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企業の人事におけるテクノロジー「HRTech」の法律問題を弁護士が解説

IT企業のための法律

HRTechの法律的ポイントとは

HRTechとは、企業の「人事分野」におけるテクノロジーのことをいいます。

例えば、求人・採用、労務管理、人事評価などの問題をテクノロジーで解決しようとするものです。

HRTechは、幅広い分野で、それぞれに法律的なポイントがあります。今回は、HRTechの法律問題を解説していきます。

HRTechの求人・採用分野の法律的ポイント

HRTechにおける求人・採用分野では、求職者と企業側のマッチングサービスが典型です。

このマッチングサービスでは、職業安定法上の「職業紹介」に当たるかが問題になります。

職業安定法は、企業による労働者の労働者の募集・職業紹介・労働者供給について規制している法律です。

職業紹介事業を行う場合は、原則として行政(厚生労働大臣)の許可が必要になり、許可をえずに、職業紹介事業を行うと、1年以下の懲役または100万円以下の罰金になります。

職業安定法上の「職業紹介」は、「求人及び求職の申込みを受け、求人者と求職者との間における雇用関係の成立をあっせんすること」とされています。

「雇用関係の成立をあっせんする」とは

ここでのポイントとは、HRTechサービスにおける「雇用関係の成立をあっせんする」に該当するかどうかです。

「雇用関係の成立をあっせんする」とは、判例(最高裁平成6年4月22日)をみてみると、求人者と求職者との間における雇用契約成立のための便宜を図り、その成立を容易にさせる行為一般をいうものであり「そのあっせんには、求人者と求職者との間に雇用契約をさせるために両者を引き合わせる行為のみならず、求人者に紹介するために求職者を探索し、求人者に就職するように求職者に勧奨するいわゆるスカウト行為も含まれる」とされています。

ここでは、事業者の要望、求職者の要望をヒアリングし、紹介して、就職させるなどの行為があれば、上記「あっせん」に該当するものと考えられています。

また、特定求職者や求人者の選別を行っている場合には「あっせん」に該当する可能性が高いです。

職業紹介業を取得をするためには

職業紹介業を取得するために、以下のような財産要件を満たす必要があります。

  1. 資産の総額から負債の総額を控除した額が500万円以上であること
  2. 現金・預貯金の額が、150万円+(60万円×事業所数-1)以上

職業紹介業を回避するためには

職業紹介業の許可はハードルが高いので、それを回避するためには、企業側から広告料を取り、「求人情報の提供」のみをするなどが考えられます。

ここで重要なことは、あくまで上記の「あっせん」行為に該当しないことが必要です。
そこで、以下のような措置を講じておきましょう。

  1. 契約・利用規約などで、「情報提供」であることを明確化する
    →事業者からのあっせん、マッチングは行わないことを明確化
  2. 対価については、情報提供の対価とすることを明確化

HRTechの労務管理の法律的ポイント

HRTechの労務管理については、以下のようなものがあります。

  • 勤怠管理
  • 給与計算
  • 社会保険・雇用保険加入・脱退

このようなHRTechの労務管理については、社会保険労務士との独占領域との関係で問題になる場合があります。

社労士法27条では、以下のように規定されています。

社会保険労務士又は社会保険労務士法人でない者は、他人の求めに応じ報酬を得て、第2条第1項第1号から第2号までに掲げる事務を業として行つてはならない。

第2条第1項第1号から第2号までに掲げる事務とは、各種申請書の作成、提出手続代行のことをいいます。

よって、HRTechでは、報酬を得て、申請書の作成、提出手続代行をするようなサービスについては、注意が必要です。

HRTechの人事データの取扱の注意点

HRTechについては、様々な人事データを扱うことになります。このような人事データについては、個人情報を含め、様々なデータが含まれています。

そのため、個人情報保護法などの法律を遵守する必要があります。

個人情報については、個人データを第三者に提供するには、記録義務などがあります。

改正個人情報保護法施行!個人情報を第三者提供する場合の事業者の義務とは

また、人事データについては、匿名加工情報にすれば、記録義務なく、第三者に提供することができるので、人事データを活用したい事業者は、参考にするのがよいでしょう。

【匿名加工情報】改正個人情報保護法の改正における「ビッグデータ」活用のポイント