IT法務や仮想通貨、ICO、AIの法律に詳しい弁護士|中野秀俊のホームページです。 IT法務や仮想通貨(ICO)、AIなどのITビジネスを専門に扱う法律事務所です。
グローウィル国際法律事務所
10:00~18:00(月~金)

海外企業とライセンス取引をする際の注意点とは【アメリカや中国を例にみる】

海外進出に必要な法律

海外ライセンス取引は増えている

日本企業が海外企業と取引することが増えています。

近年、日本市場の縮小に伴い、海外市場に活路を求める日本企業が増えています。弊社(グローウィル国際法律事務所)にも、海外取引がらみの案件が増えています。

海外市場に挑戦する場合に、いきなり自社で海外に乗り込み、自社のみで販売することは通常なく、現地のパートナーと共同で行うことが通常です。

海外市場でビジネスする際に、重要なのが、ライセンス戦略です。

商品・サービスにおいて、日本や海外で特許権や商標を取得し、製品について有するノウハウ等も含めて、現地パートナーとライセンス契約を締結して、ライセンス利用を現地パートナーに許諾することにより、現地パートナーを通じて、販路拡大をすることができます。

ここで、気を付けないといけないのは、現地パートナーとのランセンス契約です。

知的財産のライセンスについては、国によって法制度の違いがある中で、どこまで保護されるのかが明確でない場合があります。

そこで、今回は、知的財産などのランセンスについて、各国の法律などをみていきましょう!

特に、ランセンス契約で、ランセンスの権利がどちらに帰属するかについて、お互いに争わないようにしましょうという条項(不争義務)について、どのような条項があるのでしょうか?

日本における不争義務

日本では、公正取引委員会の「知的財産の利用に関する独占禁止法上の指針」により、不争義務を課す行為は、「無効にされるべき権利が存続し、当該権利に係る技術の利用が制限されることから、公正競争阻害性を有するものとして不公正な取引方法に該当する場合もある」という取扱いになっています。

よって、不争義務を契約で定めても、無効になってしまう可能性もあるので、注意が必要です。

米国における不争義務

米国では、連邦最高裁判決で、契約において、不争義務を定めても、対象ライセンスの無効等の確認訴訟を提起することができるので、不争義務を契約で規定しても、あまり意味がないことになります。

中国における不争義務

中国では、2005年1月1日施行の「最高人民法院による技術契約紛争事件審理の法律適用における若干問題に関する解釈」で、不争義務を契約で定めても、「技術の違法独占、技術進歩の妨害」に該当する旨が規定されて、不争条項は無効になります。

さらに、「工商行政管理機関の知的財産権濫用による競争排除・制限行為の禁止に関する規定」で、シェアを有している事業者は、正当な理由がない限り、ライセンスの取引の相手方が、契約上、不争義務を規定してはならないと規定されました。

現地エージェントへの販売

米国では、2011年に、法改正により、先発明主義から先願主義に移行する特許法の大改正がなされました。

それに伴い、近時、改正特許法の解釈をめぐる最高裁判決が度々出されるようになっています。

特許権者であるスイス医薬品企業が、有特許出願日前に、秘密保持契約で、秘密保持義務を負う米国のライセンシーに対して、特許出願の対象となる医薬品を販売していたことが、改正特許法の新規性喪失事由の規定における「販売中」に当たり、特許権を無効にすると判断しました。

このように、秘密でなされた販売については、特許法上の新規性は失われないという議論もあったのですが、最高裁は、秘密でなされた販売も、特許法上の新規性を失わせるものであるという判決をしたのです

米国市場に進出しようとする企業としては、米国進出のために、現地の米国のエージェントとライセンス契約を締結することになりますが、その米国エージェントへの販売が特許出願の時期より前になってしまうと、特許権を取得できなくなってしまうということになってしまう可能性がありますので、注意が必要です。