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IT企業が業務委託契約(外注)をするときは下請法に気を付けよう!【2022年12月加筆】

IT企業のための法律

業務委託(外注)をするときは下請法に気を付ける

IT企業では、システム開発の一部を外部に委託したり、企業が個人事業主などのクリエイターにコンテンツ制作を外注するすることが、多く行われています。

契約内容について、気を付けることは当然ですが、契約当事者は、下請法(下請代金支払遅延等防止法)に気を付ける必要があります。

この法律は、企業規模の大きいところが、企業規模の小さいところ(個人事業主)と契約するときに、規模の小さい企業(個人)を守るためにある法律です。

よって、委託する側、受注する側、双方が気を付ける必要があるのです。

下請法が適用される契約(取引)とは

下請法は、全ての契約に適用されるわけではありません。以下の取引に限定して、適用されるとされています。

下請法の適用対象となる取引

  1. 物品の製造委託
  2. 修理委託
  3. 情報成果物作成委託
  4. 役務提供委託

参考記事:下請法の適用範囲について
システム開発やウェブデザインを外注する場合は、(3) 情報成果物作成委託当たります。

また、上記の取引に当たった上で、契約当事者の資本金によって、適用されるかが決まります。

情報成果物作成委託・役務提供委託について

プログラム作成、運送、物品の倉庫における保管及び情報処理に係るもの

親事業者 下請事業者
資本金3億円超の法人事業者 個人事業者又は資本金3億円以下の法人
資本金1000万円超3億円以下の法人事業者 個人事業者又は資本金1000万円以下の法人

プログラム作成、運送、物品の倉庫における保管及び情報処理に係るものを除く

親事業者 下請事業者
資本金5000万円超の法人事業者 個人事業者又は資本金5000万円以下の法人
資本金1000万円超5000万円以下の法人事業者 個人事業者又は資本金1000万円以下の法人

まずは、委託する側、される側とも、下請法の適用があるのか、意識するようにしましょう。

下請法が適用された場合の義務

下請法が適用された場合には、委託する側には、以下のような義務が課されます。

①発注書面の交付義務

下請法では、親事業者に対し、発注段階で書面に取引条件等を明記しておく義務を定めています。

具体的には、当事者の名称、委託した日、給付の内容、給付の受領日などを、発注書面に記載する必要があります。

②支払期日を定める義務

親事業者は、下請代金の支払期日を、下請事業者から成果物を受領後60日以内に設定しなければなりません。

支払期日を、不当に先延ばしにするということはできなくなるのです!

③遅延利息の支払義務

親事業者が、下請業者に対して、下請代金の支払遅延があった場合には、年利14. 6%の遅延利息を支払わなければならないと定められています。

委託する側の禁止行為とは?

下請法は、親事業者が下請事業者に対して禁止している行為として11の行為類型を定めています。

基本的には、親事業者から理不尽な要求はしてはいけないという内容になっています。

禁止事項 概要
受領拒否(第1項第1号) 注文した物品等の受領を拒むこと。
下請代金の支払遅延(第1項第2号) 下請代金を受領後60日以内に定められた支払期日までに支払わないこと。
下請代金の減額(第1項第3号) あらかじめ定めた下請代金を減額すること。
返品(第1項第4号) 受け取った物を返品すること。
買いたたき(第1項第5号) 類似品等の価格又は市価に比べて著しく低い下請代金を不当に定めること。
購入・利用強制(第1項第6号) 親事業者が指定する物・役務を強制的に購入・利用させること。
報復措置(第1項第7号) 下請事業者が親事業者の不公正な行為を公正取引委員会又は中小企業庁に知らせたことを理由としてその下請事業者に対して,取引数量の削減・取引停止等の不利益な取扱いをすること。
有償支給原材料等の対価の早期決済(第2項第1号) 有償で支給した原材料等の対価を,当該原材料等を用いた給付に係る下請代金の支払期日より早い時期に相殺したり支払わせたりすること。
割引困難な手形の交付(第2項第2号) 一般の金融機関で割引を受けることが困難であると認められる手形を交付すること。
不当な経済上の利益の提供要請(第2項第3号) 下請事業者から金銭,労務の提供等をさせること。
不当な給付内容の変更及び不当なやり直し(第2項第4号) 費用を負担せずに注文内容を変更し,又は受領後にやり直しをさせること。

(公正取引委員会HPより、抜粋)

下請法違反の罰則とは

下請法違反は、下請事業者からの申立てや公正取引委員会が行う調査により、発覚します。

これにより下請法違反の疑いがある場合、公正取引委員会は、委託する側に対する個別の調査及び検査を実施することになります。

その結果、公正取引員会が親事業者の違反を認めた場合には、委託する側に対し、以下の措置が取られます。

  1. 改善を求める勧告を行った上、公表する措置
  2. 違反行為の概要等を記載した書面を交付し、指導を行う措置を行う他
  3. 最高50万円の罰金

公正取引委員会によれば、昨年の指導件数の指導件数は過去最多の6,302件(前年度:5980件)となっており、監督官庁の締め付けが厳しくなっています。(平成28年度における下請法の運用状況及び企業間取引の公正化への取組

また、下請事業者が被った不利益について,親事業者302名から,下請事業者6,514名に対し,下請代金の減額分の返還等,総額23億9931万円相当の原状回復が行われています。

仕事を発注する側、受注する側、双方とも気を付けるべき下請法…是非、違反行為がないようにしてください!!