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一般健康診断(定期健康診断)において会社がとるべき対応とは!?【2022年3月加筆】

労働の法律

従業員の健康について、会社はどのように考えていますか?

従業員数が少ない企業ほど、自分の健康は自分で管理するものと考えてはないでしょうか?

会社には、従業員の健康を管理する義務があります。

その一つが、一般健康診断(定期健康診断)です。健康診断は、従業員の健康管理の基本です。

労働問題で揺れる昨今、その重要性は、より一層増しているものと言えます。では、この一般健康診断、会社として実施していますでしょうか?

会社で一般健康診断を実施する際の基本的なポイントについて見ていきましょう。

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一般健康診断はどのように実施すればよいのか?

会社の一般健康診断(以下「健診」)の実施方法としては、主に次のようなものがあります。

①集団健診

数百人規模の会社が、医師や検診車などを呼んで、部署ごとなどで一斉に行うような健診です。

大企業や工場、学校や役所などが実施することが多い健診方法で、ある程度の従業員数がいなければ、通常行わないような大規模なものとなります。

②会社指定の病院での健診

会社が健診先の病院をあらかじめ指定し、一定期間内において、各自受診するといった健診方法です。一番オーソドックスな方法ではないでしょうか。

病院を指定している分、管理が楽になるというメリットがあります。

③従業員が各自で健康診断を受診し、その結果を提出させる

受診先の病院に関しても、各従業員に任せるといったものになります。従業員数が多くない会社では、よく行われている方法です。

病院の指定などの手間は省けますが、病院ごとに検査項目や結果のフォーマットが違ったりと、会社としての管理がしにくいなどのデメリットがあります。

会社の規模や管理体制によって、適切な手段をあらかじめ決めておくようにしましょう。

費用は誰が負担するのか?

一般健康診断に要する費用については、会社側が全額負担する必要があります。

ただし、上記③の従業員自身が決めた健診の際で、人間ドックなどの高額な健診を受診した場合には、一般の健診費用に相当する部分のみを会社が負担し、差額を自己負担とすることができます。

ただ、後から揉めないためにも、あらかじめ会社負担の上限額を決めておき、従業員に通知しておくことが望ましいです。

いつ実施すればいいのか?

1年以内ごとに1回行う必要がありますが、実施時期に決まりはなく、従業員ごとに実施時期が異なっていても問題はありません。

ただ、会社側の管理の問題を考えた際、ある程度固定の時期にしておくのが望ましいのではないでしょうか。

受診内容は決まっているのか?

省略できるものもありますが、最低限検査しなければならない項目は決まっています。そのため、上記③の従業員自身が健診を決める際は、不足が出ないよう注意が必要です。

また、健診にも様々な種類があり、中には一般の健診として必要な検査項目が不足しているものもあります。

企業向けの一般健診プランがあるような病院も多くありますが、心配な場合は、法定の要件を満たしているのか病院に確認するのが良いでしょう。

労働時間中の受診、労働時間外の受診における給与は?

労働時間中に受診する場合、会社側は受診時間中の賃金を支払わなければならないのでしょうか?

結論から言うと、一般健康診断については、法律上、賃金支払いの義務はありません。(※一般以外は支払う必要がある場合もあります。)

支払うかどうかは、あくまでも、労使間の取り決めによるものとなります。

ただ、法律上義務はないとしている一方、厚生労働省は受診に要した時間の賃金については、支払うのが望ましいとしています。

もちろん、これはただの見解であり、何ら強制力のあるものではありませんが、こと賃金に関する部分については、不満を感じやすいところでもあることから、特段の理由がない限りは、労働時間として取り扱ったほうがよいのではないでしょうか。

労働者側の義務

会社は、従業員に対し一般健康診断を受けさせる義務がありますが、従業員にも、一般健康診断を受ける義務があります。

もし会社の指定病院での受診を拒否する場合、上記③の従業員自身が病院・健診を決める方法で受診する必要がありますが、従業員はその受診結果を会社に提出できなければなりません。

会社指定病院での受診を拒否する従業員には、結果の提出について必ず指示する必要があることに注意しましょう。

健康診断でトラブルにならないためには

たかが健康診断で、と思うかもしれませんが、健康診断でも起きうる問題は少なからずあります。

たかが健康診断かもしれませんが、会社として基本的な部分はしっかりと押さえておき、早いうちにルールを明確化しておくことが、トラブル防止の上で重要となってくるのです。