不正取得した仮想通貨「ビットコイン」をマネーロンダリング(資金洗浄)する目的で、換金して他人の口座に送金したとして、警視庁サイバー犯罪対策課は、組織犯罪処罰法違反(犯罪収益隠匿)容疑で、男2人を検察庁に送検しました。
ビットコインを資金洗浄 容疑で2人追送検 警視庁、初の立件
この事件のポイントは、どこにあるのでしょうか?
本件については、他人のクレジットカードで、ビットコインを購入し、海外の取引所を経由し、最終的に現金化したという事案です。
「マネー」ロンダリングというからには、ビットコインは、そもそも「マネー」。つまり通貨なのかという疑問が生じます。
現状、まだ仮想通貨法が施行されていないので、ビットコインなどの仮想通貨の位置づけは、特に法律上規定されていません。2014年6月の自民党IT戦略特命委員会では、仮想通貨は、通貨でも物でもない「価値記録」としています。
また、昨年5月に成立した、仮想通貨法(施行日未定)については、「仮想通貨」を、不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる財産的価値と定義しています。
金融庁のガイドラインにみる仮想通貨の範囲・仮想通貨交換業者の該当性のポイント
仮想通貨法が成立したときに、マスコミなどが、法律が仮想通貨を「通貨、貨幣」と認定したという報道がありましたが、法律上は「通貨・貨幣」と認定しているわけではありません。
ただ、昨年、財務省と金融庁はビットコインなどの仮想通貨を買うときにかかる消費税を、2017年春をメドになくす調整に入りました。
ビットコインなどの仮想通貨を財務省・金融庁は消費税非課税で調整へ
通常、消費税は、モノ(商品)にはかかりますが、通貨の売買にはかかりません。そこで、国としても、仮想通貨を「通貨」と同じような機能を持ったものという認識であることは間違いありません。
さて、今回の事件ですが、今回立件されたのは、組織犯罪処罰法違反(犯罪収益隠匿)容疑です。これは、「犯罪収益」の取得若しくは処分につき事実を仮装し、又は犯罪収益等を隠匿した者に課せられるものです。
ここにいう「犯罪収益」とは、財産上の不正な利益を得る目的で犯した罪の犯罪行為(詐欺など)により生じ、若しくは当該犯罪行為により得た財産を言います。
この法律では、犯罪によって得たものが「通貨」でなくてもよく「財産」とあるので「何かしらの財産的価値があればよい」のです。
よって、今回は他人名義のカードで、ビットコインを買う行為については、詐欺行為であり、これにより、海外取引所などを使うことにより、その事実を仮装、隠匿したので、組織犯罪処罰法違反(犯罪収益隠匿)容疑で立件されたのです。
昨年成立した仮想通貨法の目的に一つに、マネーロンダリング規制があります。
今後、仮想通貨交換業を営む場合には、事業者として、マネロン対策をすることが義務付けられています。
【仮想通貨法・内閣府令ガイドライン】仮想通貨事業者が行うべきマネロン対策で取引時の本人確認の方法とは
ビットコインを使ったマネーロンダリングには、当局の厳しい規制がしかれることになりそうです。