この記事の目次
パソコン、タブレット、携帯、書籍、鍵、制服
会社が社員に貸与している備品は数多くありますが、今まで退職した社員は全ての備品を返却していますでしょうか?
正式な手続きに則って退職した社員ならば、退職前に返却を促せますが、突然来なくなってしまった場合には、その猶予もありません。
パソコンや携帯電話ならば被害額は大きいですし、鍵や制服などは防犯や犯罪行為などにも関わる可能性があるものであり、どれも必ず回収したいものです。
備品の回収について、会社はどう対応するべきなのでしょうか?
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基本的には可能です。ただし「制服を返却しなかった場合は、●万円」といった内容の請求はできません。
これは、賠償をあらかじめ約束させる「賠償予定」となり、労働基準法で禁止されています。予定をしてはいけないだけなので、会社が実際に被った損害を賠償させることはOKです。
罰金や損害賠償の徴収は、給与から控除することはできません。給与とは別に、請求を行う必要があります。
また、あらかじめ就業規則に懲戒処分について規定されていれば、労基法の制裁制限の範囲を超えない場合は、減給制裁として罰することも可能です。
例えば、2万円の社用携帯を支給し、返却しない又は破損したなどで損害を賠償させる場合、全額は難しく、一部負担が一般的となります。
もし、何事もなく返却すれば社内で使い回すものを、1人に新品の価格を丸々請求するのは、過剰請求となってしまうからです。
また、減給制裁の場合は、負担額に加えて、労基法上の制裁規定の上限も遵守する必要があります。それが次の二つになります。
これらを超えてはいけません。
会社側としては「返却しなければ、給与は払わない!」とするのが、一番手っ取り早く、確実で、取りっぱぐれない方法であり、多くの方が真っ先に思いつく方法の一つでしょう。
しかし、残念ながら給与の差し止めはできません。労働基準法違反となり、違法行為となります。
労働基準法では、賃金は、その全額を決められた期日に支払わなければならないとしており、違反した場合には30万円以下の罰則もあります。
では、会社としてどう対応するべきなのでしょうか?この様な場合には、給与を現金払いにすることが効果的です。
多くの会社は、銀行振込により給与を支払っています。しかし、振込の場合で上記の通り給与の差し止めができないとなると、一度給与を支払ってから罰金や損害賠償をしてもらうこととなります。
退職をする社員が、わざわざこの約束を守るとは思えませんね。そのため、最終給与を現金で直接支払うことにより、その場で同時に損害賠償や罰金を支払わせる機会を作れるのです。
労働基準法では、賃金は直接現金で支払えばよいとしており、現金で渡すことは何ら法律違反にはなりません。
現金支払いで対応するために、まずは「会社備品の返却の督促&備品紛失のための罰金額の連絡及び罰金支払いの督促」をします。
これで返却・支払いがされれば一番良いのですが、もし、返却・支払いがされなければ「最終給与を現金支給に変更する通知を送る」といった流れが良いでしょう。
これらを行う際は、必ず経緯や通知書などを書面で残すようにしましょう。もし、揉めた際の証拠となります。
これでも反応がない場合は、身元引受人へ上記の連絡し、それでも反応がなければ返還請求の訴訟を提起するほかないでしょう。
当たり前ですが、会社側からしたら備品だってタダじゃありません。物代だけではなく、そのための人件費やその他諸々費用が掛かっています。
しょうがないと諦めるのではなく、こうならない為に、就業規則を整えたり、備品の返却について周知を行うなど、前もった準備が必要です。
もう辞めるからと言って、いい加減な態度をとっている者に対しては、毅然とした態度をもって対応することが、重要なのです。
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