システム開発で、開発段階において、納期遅延や仕様書の機能に満たなかったとして、ユーザー側から契約自体が解除されることがあります。
この場合、ユーザー側は、どの範囲まで損害賠償を請求できるのでしょうか?ベンダ側として、どの範囲まで、損害を賠償しなければならないのでしょうか?
システム開発においては、各段階(要件定義、基本設計、開発など)で個別契約し、各段階の作業が終了したときに、精算をするやり方が一般的です。
そうすると、ユーザーとしては、システムが完成しないのであれば,上流フェーズで支払った代金については,全部返還してもらいたいところでしょう。
この点、スルガ銀行vsIBM事件の一審判決(東京地裁平成24年3月29日判決)では,上流フェースも含めた、ほぼすべての支払済み代金の返還を命じました。
しかし、スルガ銀行vsIBM事件の控訴審判決では、ベンダ側の義務違反が生じた段階を、詳細に認定し、それ以後の代金の返還を認める判決を下し、第一審に比べ、IBMの賠償金額を大幅に減額しました。
ベンダ側としては、上流フェーズの成果物は残っているので、代金を返還するのはおかしいという主張もあるかもしれませんが、上流フェーズの成果物を他のベンダに引き継ぐことは困難ということを考えれば、代金相当額の成果物があるという主張は難しいのが現状です。
ユーザー側としては、システム開発トラブルが生じ、自社の従業員が対応を迫られることになったため、人件費相当額の賠償を求めた場合、認められるのでしょうか?
ユーザー企業の従業員の給与は、システム開発が生じなくても発生するものです。よって、人件費相当額を賠償請求する場合には、ベンダの債務不履行のせいで、通常より余計に人件費が発生したことを証明する必要がありますが、実際上、これは困難です。
東京地裁平成16年12月22日判決でも、
社内人件費は,雇用している限り必然的に支出すべき経費であり,これらの社員が他の業務に従事することにより具体的に利益が得られた等の特段の事情がない限り損害とは認められない
とされています。
このように、システム開発訴訟は、損害額がいくらになるのかについても争いが生じます。
一度、この賠償は、法律上認められるのかについて、専門家に依頼するようにしましょう!