近年、ブラック企業には国を挙げて対策を講じるという風向きにあることから、労働者からはもちろんのこと、労働者の家族からも労働基準監督署への通報が増加の傾向にあるそうです。
かの大手広告代理店社員の過重労働による自殺騒動から、国も本腰を入れて「働き方改革」を加速させています。それは、労働局に過重労働に関する特別対策チームが発足したほどです。
今や、長時間労働(月80時間超)や所長時間労働に伴う、正しい残業代や休日手当などの割増賃金の支給といったことは、どの業種でも当てはまることであり、これらの違反は、国・労働基準監督署のメインターゲットと言っても過言ではありません。
では、自社で長時間労働やそれに伴う未払い残業などの問題により、実際に労働基準監督署からの訪問調査があった場合、会社はどう対応するのがベストなのでしょうか?
調査には大きく分けて、通知書を会社に送り労基署に呼び出すものと、監督官が各会社へ訪問するものに分けられます。
後者は臨検監督と言い、臨検監督には、以下の4つの調査があります。
予告なく会社に訪れてくるのは、一般的に①や②の理由によることが多い様です。
予め調査内容が決まっている場合もありますが、どういった調査内容でも、おおむね共通して次の資料の提出を求められます。
監督官は、これらの資料をベースに、労働関係法令違反がないかを調べていきます。
法令違反があれば、是正勧告書が交付され、一定期間内に勧告の内容について会社は是正し、監督官に報告をします。
そこで問題がなければ、終了ですが、是正しきれていない場合などは、再監督となり、是正されるまで続きます。
法令違反がない場合でも、改善の必要がある事項には、指導票が交付されることもあります。
近年は、長時間労働や過重労働について、より重点的に見ると厚生労働省からも発表がされています。
是正勧告は行政指導(行政処分ではない)なので、強制的に従わせたり、従わないと罰金を科すなどといったことはありません。
しかし、重大な法令違反、調査の際に虚偽の申告、再三の勧告にも従わないなどの特に悪質な場合には、社名公表や代表取締役等関係者の逮捕・送検などといったこともあります。
臨検調査は原則拒否することはできません。そのため、調査を受けることを前提に以下の3つのポイントを押さえておきましょう。
上記にあげた書類は、備付が義務付けられているものですので、ないとおかしいものです。
ないだけでも是正勧告の対象となってしまいますので、備え付けを徹底しましょう。これらがちゃんと出せるだけでも、労働基準監督官の印象は良いです。
始めに臨検調査は拒否できないと言いましたが、日程の調整は可能な場合があります。
代表者や労務担当者がいない場合には、担当者がいない旨を伝えて再訪をお願いすると、応じてもらえることがありますので、担当者が不在で対応できないのであれば、むやみに対応するのは控えましょう。
また、予告なしの臨検調査などで企業に訪問した際、監督官を受付などで待たせる時間が長いと、怪しい会社だと感じるようです。
そういったことも含めて、会社としてはスムーズに対応ができるように、担当者が誰なのか、担当者がいない場合はどう対応するのかは、マニュアル化しておくのが良いでしょう。
調査依頼の通知が届いた場合や、②のように再訪を依頼できた場合には、資料作成・収集の準備時間ができます。
資料準備の段階で違反を見つけた場合には、すぐに改善するのがベターでしょう。
ただ、この改善の際に、タイムカードや賃金台帳など過去に確定しているものを、帳尻合わせのために、修正や変更してしまう会社が少なからずいますが、これは絶対にやってはいけません!
「ちょっと直しただけ!」といった軽い認識かもしれませんが、立派な改ざん行為です。
問題が発生してしまっている場合には、正直に事情を伝えましょう。結果として是正指導の対象になったからと言って、直ちに社名公表や逮捕・送検となるわけではありません。
しかし、改ざん・隠匿行為が後に発覚した場合には、悪質性を問われ、社名公表や逮捕・送検となってしまう可能性が高まります。
臨検調査や是正勧告は、真摯に対応すれば、事が大きくなることは多くありません。
労務問題は、ついつい後回しになってしまいがちですが、日ごろから労務管理に問題点がないかをセルフチェックしておけば、いざという時にスムーズに対応ができるでしょう。