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話題の「退職代行業者」への企業としての対応方法【解説】

労働の法律

注目を集める退職代行業者への対応とは

昨今、退職代行業者なる事業が注目を集めているようです。まだまだ聞きなれない事業ですが、会社にとってどういった影響があるのでしょうか?
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退職代行業者とは

退職代行業者とは、会社を辞めたいけど「上司に言いづらい」「申し訳なく感じる」「辞めさせてくれない」などといった理由で辞められない従業員の代わりに、退職の申出や退職手続きの補助(主に本人への伝達等)を行ってくれるサービスのようです。

退職代行業者が、できること、できないこと

退職代行業者は、あくまで退職の意思表示退職に関する手続きの補助(主に本人への伝達等)のみを行う事業者であり、未払い残業代の請求や有給休暇の買取請求などの「交渉」は原則できません。

未払い残業代の請求や有給休暇の買取請求などの「交渉」は、原則として弁護士(140万円以下の交渉等の場合は認定司法書士も可)しかできないこととなっています。

弁護士などでないにもかかわらず、これらの交渉や訴訟の代理をした場合、いわゆる非弁行為となり、弁護士法違反となります。

違法な業者ではないのか

上記の通り、未払い残業代などの交渉は弁護士等でない限りできません。

そのため、ネット検索でヒットする大半の事業者は、あくまで退職の申出などを本人代わって行う「使者」であるという立場をとっているようです。

「交渉」などはせず、単に退職の意思等を本人に代わって「伝達」するだけであれば、退職代行業者でも可能です。そのため、一概に違法な業者とも言えないのです。

退職代行業者から連絡が来た場合

退職代行業者は、「本人からの要望」として伝えてきます。

「○日から有給消化としたい」「退職届や入館証は郵送する」「連絡、書面は業者を通じてほしい」等々・・・

では、実際に退職代行業者を名乗る会社から、自社社員の退職について連絡があった場合、会社はどう対応すればいいのでしょうか?

①契約関係があるかの確認

自社社員と退職代行業者の間に、本当に契約関係があるのかを確認するため、委任状や契約書などを確認する必要があるでしょう。

確認をせず、退職の処理をしてしまった後で、「依頼まではしたつもりはなかった」「辞めたくはなかった」などと言われた場合、会社側に落ち度があると判断される可能性があります。

こういった業者を利用する状態なので、本人には連絡がつかないことが多いと思います。そのため、事業者側に必要な証拠の提出を求めるのがよいでしょう。

②契約関係があった場合

契約関係があった場合には、実際に退職代行業者を窓口として退職処理を進めるのかどうかを検討することになります。

必ずしも退職代行業者を窓口として退職手続きを行わなければならないという決まりはありませんので、退職代行業者を通じず、引き続き本人に連絡を取ることにより手続きを進めることも可能です。

③契約関係が確認できない場合

契約関係が確認できない場合、退職代行業者を窓口として退職を進めることには注意が必要です。

この業者を窓口にしていいのかを、(本人へ直接)または(退職代行業者を通じて本人から直接)会社へ連絡するなどの防衛策をとる必要があるでしょう。

弁護士が行う退職代行も

多くの退職代行業者は、顧問弁護士を付け、交渉の必要がある場合には、その顧問弁護士が対応するといった形態をとっていますが、なかには、弁護士自身が退職代行を行っている場合もあります。この場合には、もちろん交渉などもセットでできます。

対応しないという選択もできますが、その場合、訴訟などの法的手続きをされる可能性も出てきますので注意が必要です。

まとめ

「業者を使って退職など、無責任だ!」と思う気持ちもあるかもしれません。会社としてしかるべき教育や待遇をしてきたのであれば尚更です。

ただ、①でも述べたように、本人としてもこのような業者を利用するような精神状態です。こういった場合には、本人には連絡がつかないことが多いでしょう。

連絡が取れないことにより、貸与物の返還などができなければ、セキュリティー面で大きな問題となる可能性もあります。

そのため、考えようによっては、退職代行業者を窓口に退職を進めることも、スムーズに手続きを進めるためには、決して悪い話とも言えないのかもしれません。