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フリーランスが独占禁止法で保護される方向へ。IT企業が対応すべきポイントとは

IT企業のための法律

フリーランスの立場が保護される方向へ

公正取引委員会が、有識者検討会の報告書を公表しました。

「人材と競争政策に関する検討会」報告書

この報告書は、フリーランスとしては働く人と企業との間の契約関係について、独占禁止法の対象となることを明確にし、企業側として、内容によっては、独占禁止法違反になることを明示したものです。

これは、公正取引委員会が、フリーランスの「働き方」ついて、独占禁止法が適用されると判断したことになります。

IT企業としては、フリーランスの人を活用することが多くあると思います。そこで、今回は、上記報告書の中で、IT企業がフリーランスと契約する際に、気を付けるべきポイントを解説していきます。

フリーランスに対して、不十分な条件の説明や実際とは異なる条件の説明

IT企業として、フリーランスと契約をする際に、実際とは異なる条件を提示をする、または十分明らかにしないで、契約をすることは、独占禁止法に違反する可能性があります。

これは、フリーランスは契約をする際に、企業からの説明を信じるしかなく、実際の契約内容とは異なる説明をし、契約させるといった騙し討ちは、フリーランスにとって、非常に不利益です。

よって、このような行為は独占禁止法上、違法となる可能性があるとされました。

不当な秘密保持義務及び競業避止義務

IT企業が、フリーランスに対して、秘密保持義務や競業避止義務を課す場合があります。上記報告書では、このような義務を課すこと自体は、直ちに独禁法違反にならないとしています。

企業として、情報漏えいを防ぐという意味で、上記義務を課すことには合理的な理由があるからです。しかし、以下の場合には、独占禁止法に違反する可能性があります。

  • IT企業が、十分な説明をしない、又は実際の契約内容とは異なる説明をして、秘密保持義務や競業避止義務を課していた場合
  • 秘密保持義務や競業避止義務の条項が抽象的であるため、企業側が都合のよいように解釈できる場合

なお、競業避止の具体的な条項については、以下を参考にしてください。

従業員(業務委託先)が契約後に競業他社へ転職することをIT企業は防ぐことができるのか

不当な専属義務

IT企業が、自らとのみ契約をし、他社との契約を禁止する「専属義務」についても、直ちに独占禁止法に違反はしないとされました。

ただし、業務も終わった後も、契約を継続させ、専属義務を課すなど、不当に専属義務を課した場合には、独占禁止法上、問題となるとしました。

また、不当な専属義務に当たるかは、以下などの要素を考慮し、判断するとしました。

  • 義務の内容や期間が目的に照らして過大であるか
  • フリーランスに与える不利益の程度
  • 代償措置の有無及びその水準
  • これら義務を課すに際してあらかじめ取引の相手方と十分な協議が行われたか等の決定方法
  • 他の取引の相手方の条件と比べて差別的

成果物の利用制限

フリーランスが作成した成果物について、IT企業としては、合理的な理由なく、以下のような行為をすると、独占禁止法上、違法となる可能性があるとされました。

  • 成果物について自らが作成した者であることを明らかにしないよう義務付けること
  • 成果物を転用して他社に提供することを禁止すること
  • 著作権の帰属について何ら事前に取り決めていないにもかかわらず,納品後や納品直前になって著作権を無償又は著しく低い対価で譲渡するよう求めること

IT企業としては、事前にフリーランスが作成した成果物の権利を譲渡してもらいたいのであれば、契約書等で、明記しておく必要があります。

また、ここでも、IT企業は、フリーランスに対して、義務の内容について、十分に説明することが求められています。

代金の支払遅延、不当な値引きなど

また、IT企業が、フリーランスに対して、以下の行為を行っている場合にも、独占禁止法上、問題になるとされています。

  • 代金の支払遅延,代金の減額要請及び成果物の受領拒否
  • 著しく低い対価での取引要請
  • 成果物に係る権利等の一方的取扱い
  • IT企業との取引とは別の取引によりフリーランスが得ている収益の譲渡の義務付け

これらは、従来から下請法でも問題になっていました。

IT企業が業務委託契約(外注)をするときは下請法に気を付けよう!

しかし、下請法は、適用される取引・企業規模が決まっており、それ以外は対象外でした。今回は、下請法に該当しない場合でも、独占禁止法上、違法になる可能性を示したものです。

IT企業としては、以下のような、下請法の禁止事項に当たる行為については、止めましょう。

禁止事項 概要
受領拒否(第1項第1号) 注文した物品等の受領を拒むこと。
下請代金の支払遅延(第1項第2号) 下請代金を受領後60日以内に定められた支払期日までに支払わないこと。
下請代金の減額(第1項第3号) あらかじめ定めた下請代金を減額すること。
返品(第1項第4号) 受け取った物を返品すること。
買いたたき(第1項第5号) 類似品等の価格又は市価に比べて著しく低い下請代金を不当に定めること。
購入・利用強制(第1項第6号) 親事業者が指定する物・役務を強制的に購入・利用させること。
報復措置(第1項第7号) 下請事業者が親事業者の不公正な行為を公正取引委員会又は中小企業庁に知らせたことを理由としてその下請事業者に対して,取引数量の削減・取引停止等の不利益な取扱いをすること。
有償支給原材料等の対価の早期決済(第2項第1号) 有償で支給した原材料等の対価を,当該原材料等を用いた給付に係る下請代金の支払期日より早い時期に相殺したり支払わせたりすること。
割引困難な手形の交付(第2項第2号) 一般の金融機関で割引を受けることが困難であると認められる手形を交付すること。
不当な経済上の利益の提供要請(第2項第3号) 下請事業者から金銭,労務の提供等をさせること。
不当な給付内容の変更及び不当なやり直し(第2項第4号) 費用を負担せずに注文内容を変更し,又は受領後にやり直しをさせること。

IT企業は、フリーランスとの契約には、十分な説明と注意を

以上のように、今回の報告書では、IT企業とフリーランスとの関係に、独占禁止法の適用があることが明記されました。

この報告書の中では、IT企業が、フリーランスに対して、「十分な説明なく、契約を締結した場合」に、独占禁止法違反になる可能性が、何度も示唆されています。

IT企業は、契約内容もさることながら、フリーランスに対して、その内容について、十分な説明をするようにしましょう。


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