AI(人工知能)については、様々なビジネスに活用がされています。医療分野にも、AIの活用が期待されています。
厚生労働省の「保険医療分野におけるAI活用推進懇談会」の報告書でも、AI開発を進めるべき重点領域として、次の6つの領域が挙げられています。
例えば、画像診断用のAIを典型例ですが、ディープラーニングの学習用プログラムに、医療機関から集積した大量の画像データやカルテのデータ(学習用データ)を使用して学習を実施し、その結果、画像診断用の学習済みモデルを開発するといった形になります。
医療分野におけるAIに関する法律問題を想定すると、次の2つの段階に分けることができます。
医療・ヘルスケア関係のAIの学習用データは、その多くが個人情報になることが多く、個人情報保護法の適用が問題となります。
まず、既に取得済みの個人情報を用いて、ディープラーニングを実施する場合、利用目的の範囲内となっているかを確認する必要があります。
つまり、個人情報保護法では個人情報を取得する際に、利用目的を明示し、その利用目的の範囲内でのみ、当該個人情報を利用することができるのです。
よって、企業として、個人の健康情報などを使い、ディープラーニングをし、学習済みデータを作成する場合には、利用目的にその旨を記載するようにしましょう。
また、ディープラーニング自体が、医学系研究指針の適用を受ける「人を対象とした医学系研究」に該当するかどうかを検討する必要があります。
同指針が適用されるのであれば、倫理委員会の審査を経る必要があります。
ある企業が保有している個人情報を、第三者提供し、提供先で機械学習を実施し、学習済みモデルを開発する場合ではどうでしょうか?
個人情報保護法上、個人情報の第三者提供は原則として禁止されています。そのため、第三者提供するためには、本人の同意を得ることが必要です。
複数の企業での開発や大学と企業との共同研究などの場合には、注意が必要です。
ここでは、学習済みモデルやそれを組み込んだ機器が、医療機器に該当するかが問題となります。
医療機器の購入代金は、保険収載されていない場合は医療機関の全額負担となります。
しかし、保険収載された場合は、国が定めた価格(公定価格)に応じて、医療機器を使った医師は、診療報酬を受けることができ、医療機関の負担が軽減されるため、より普及しやすくなります。
学習済みモデルやそれを組み込んだ機器について、薬機法上の医療機器として製造販売することで、上記のようなメリットを得ることが考えられます。
AI医療機器については、「医療機器」該当性については、現状、独自の基準があるわけではありません。
PMDAにおいては、AI等新技術を応用した医療機器について、必要に応じてガイドラインを作成することを検討しています。
「医療機器」に該当するために、AIの特性を踏まえた審査対策をする必要があります。
これらの項目を考慮する必要があります。
学習済みモデルを開発する段階、そして学習済みモデルを利用する段階、それぞれに必要となる対応は異なります。
しっかりと各段階に合わせた対応を取るようにすることが重要です。