システム開発契約を結んだものの、途中でとん挫することがあります。ベンダ側が納期遅延をし、ユーザー側が契約の解除を通知し、それまでに支払った着手金などの返還を求める事例はよくあります。
ベンダ側も納期遅延をしたのは、ユーザー側がたび重なる仕様変更が原因であるとして、報酬残額を支払ってほしいと主張している場合、法律的にはどうなるのでしょうか?
システム開発において、ベンダ側は,システムを完成させる義務を負うことは当然です。それだけでなく、システム開発の専門家として、システム開発で起こる問題点を処理し、適宜ユーザの意見を調整し、開発作業を進行させるという「プロジェクト・マネジメント義務」があるとされているのです。(東京地裁平成16年3月10日判決,東京地裁平成24年3月29日判決)。
よって、ベンダ側としては、ユーザーの意見も聞きつつ、それに振り回されることなく、プロジェクトを推進させる必要があるのです。
これに対して、ユーザー側も、ベンダ側に任せっぱなしでいいかというと、そんなことはありません。先ほどの平成16年の判決では、システム開発は、ベンダとユーザとの共同作業であるという側面があるためユーザ側にも、システムの開発に向けて,ベンダの作業に協力する義務があるとされています。
システム開発が途中でとん挫した場合に、システムが完成しなかったのは,どちらの責任かということが争われることになります。ベンダ側、ユーザー側とも上記義務があるのですから、それを果たしていたのかがポイントになるわけです。
このような中、有力な証拠になるのが「議事録」です。実際の裁判でも、議事録に基づいて当時のプロジェクトの進捗,課題状況,役割分担の実施状況などの事実認定されています。紛争になる前から、双方の義務履行状況がわかるように議事録をつけておくことが重要になります。