昨今、何らかの形で自社の事業に AI (Aritficial Intelligence)を用いるスタートアップは増加する一方であるが、AIをよりよく活用していくためには、AIに機械学習等をさせるため、多くのデータを集めていくことが必要になります。
また、同じく近年その利用領域が拡大されているIoTは、これまでデータとして残されてこなかった各種デバイスのユーザーの利用データ等を集積することを可能としました。
そのため、既存の手持ちのデータ保有量が少ないスタートアップが、AIを効果的に事業に活用していくためには、オープンデータの活用の他、IoTの積極的な活用によるデータ収集を組み合わせることが効果的です。
AIに関する技術について、特許取得ができるかを検討するに当たっては、大きく分けて、①AIアルゴリズム発明、②AI利用発明、③AI 出力発明の3つに分類することができます。
AI技術のアルゴリズムそのものについての発明です(例:機械学習のアルゴリズム)。この種の発明については、以下の項目などを考慮し、特許出願すべきか否か、また、出願する場合にいかなる権利を取得する ことを目指していくかを検討する必要があります。
いわば、AI技術を自社のビジネスモデルに適用した際に生じうる発明です。
この種の発明は、AIのアルゴリズム自体を独自に開発せずとも発生するので、多くの業種・業態のスタートアップが関係します。
特許自体の説明については、アルゴリズムに比べたら、取得しやすく 、AI 利用発明は、AI系スタートアップが知財戦略を構築する上で、特に重要となる発明といえます。
AI学習モデルにより出力されたものに関する発明であり、主に化学・材料分野においては、出力された最適なパラメータについて特許権の取得を目指す場合が多いです(「マテリアルズ・インフォマティクス」ともいう)。
この種のパラメータ発明については、特許の有効性(サポート要件や明確性要件)を検討して、いかなる権利の取得を目指すべきか、よく検討する必要があります。
上記のように、AIとIoTは密接に関連するものであり、AI事業に活用すべきデータの収集にあたっては、IoT が大きく活用されます。
例えば、AIとIoTを組み合わせ、IoTによるデータ収集 → AIを利用したプロダク ト/サービスの改良を図っているスタートアップの例として、株式会社ニューロスペースが挙げられます。
ニューロスペースは、従業員の健康を睡眠によってサポートする、BtoBtoE(Em-ployee=従業員)の事業を主たる事業とする、2013年12月創業のスタートアップであり、「lee BIZ(リー・ビズ)」等のプロダクト/サービスを提供しています。
同社においては、IoTデバイスを通じてデータを各ユーザーから収集し、AIを活用して当該データからソリューションを生み出す仕組みを作っているが、このプラットフォームに関して、β版開発のスタートを発表した時点においてすでに特許出願をしていました。
同社のプロダクト/サービスの改良のためには、多くのデータが必要となるところ、ニューロスペースは、BtoBtoE事業をメインとしているため、エンドユーザーとなる多数の従業員から事前にアンケートに回答してもらうことで、サービス提供前から提供後に至るまでのデータを多数収集してきたというものです。
このように、AI・IoTスタートアップは、有効に特許を活用することにより、事業を拡大することができるのです。