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医療でのAI自動診断システム開発における法律的規制【医行為・医療機器】

IT企業のための法律

AI技術を用いた医療診断システムの開発

医療分野において、AI技術が浸透してきています。

例えば、CT画像やMRI画像の画像診断について、人工知能(AI)技術を用いて、病変候補を検出したり、疾病リスクを判断することができるソフトウェアを開発しようとする場合に法律的にはどのような規制があるのでしょうか?

AI技術と医行為該当性

医師法では、医業は医師しか行うことができないとされています。そこでAIによる自動診断システムによる「診断」と医師法との関係が問題となります。

現状のAI診断ツールについては、AIが行う行為は情報提供等の支援ツールとしての役割にとどまります。

つまり、患者の疾病について最終的に診断を行うのは医師本人であり、その過程でAIを用いるということになります。

したがって、仮に医師でない者がAI診断の情報を利用して診断、治療等をした場合には医師法違反の問題が生じることとなるが、医師がAIによる自動診断システムを利用して診療を行う場合には、診断、治療等を行う主体は医師であり、また、医師がその最終的な判断の責任を負うのであるから医師法上の問題は生じません。

AI技術と医療機器該当性

次に、AIによる自動診断システムがプログラム医療機器に該当するか否かが問題となります。

厚生労働省「プログラムの医療機器への該当性に関する基本的な考え方について」(平成26年11月14日)は、プログラムの医療機器への該当性に関して、以下の2つの判断要素を掲げたうえで、プログラム医療機器にあたるもの、あたらないものをそれぞれ例示しています。

  1. プログラム医療機器により得られた結果の重要性に鑑みて疾病の治療、診断等にどの程度寄与するのか
  2. プログラム医療機器の機能に障害等が生じた場合において人の生命および健康に影響を与えるおそれを含めた総合的なリスクの蓋然性がどの程度あるか

例えば「腹膜透析装置等の医療機器を稼働させるための設定値パラメータ又は動作履歴データを用いて、汎用コンピュータ等でグラフの作成、データの表示、保管を行うプログラム」などデータの加工処理に用いられるプログラムは、医療機器には該当しないとされています。

一方、「画像診断機器で撮影した画像や検査機器で得られた検査データを加工・処理し、病巣の存在する候補位置の表示や、病変又は異常値の検出の支援を行うプログラム」といった「治療計画・方法の決定を支援するためのプログラム」は医療機器にあたるとしています。

医療機器に当たる場合

自動診断システムといっても様々なものが存在するため、プログラム医療機器該当性は個別に判断する必要はあるものの、
CT画像、MRI画像を用いた画像診断は「画像診断機器で撮影した画像や検査機器で得られた検査データを加工・処理し、病巣の存在する候補位置の表示や、病変又は異常値の検出の支援を行うプログラム」であるため、医療機器にあたる可能性が高いです。

また、薬機法は、医療機器が人体に与えるリスクに応じて、医療機器を、以下の3つに分類をしています。

  • 高度管理医療機器
  • 管理医療機器
  • 一般医療機器

これらの医療機器は、さらに、厚生労働省の告示等によって、リスクの程度に応じたクラス(Ⅰ~Ⅳ)に分けられています。

プログラム医療機器の多くはクラスⅢまたはクラスⅡに該当し、重要な治療方針の決定につながるものに関しては、副作用または機能の障害が生じた場合において、人の生命および健康に重大な影響を与えるおそれがあるものとして、クラスⅢに該当すると考えられています。

プログラム医療機器に該当する場合には、その分類に応じて、製造販売業者は、製造販売業の許可、登録、製造販売承認申請等を行う必要が生じます。

AI技術は、医療機器に当たるかが重要

AI技術は、まだまだ新しい技術です。医療機器に当たるかは、まだ未知数なところが多いです。

事業者は、慎重に行う必要があります。