システム開発契約において、どこをチェックするべきなのかIT企業としては、気になるところです。
そこで、今回は、システム開発契約で気を付けるべき4つのポイントを解説します。
まず、意識すべきなのは、システム開発契約が、準委任契約なのか、請負契約なのかです。
準委任契約は、単価×時間で報酬をもらう形態です。作業に対してお金がもらえるものです。SES契約が典型例です。
請負契約は、成果物があり、これを納入することで初めて、報酬がもらえるというものです。
この2つは、契約書のタイトルがどう記載されているかは関係ありません。
「請負契約」というタイトルだとしても、単価×時間で報酬をもらう内容になっていたら、それは「準委任契約」になるのです。
特に、ベンダ側は、何らかの「成果物」があるのか?成果物が、報酬の支払いと結びついているのか?は、チェックするようにしましょう!
システム開発においては、最初に基本契約を定めて、後から個別契約を締結する方式が取られる場合があります。
その場合、どのようにして、個別契約が成立するのかを確認する必要があります。
例えば「個別契約は、委託業務の内容・委託料その他の条件を明記した注文書と当該注文書の内容を承認する注文請書を取り交わすことによって成立する。」と規定されていれば、個別契約に成立に必要なのは、注文書と注文請書です。
ここで、注文請書を出していないと、個別契約が成立していない可能性も出てきます。
そうなると、個別契約に基づく請求ができなくなってしまうのです!よって、基本契約書に規定された方式が取られているのかを確認する必要があるのです。
これも、システム開発では、必ず規定される条項です。
そもそも、出来上がった成果物やコンテンツをどちらに権利を帰属させるかというものです。
この規定がなかった場合には、著作権は、成果物を作成した側に帰属します。
システム開発であれば、ベンダ側に帰属します。これをユーザ側に移したいのであれば、その旨を契約書に記載する必要があります。
よく「お金払っているなんだから、権利はこちらに移るんでしょ」という意見を耳にしますが、お金を払っていることと、権利が移動するかは、別の話です。
条項例は、以下の通りです。
納入物に関する著作権(著作権法第 27 条及び第 28 条の権利を含む。) は、乙が従前から保有していた著作物の著作権を除き、 当該個別契約に係る委託料が完済された時期をもって、乙から甲へ移転 する。
ポイントは、(著作権法第 27 条及び第 28 条の権利を含む。) を入れることです。
著作権法27条、28条は、コンテンツを改変する権利なのですが、法律上、「著作権法27条、28条」と記載しないと、この権利については、譲渡されないとなっています。
なので、著作権の後には、(著作権法第 27 条及び第 28 条の権利を含む。) を入れると覚えておきましょう!
次に「乙が従前から保有していた著作物の著作権を除き」という規定があります。成果物について、全て著作権を相手方に譲渡させるのかは、注意する必要があります。
例えば、成果物が、自社のシステムをベースに、新たなものを作成するような場合、成果物の全てを譲渡してしまうと、ベースの部分の著作権も譲渡してしまうことになります。
著作権を譲渡してしまうと、その後、第三者の開発案件で、利用することができなくなるのです。
なので、著作権を譲渡する場合でも、どの範囲までの部分を譲渡するのかは、注意して決める必要があります。
また、いつ著作権が譲渡されるのかも重要になります。
ベンダ側に有利なのは、「委託料が完済されたとき」とするものです。つまり、ユーザ側から、料金が払われなければ、著作権は移転しないとするのです。
そのほかにも「検収完了の通知がされた時点で」する場合もあります。
ユーザ側としては、何の制限もなく「乙から甲に移転する。」とした方が、有利になります。
このように、いつ著作権が譲渡されるかも、注意してみましょう!
ソフトウェア開発で問題になる条項として、「損害賠償」も挙げられます。
第●条(損害賠償)
甲または乙は、本契約の履行に関し、相手方の責に帰すべき事由により損害を被った場合、直接かつ現実に生じた通常の損害に限り、相手方に対して損害賠償を請求することができる。
賠償の範囲は、損害の直接の原因となった本業務に関する業務委託料の総額を上限とする。
最初に、損害賠償の規定で問題になるのは「損害」の範囲です。単に「損害を賠償する」となっていた場合には、法律上、通常損害に限定されます。
通常損害とは、この行為から普通は発生するであろう損害です。
気を付けるべきは、「一切の損害(弁護士費用・逸失利益)を賠償する」という条項の場合です。
この場合には、損害が青天井になる可能性もありますので、注意しましょう!
また、ベンダなどの受注者側としては、損害賠償の上限規定を入れたいところです。その際には、「業務委託料の総額を上限とする。」という規定を入れましょう!
相手方から、上限規定を入れることがNGの場合もあります。その場合には、上記の通り、損害の範囲で調整することが考えられます。