IT法務・AI・暗号資産ブロックチェーンNFT・web3の法律に詳しい弁護士|中野秀俊
グローウィル国際法律事務所
03-6263-0447
10:00~18:00(月~金)

決済・送金サービスの法律についての質問に弁護士が回答【資金移動業・決済代行・ポイント】

課金サービスに必要な法律

決済・送金サービスについての質問に回答

当事務所(グローウィル国際法律事務所)では、決済・送金サービスについての相談が多くきます。このブログでも、過去、様々な解説記事を書いてきました。

・「Osushi」騒動にみる個人間送金・割り勘サービスの法律【paymo・Kyashとの比較】
・個人間送金・割り勘アプリで注意するべき法律をIT専門の弁護士が解説

当事務所で、多くの質問があるものを今回は、Q&A方式で解説していきます。

【2020年4月加筆】資金移動業の法律改正案が国会で提出されました。

資金移動業の法律が変わる!資金決済法の改正案を弁護士が解説!【2022年11月加筆】

電子マネーと資金移動業

質問:電子マネーに関する業務を行うには資金移動業の登録が必要?

当社が発行する電子マネーに換金機能を付与する場合、その電子マネーに関する業務を行うには資金移動業の登録が必要ですか。

回答

資金移動業の登録が必要な場合とは、「為替取引」に当たる場合です。

判例上、為替取引とは「隔地者間で直接現金を輸送せず に資金を移動する仕組みを利用して資金を移動することを内容とする依頼を受けて、これを引き 受けること、又はこれを引き受けて遂行すること」とされています。

電子マネーについて、換金を自由に行うことができる機能を付与する場合には、Aが購入した電子マネーをBが受け取り、Bが当該金銭を換金することで、資金の移動が可能になります。

このような換金可能な電子マネーに関する取引は、判例によって為替取引の意義として示された「顧客から、隔地者間で直接現金を輸送せずに資金を移動する仕組みを利用して資金を移動することを内容とする依頼を受けて、これを引き受けること、又はこれを引き受けて遂行すること」に該当し、為替取引に該当すると考えられます。

したがって、換金可能な電子マネーに関する業務を行うには、資金移動業者として登録を取得することが必要です。

質問:他社が発行する換金可能な電子マネーを発行するには資金移動業の登録が必要?

当社は、換金できない電子マネーAを発行しようと考えています。そして、この電子マネーAについては、他社が発行する換金可能な電子マネーBと交換することができるというサービスを付加しようとも考えています。

当社が電子マネーAを発行する場合、資金移動業の登録が必要になるのでしょうか?

回答

上記の通り、換金できる電子マネーを発行するためには、資金移動業者として登録を行うことが必要です。

他方、換金できない電子マネーについては、その電子マネーについて前払いされた金銭を取得することができないことから、換金できない電子マネーを発行することは為替取引に該当しないと考えられます。したがって、資金移動業者として登録を行う必要はありません。

では、換金可能な電子マネーと交換することができる換金できない電子マネーを発行することは、為替取引に該当するのでしょうか。

この点については、明確な判例や解釈基準はありません。

しかし、換金できない電子マネーAが、以下のような性質を持つ場合には、資金移動業の登録が必要な可能性があります。

  1. 電子マネーAが電子マネーBのほかにも、換金性あるものと交換できる。
  2. 電子マネーAの発行総額のうち、電子マネーBとの交換が行われている比率が高い

収納代行サービスと資金移動業

質問:収納代行サービスは資金移動業の登録が必要?

当社は、A社が顧客に対して有する代金債権等に関し、その弁済金を顧客からA社を代理して受領し、受領した回収金をA社に引き渡すサービス(いわゆる収納代行サービス)を行おうと思つていますが、資金移動業の登録は必要ですか。

回答

収納代行サービスが「為替取引」に該当するか。

上記の通り「為替取引」とは「顧客から、隔地者間で直接現金を輸送せずに 資金を移動する仕組みを利用して資金を移動することを内容とする依頼を受けて、これを引き受けること、又はこれを引き受けて遂行すること」をいうとされています。

そして、ご質問の収納代行サービスは、A社が貴社に対し、代金債権等の弁済の代理受領権限を与え、貴社がA社の代理人として顧客から代金等の弁済を受領するサービスであって、貴社がA社からの委託(委任)に基づき受領した金銭を委託者(委任者)たるA社に引き渡す債務を履行するものにすぎません。

このように、弁済金の受領の時点において顧客の弁済が完了し、その後のA社への金銭の引渡しは自己の債務を弁済する行為にすぎないことからすると、貴社は、A社から資金を移動することを内容とする依頼を受けてこれを遂行していないと考えられます。

したがって、ご質問の収納代行サービスは、為替取引には該当しないと考えられます。

収納代行サービスの為替取引該当性については、金融庁は、「平成21年1月14日付金融審議会金融分科会第二部会報告書においては、『収納代行サービスについては、性急に制度整備を図ることなく、将来の課題とすることが適当』とされており、現在は、法律の対象外です。

しかし、将来的には、法律の規制対象内とされる可能性もありますので、注意が必要です。

クレジットカードの利用と法律

質問:資金送金サービスでクレジットカードを利用する際の注意点は?

資金送金サービスにおいて、クレジットカードを利用することにより、送金資金の支払いを受けたいと考えていますが、気を付けるべき点はありますか。

回答

送金サービスにおいて、クレジットカードを利用することにより、送金資金の支払いを受けることについては、基本的には、資金決済法や割賦販売法には抵触しません。

しかしながら、例えば、利用者であるA氏が、自らのクレジットカードを利用して送金資金の支払いを行った上で、自己名義の銀行口座への送金を依頼した場合、クレジットカードのショッピング枠の現金化と同様の効果を実現することができてしまいます

クレジットカードのショッピング枠の現金化については、クレジットカード会員規約に違反するものであり、また、場合によっては、詐欺罪に該当する可能性もあるとして、クレジット業界全体において、注意喚起を行っているところです

そのため、資金送金サービスにおいて、クレジットカードを利用することにより、送金資金の支払いを受けることは禁止されるものではないと考えられていますが、金融庁は、資金送金サービスにおいて、クレジットカードを利用することにより、送金資金の支払いを受けることについて、問題があるとされています。

したがって、このようなスキームを構築する場合には、事前に監督官庁である金融庁の見解を確認するなどし、慎重な対応を行ったほうが望ましいです。