から遮断された状態ではなく、ネットでつながる状態で管理していた
- 安全性の高い「マルチシグ」と呼ぶセキュリティー技術を導入していなかった
仮想通貨交換業登録の審査が厳格化か
弊社でも、法律の施行直後から、仮想通貨交換業登録申請のサポートしていますが、そのときと現在とでは、金融庁側の仮想通貨交換業登録申請へのハードルが異なります。審査のハードルも、どんどん上がっているのです。
それに加えて、今回の事件を受けて、金融庁としても、利用者保護の観点から、さらに審査を厳格化してくることが予想されます。
具体的には、システムリスク対策の厳格化や内部体制がしっかりしているか(システムリスク専門家や法律の専門家、金融の専門家はいるかなど)がより、重視されていきます。
仮想通貨交換業を取得することを検討している事業者は、早く、しっかりとした体制で動き出す必要があります。
既存事業者も対策が必要
すでに仮想通貨の取引所を始め、仮想通貨事業を行っているところでも、システムリスク対策の再点検を行う必要があります。
金融庁も、国内全ての取引所運営会社にシステムの再点検などを求める注意文書を送っています。実際に弊社クライアントにも、送られてきました。
仮想通貨事業者は、厳しい体制が求められる時代に
以上のように、今回のコインチェック事件は、仮想通貨事業者全体に多大な影響を及ぼすものです。
仮想通貨ビジネスをされている方、検討している方は、是非、金融庁の動向もみながら、事業をするようにしましょう。