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システム開発でプログラムが作成された場合に、そのプログラムの権利が問題になります。特に問題となるのは、著作権です。
では、システム開発におけるプログラムの著作権は、誰に帰属するのでしょうか?
著作権法で、著作権の対象となるのは、著作物に該当する場合です。
著作物とは、「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう」とされています。
そして、同項9号では「プログラムの著作物」として、コンピュータ・プログラムが、著作物として保護されることを明示しています。
法律上、「プログラム」とは、「電子計算機を機能させて一の結果を得ることができるようにこれに対する指令を組み合わせたものとして表現したもの」とされています。
「プログラムの著作物」ですが、著作権法上は、「その著作物を作成するために用いるプログラム言語、規約及び解法に及ばない」と規定しています。この規定から、プログラム言語自体は、著作権の対象外ということになります。
著作権法上、プログラムの著作権については、「電子計算機を機能させて一の結果を得ることができるようにこれに対する指令を組み合わせたものとして表現したもの」と規定されています。
そして、このプログラムの著作権といえるためには、ありふれた著作権だけでなく、オリジナリティ(創作性)があるものでなければならないとされています。
著作権が誰に帰属するかについては、一般的には、手を動かした人に帰属します。プログラムであれば、プログラムを書いた人です。
ユーザー側の会社の主張として、報酬を支払っているから当然、著作権などの権利は、ユーザー側に帰属していると主張したいかもしれません。
しかし、お金を支払うことと、権利の帰属は別問題です。著作権法は、あくまで、著作権については、手を動かした人に権利が帰属するとしているのです。
また、著作権については、気を付けるべき規定があります。
一つは、職務著作です。これは、会社の業務として、プログラムを作成した場合には、そのプログラムの著作権は、会社に帰属するというものです。
プログラムの著作権者が、プログラムの著作権侵害をされた場合には「著作権侵害行為の差止め」や「損害賠償請求」など、どのような紛争が多いのでしょうか?
プログラムの著作物に関わる紛争の類型として、以下のようなものが挙げられます。
例えば、①の類型は、著作権の譲渡を受けたと思い込んでいたユーザが、プログラムを利用(複製・改変等)していたところ、ベンダから権利行使されたという事例が考えられます。
また、②の類型では、退職した従業員が、その会社に所属していた際に開発していたソフトウェアと同種のソフトウェアを開発したところ、元の会社から権利行使されたという事例が考えられます。
いずれも、会社と元従業員、ベンダとユーザ、あるいはライセンサーとライセンシーのように、紛争当事者の間に一定の契約関係にあった者同士で争われることが多いです。
著作権侵害といえるためには、以下の2点が必要とされています。
依拠性とは「他人の著作物をみて、パクったこと」。類似性とは「他人の著作物と似ていること」を言います。
そして、具体的に著作権侵害になるかの判断基準としては、両者の著作物を並べて対比し、そこに共通している要素を取り出し、そこが創作的な表現であることかどうかを見ることになります。
ここでよくあるのが、原告が、被告のソフトウェアが、原告の動作や機能の類似性を主張・立証する場合です。
法律上、動作や機能は、表現それ自体ではないアイデアにすぎず、著作権による保護が及ばないため、それだけでは著作権侵害が認められることはないことに注意が必要です。
では、著作権侵害になる要素は、どのようなものがあるのでしょうか。
プログラム全体のうち、一致又は類似する部分の占める割合や、分量(行数・文字数)が多い場合には、著作権侵害が認められる方向に作用すると考えられます。
知財高裁平成28年4月27日判決では、旧バージョン、新バージョンという2つのソースコードについて著作権侵害が争われた。
裁判所は、旧バージョンについて、原告のプログラムと被告のプログラムとの間では、約86%において一致又は酷似している上に、その記載順序及び組合せ等の点においても、同一又は類似しているとした上で、さらに全体としてみて創作的な表現部分において同一性を有するとして著作権侵害を認めました。
一致又は類似する部分が、創作性を有する部分でなければ著作権侵害になりません。
プログラムは、ある程度、汎用性のあるものであり、自然と類似してしまうのは、仕方ない部分もあります。
また、プログラム言語によっては、使用できる命令・表現は限定されているため、類似する表現があるとしても、これらの制約によって選択の余地がない表現であることも珍しくありません。
さらに、プログラムの中には、汎用性の高いプログラムを再利用可能な形でひとまとまりにしたライブラリや関数を呼び出すという処理が行われることが多く、これらの呼び出し記述の部分が一致したとしても、特定のライブラリや関数を選択したというアイデアが共通するにすぎなかったり、ありふれた表現の一致にとどまるとされてます。
それでは、実際の他社のソフトウェアが、自社の著作物をパクっているとして、著作権侵害で損害賠償等を請求したい、訴えたいという場合に、どのような手続きをすればよいのでしょうか?
上記のように、著作権侵害といえるためには、両者の著作物を並べて対比し、そこに共通している要素を取り出し、そこが創作的な表現であることかどうかを見ることが必要になります。
そうなると、相手方のソフトウェアのプログラムの詳細を事前に知っておく必要があります。しかし、他社のソースコードを入手するのは、簡単ではありません。
ソースコードの入手方法として考えられる訴訟法上の手続として、証拠保全という方法があります。
これは、本来の証拠調べを待っていたのでは取調べが不能又は困難となる事情がある場合において、事前に証拠を押さえてしまうという手続きです。
医療訴訟などではよく行われる手続きです。また訴訟提起後には、相手方に対して、裁判所を通じて、証拠を提出するように要求する手続きもあります。
このような手続きを使って、相手方のプログラムを入手する必要があるのです。