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2017年5月26日、民法の改正案が国会で成立しました。
参考記事:改正民法が成立 契約ルール、120年ぶり抜本見直し
な、なんと、民法制定以来、120年ぶりの改正。明治時代に作られた法律がやっと改正されたのも、驚きですが、改正項目も200項目に及ぶ大改正です。
今回、改正されたのは、民法の債権法という分野。債権法とは、人々の「お金」にまつわる法律を規定するもので、まさに我々の生活や企業活動にも、密着している分野です。
では、この改正によってIT企業にとっては、どのような影響があるのかをみていきましょう。
※民法改正に伴う契約書のひな形を無料でダウンロートできるようにしましたので、ご参照ください。
ウェブサービスで一般的な利用規約ですが、今までは法律上の規定はなく、判例や行政からのガイドラインなどで、何となく運用されている状況でした。
しかし、今回の法改正で、利用規約や約款についてのルールが明確に規定されました。
改正民法では、「定型約款」という項目を設けて、以下のように定義しました。
①ある特定の者が、不特定多数のものを相手にする取引であって、
②その内容の全部又は一部が画一的であることが、双方にとって合理的なもの(定型取引)
③定型取引において、契約の内容とすることを目的として一方当事者により準備された条項の総体
この「定型約款」に当たるものといえば、具体的には、以下のようなものです。
利用規約や約款などは、お互いが話し合いによって作成されるものではなく、事業者が一方的に用意するものです。
これまでは、利用規約も、契約書の代わりになると言われ、裁判所の判例でも認められてきましたが、明確な法律はありませんでした。
そこで、利用規約などの「定型約款」が、どういった場合に、契約内容となるのかについて、新たなルールが設けられました。具体的には、以下の①または②のいずれかを満たすような場合です。
①定型約款を契約の内容をとする旨の合意がなされた場合
②定型約款を準備したものが、あらかじめその定型約款を契約の内容とする旨を相手方に表示した場合
そうすると、ウェブサービスの利用規約について、契約書と同じ効力を持たせるためには、利用規約の中に、「利用規約に同意した場合には、双方の契約内容となります」という文言を入れておくことが必要になっていくのです。
従来の民法では、利用規約や約款についての規定がなかったので、利用規約の内容について、どこまで、事業者側に有利にしてよいのかが不明確でした。
そこで、改正法では、次のように規定されました。
相手方の権利を制限し、または義務を加重する条項であって…相手方の利益を一方的に害すると認められる条項については、合意しなかったものとみなす
そして、「相手方の利益を一方的に害すると認められる条項」とは、以下のような場合を指します。
「利用規約」や「約款」などは、事業側が一方的に内容を決められますが、上記のような内容が入っていると、無効になってしまう可能性があるので、注意が必要です。
ウェブサービスを運営していると、サービスの内容が変わります。そのときに利用規約の変更をしたいと考えるかもしれません。
もっとも、利用規約というのは、契約書と同じ効力があります。通常の契約書であれば、契約書の内容を変更する場合には、契約書を巻き直おすことになります。
しかし、ウェブサービス等の利用規約の場合には、対面して変更についての同意を取るのが、現実的ではありません。
そこで、今回の民法改正では「利用規約の変更」に関する規定が設けられました。
民法改正では、利用変更したい場合には、以下の要件を満たせば、相手方の合意なく、変更することが認められるようになりました。
よって、企業としては、現在の利用規約や約款について、「変更することがある旨」の規定があるかをチェックする必要があります。
また、利用規約の内容を変更した場合には、周知の手続きを取る必要がありますので、注意が必要です。
上記の要件のうち、②「変更内容の相当性」というのがあります。
これは、利用規約を変更するにあたっては、ユーザーが予期しないような大幅な変更してしまうと、その変更が無効になってしまう可能性があるということです。
これから利用規約を作成する際、将来変更する可能性がある場合には、「当社指定の~」、または「別途記載の~」という形で、利用規約には具体的に記載しないなどの方法をとって、後から変更しやすくするといった規定の仕方をすることが、おススメです!