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医療分野におけるAI(人工知能)5つの活用事例

ロボット・AI・ドローンの法律

医療分野におけるAIの活用

AI(人工知能)は、保険医療分野でも、活用が期待されています。

厚生労働省は、保健医療分野においてAI開発を進めるべき6つの重点領域 として、ゲノム医療、画像診断支援、診断・治療支援、医薬品開発、手術支援を挙げています。

保健医療分野におけるAI開発の方向性について

(1)ゲノム医療

ヒトの遺伝情報(ゲノム)は約30億塩基対で構成されています。

塩基配列は個々人により異なり、また、その変異によっては疾患の原因となることから、診断や治療方針の決定に用いることが可能であり、特にがんや難病の分野でゲノム解析を用いた診療(ゲノム医療)が実用化しつつあります。

科学技術の発展によりゲノム解析のコストは大幅に低下していることから、ゲノム医療への期待が高まっていますが、ゲノム解析はその性質上大量のデータを解析する必要があるため、人間が手作業で行うには限界があります。

そこで、AIを活用すれば変異箇所を短時間で発見し解析することが可能であり、きめ細やかな個別化医療を実現できるのです。

また、多数のゲノム情報や臨床情報を集積しデータを包括的に解析することで、従来の方法では発見できなかった疾患の原因遺伝子を短時間で発見することが可能です。

現在、厚生労働省では研究ベースでのゲノム情報と臨床情報を統合したデータペース構築を行っています。今後は研究だけでなく、通常の医療を通じて得られるデータの集約も進むものと思われます。

(2)画像診断支援

画像診断分野では、ディープラーニングの活用により、診断系医療機器に疾患名候補や異常所見候補を提示する等の機能を付加できるようになると考えられています。

これにより、専門医が十分に存在しない僻地で高水準の画像診断を受けられるようになる、医師による診断後のダブルチェックに利用して見落とし率を低下させる、大量の画像から医師が読影するべき画像を選び出して医師の負担を軽減させ、効率的な診断を可能にする等のメリットが期待できるのです。

(3)診断・治療支援

生命科学分野は日々進歩しており、常時、膨大な数の論文が公表され続けるところ、医師等の医療従事者が日常業務の傍らこれをすべて読破して最新の知見を把握し続けることは不可能です。

論文以外にも動画やlOTデータ、ゲノムデータを含むビッグデータの活用等、保健医療分野における情報量は急激に増加することが予想され、これらの情報を人間がすべて処理・把握することは不可能です。

しかし、AIを用いることで論文を始めとした膨大な量の医療関連データを処理・把握し、診断や治療に役立てることができ、医療従事者の負担軽減にもつながります。

具体的な活用としては、例えば以下のようなものが考えられます。

  • AIの診断・治療支援を活用することで専門外の疾患の診療も可能となり、医療過疎地でも都市部と変わらない質の高い医療を提供できるようになる
  • 診療データを蓄積することにより、比較的稀な診断の難しい疾患の見落とし防止にもつながる
  • 客観的なバイオマーカ-(評価指標)が乏しいと言われている精神科医療においても、患者の発話・表情・体動等のデータにAIを活用することにより診療の精度を上げることができる

(4)医薬品開発

医薬品が開発され実用化に至るまでには長い年月とコストがかかり、成功率も低いとされています(研究開始から承認取得まで9~17年の年月、1成分あたり1000億円近くの 開発費用、2万~3万分の1の成功率)。

しかし、AIを活用することにより開発期間の短縮と開発経費の削減が期待できます。

医薬品開発プロセスは、まず最初に創薬ターゲット(医薬品が作用するタンパク質等の生体内分子)の決定が必要となるが、開発が容易なものはすでに多くが研究され尽くしています。

しかし、AIにビッグデータを学習させることにより、これまで発見されていない創薬ターゲットの発見が期待できます。

次に、創薬ターゲットと化合物との結合データをディープラーニングで学習させることにより、高い精度で当該創薬ターゲットに薬理活性をもつ化合物を設計することができる。また、医薬品候補となる化合物の有する毒性についても予測が容易となり、開発着手後に想定外の毒性の発覚のため開発を中止するリスクを低減することができます。

(5)手術支援

手術は医療の中でも特に重要な領域であるが、外科医は手術中に迅速な意思決定を求められることが多い等から、精神的・身体的負担が非常に大きいうえに、外科医師数は減少傾向が続いています。

しかし、手術時のデータ、経過情報や合併症発生等の予後データを蓄積しAIを活用することにより、成功確率の高い手術の選択が可能となり、外科医の負担を軽減するだけでなく、患者の生命予後の改善も期待できます。