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管理職へ残業代の未支給は間違いの可能性が!IT企業が気を付けるべき「名ばかり管理職」とは?【2023年7月加筆】

IT企業のための法律

管理職には残業代は支払わなくていいけど・・・

「管理職には残業代を支払わなくていい」こんな文句を一度は聞いたことがあるかと思います。確かに、労働基準法には「管理監督者には割増賃金の支払は適用外」とあります。

しかし、正しく運用しないと「名ばかり管理職」として適用外にはならないこともあります。

名ばかり管理職」は一昔前だと、飲食店や小売店のイメージでしたが、今や一般の会社にも往々にして存在しており、飲食・小売以外の業種も他人事ではないのです!

「名ばかり管理職」による未払残業代請求訴訟でも、かなり高額な支払い命令が出されている判決もあります。

【残業代300万円、コナミスポーツに支払い命令 東京地裁、支店長は「名ばかり管理職」】

長時間労働やそれに伴う未払い賃金について大々的に騒がれている今だからこそ、もう一度見直しておきましょう。

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「名ばかり管理職」でも残業代・休日手当は対象外?

読んで字のごとく「名ばかり」なので、実質的(法律的)な管理監督者ではないということになります。

ここで重要なのは「各会社における管理職」と「労働基準法における管理監督者」はイコールではない!というところです。ここを勘違いしている会社が非常に多いです。

自社では管理職としていても、労働基準法上の管理監督者と認められなければ割増賃金を支払わなければなりません。

支払われていない場合は、労働基準法に違反している状態となります。

労基署からの調査が入った場合は、是正勧告の対象となり、過去に遡って(現行法だと2年、改正案では5年)未払い賃金を払う必要が出てくる可能性があります。

「名ばかり管理職」だと言われないためには!

名ばかり管理職とならないためには、労働基準法上の管理監督者であることが必要となります。

そのために会社は、労働基準法上の管理監督者の要件として、次の事項を備えている必要があります。

経営者と一体的な立場

経営方針や経営目標、予算など、経営に関する重要事項の決定に参画する権限、また、採用・評価・解雇などの人事権についても付与がされていることです。

経営者から管理監督、指揮命令にかかる一定の権限を委ねられている必要があります。

「課長」「リーダー」といった肩書きであっても、自らの裁量で行使できる権限が少なく、多くの事案について上司に決裁を仰ぐ必要があったり、上司の命令を部下に伝達するに過ぎないような場合は管理監督者には含まれません。

労働時間の制限

出退勤、遅刻早退などに関し一般社員と同様の制限を課してはいませんか?

管理監督者はタイムカードや出退勤記録があっても、それにより報酬や人事評価に影響を及ぼさない立場になります。

時間外や休日労働に対する割増賃金等に規定について適用がない反面、労働時間については管理監督者自身の裁量をもって決められる必要があります。

一般社員と同じく「何時から何時は絶対にいろ!」として時間を管理している場合には、管理監督者とは認められない可能性があります。

※深夜手当や有給休暇は管理監督者にも適用がありますので、注意が必要です。

地位に相応しい待遇

管理監督者は、その地位に相応しい報酬が支払われている必要があります。

役職についたことで残業代がなくなり、結果として以前よりも給与が大幅に下がってしまい、部下と比較しても変わらない、低いといった待遇では「地位に相応しい」とは言えません。

役職手当や昇給は、それなりの金額設定をしなければなりません。

まとめ

上記の3つが総合的に満たされていない限り「管理監督者」とは認められません

また、どれか一つでも満たされていない場合も「管理監督者」とは認められません。過去の判例を見ても「管理監督者」としての認定は、かなり細かくみられる傾向にあります。

人件費削減のため、実態を伴わないにもかかわらず、安易に役職を付けると、未払い賃金として後々返ってきてしまうかもしれません。

自社の管理職が本当に「管理監督者」なのか、もう一度見直す必要があるかもしれません。