2018年、国会で働き方改革関連法が成立しました。
これは「働き方改革法」という法律が新たに制定されたものではなく、労働法に関するさまざまな法律が改正されたものを総称して「働き方改革関連法」と呼んでいます。
ニュースになったので、言葉自体は知ってる方も多いと思いますが、実際どのような内容なのかは、未だに押さえられていない方も多いのではないでしょうか。
そこで、働き方改革関連法のおもな改正のポイントを改めて解説します。
従来は、時間外労働(残業)の上限は法律では定められておらず、厚生労働省の告示によって上限45時間とされているだけでした(これを超えても罰則はありませんでした)。
しかし、働き方改革関連法により、例外規定はあるものの原則として月45時間、年360時間が上限となりました。
なお、残業時間の上限規制は、中小企業(多くのスタートアップ企業は「中小企業」に含まれます)には2020年4月1日から適用されています。
従前から、月60時間を超える時間外労働については、割増賃金率が通常の25%の2倍である50%以上とされていましたが、中小企業についてはこの50 %の割増率の適用が猶予されていました(60時間を超えても25%のまま)。
しかし、2023年4月1日からこの中小企業への猶予が撤廃され、月60時間超の時間外労働については中小企業も50%の割増賃金を支払う必要があります。
有給休暇の取得率が低いことが問題とされていたことから、有給休暇取得率を上げるために、年10日以上の有給休暇が付与される従業員に対して、会社はそのうち5日間について時季を指定して有給休暇を与える必要があります。
こうすることで、有給休暇の確実な取得を目的としています。なお、これは2019年4月1日から適用されています。
一定の年収(1,075万円以上)がある高度の専門的知識を必要とする業務に従事する従業員については、健康確保措置を講じることや本人の同意等を条件として、労働基準法の労働時間規制が適用されない(つまり、残業時間規制等が適用されない)ものとすることができる制度です。
具体的な対象業務は、金融商品の開発、ディーリング、アナリスト、コンサルタント、研究開発です。これは、2019年4月1日から適用されています。
パートタイム労働者や有期雇用労働者の待遇(賃金や福利厚生、休暇などすべての待遇が含まれます)について、正社員(無期雇用フルタイム労働者)の待遇に比べて不合理な相違を設けてはならないとするものです。
これは、同一の前提事情(能力や勤務状況など)であれば同一の待遇(均等待遇)とすることが必要であり、前提事情が異なる場合にはその相違に応じてバランスの取れた待遇(均衡待遇)とすることが必要です。
中小企業については、2021年4月1日から適用されます(それ以外は2020年4月1日から)。
同一労働・同一賃金対応 | グローウィル社会保険労務士事務所
この働き方改革関連法には、規制の強化と緩和の両方が含まれています。
世の中では経営者よりも圧倒的に労働法が適用される労働者(従業員)が多く、労働法は多くの人の生活に直接かかわるものであることに加えて、労働法の守備範囲は広範にわたることから、労働法の法改正は頻繁に行なわれています。
従業員を雇うことは、ほとんどすべてのスタートアップ企業が経験することであり、そこには多くの法的リスクが潜んでいます。経営者は、常にアンテナを立てておきましょう!