この記事の目次
仮想通貨ウォレットとは、仮想通貨の管理(保管および送受信)を行うための仕組みをいいます。「仮想通貨のお財布」というイメージです。
仮想通貨ウォレットの種類としては、以下のような種類があります。
仮想通貨の取引所などが管理しているウォレットです。bitFlyerなどでアカウントを作成すると、取引用のウォレットが作成されます。
これは、秘密鍵などの情報、事業者が管理し、ユーザーは、ID・パスワードなどの情報を入れ、ログインすれば、ウォレットを利用できることになります。
このウォレットのメリットは、ユーザーは、ID・パスワードなどの情報を入れれば、ウォレットを利用できる、秘密鍵の管理は、取引所がしてくれているので、ユーザーは手間がかからないということがあります。
反対にデメリットとしては、管理を取引所に委ねているので、取引所の都合で、ウォレットが使えなくなる可能性があります。
今年1月のコインチェック事件では、コインチェックのユーザーのウォレット機能が使えなくなるという事態が起きました。また、取引所のハッキングリスクも考えられます。
また、万が一、取引所が倒産してしまった場合には、取引所のウォレットにあるユーザーの仮想通貨は、戻ってこない可能性もあります。
事業者が提供するウォレットアプリを利用者の端末にダウンロードし、端末上で仮想通貨の管理を行うことのできるサービスです。秘密鍵などの情報は、ウォレットアプリをダウンロードしたユーザが管理することになります。
これは、自分のウォレットを管理することになるため、取引所型のリスクはありませんが、秘密鍵などの情報をなくしてしまうと、一切復元ができないというデメリットがあります。
秘密鍵を保管し、仮想通貨の管理を行うことのできるデバイス(ハードウェア)です。利用者が仮想通貨の送受信を行う際は、ハードウェアウォレットをパソコン等の通信端末に接続して行います。
こちらは、ハードウェアで保管するため、ハッキングリスクなどが少なく、セキュリティ上安全性が高いことが挙げられます。
では、仮想通貨ウォレット事業については、どのような法律が関係するのでしょうか?
仮想通貨ウォレット事業を行う事業者においては、以下の点に該当しているかが問題となります。
仮想通貨ウォレットサービスの提供は、仮想通貨交換業に該当するのでしょうか。
仮想通貨交換業に該当すると、仮想通貨交換業の登録が必要になります。仮想通貨交換業の定義は、以下の通りです。
仮想通貨ウォレットについては「利用者の金銭又は仮想通貨の管理をする」ことにあたり、仮想通貨交換業登録が必要とも思えます。
しかし、条文をみると、「上記(1)(2)に関して、利用者の金銭又は仮想通貨の管理をすること」とされています。
つまり、仮想通貨のウォレット機能+仮想通貨の売買・交換機能や取引所と連動している機能などがある場合に、初めて、交換業が必要となっているのです。
仮想通貨ウォレット事業は、上記の通り、仮想通貨交換業登録は必要ありません。しかし、今後の法律的規制は、不透明な部分があります。
「仮想通貨交換業等に関する研究会」(第9回)が開催されました。
この中では、仮想通貨ウォレット事業については、仮想通貨の流出リスクやマネロンリスクがあることがことから、法律的な規制を検討する必要があるとされました。
規制が検討されている内容としては、仮想通貨交換業の登録制が検討されています。
仮想通貨ウォレット事業の今後の法律的規制には注意が必要です。
仮想通貨ウォレットサービスの機能の1つとして仮想通貨の送受信機能がありますが、当該仮想通貨の送受信が、「為替取引」に該当すると、仮想通貨ウォレットサービス事業者において資金移動業者の登録または銀行業の免許が必要となります。
判例上、「『為替取引を行うこと』とは、顧客から、隔地者間で直接現金を輸送せずに資金を移動する仕組みを利用して資金を移動することを内容とする依頼を受けて、これを引き受けること、またはこれを引き受けて遂行すること」をいうとされています。
「為替取引」の対象となる「資金」については、金銭および金銭に容易に変わるものを指すが、価値が変動するものや、換金が容易ではないものは「資金」に該当しないとされています。
仮想通貨は、金銭との交換が事実上可能であるが、価値が変動するものであり、そのため一定の金銭に換金されるものとはいえません。また、法令上も、仮想通貨は「支払手段」には、明示的には含まれていません。
そのため、仮想通貨は「資金」には該当しないものと考えれられます。
したがって、仮想通貨ウォレットサービス間での仮想通貨の送受信は「資金」の移動に関する取引ではないため、「為替取引」に該当せず、資金移動業の登録および銀行業の免許は不要と考えられます。
ただし、仮想通貨の交換等を行う事業者が、利用者から金銭の移動を行うことを内容とする依頼を受けて、当該金銭を預かり、仮想通貨に交換した上で自社ウォレットや他社の仮想通貨ウォレットに送信し、受信者が当該仮想通貨を換金できる仕組みとなっているような場合は、仮想通貨を用いているものの、送金手段としての「資金」の移動があるものとして「為替取引」に該当し、資金移動業者の登録または銀行業の免許が必要となり得ることに注意が必要です。
海外においては、仮想通貨ウォレットサービスについて規制方向にあるものといえます。
EUの欧州議会は、2018年4月19日、仮想通貨ウォレットを提供する事業者に対し、銀行と同様の顧客確認義務が求めるといった、マネーローンダリング・テロ資金供与の防止を目的とする規制に関する政治的合意を行いました。
また、ドイツ、フランス、イタリアにおいても上記に準じた規制を導入する方向とのことです。
中国においては規制が厳しく、政府が仮想通貨関連ビジネスの禁止を掲げる方針であるとのことであるため、仮想通貨ウォレットについても禁止方向にあります。
上記のように、現状、仮想通貨ウォレット事業については、直ちに仮想通貨交換業等には該当しません。
ただし「仮想通貨交換業等に関する研究会」にもある通り、仮想通貨取引所の規制に近い業規制を求められる可能性があります。また、ウォレット開設時に本人確認義務を求めるといった規制が考えられます。
仮想通貨ウォレット事業者においては、今後の規制の可能性を見据えて、犯収法上の本人確認を参考に当初から本人確認フローを整備する等、対応を求められた際に迅速に対応できるスキーム構築を意識することが必要です。