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警察から「捜査関係事項照会書」を受け取ったときの対処法をIT弁護士が解説【2024年6月加筆】
突然、捜査関係事項照会書が届いたら、どう対応する?
企業活動をしていると、警察から「捜査関係事項照会書」が届くことがあります。いきなり警察から書類が届くと「何か悪いことをしたのでは」「逮捕されるのでは」と心配されると思います。
まず、企業として、警察から捜査関係事項照会書が届いたら、企業としては、どのように対応すればよいのでしょうか。
当社にも、年間100件以上の相談があります。
捜査関係事項照会書とは、何?
捜査関係事項照会書とは、警察から企業に対し、犯罪捜査のため、必要な事項を収集するために、ある情報を教えてくださいというお願い書面です。
平成30年度では、1年間に約2000件、出されている書類です。
この書面が届いた会社が悪いことをしたことを示す書面ではないので、まずは慌てないようにしましょう。
また「お願い書面」ということなので、回答を強制する書面ではなく、任意の協力を求める書面になります。
よって、事業者としては、この書面に対して、どのような対応をするかを決める必要があるのです。
捜査関係事項照会書の書き方については、
捜査関係事項照会書の書き方と回答するときの注意点【解説】で解説をしています。参考にしてください。
個人情報保護法の問題は
警察からの照会事項には、顧客の氏名・住所などの個人情報を回答するように求められることがあります。
このような場合に、警察の求めに応じて、個人情報を提供してしまうのは、個人情報保護法上、大丈夫なのでしょうか?
個人情報保護法上、事業者は、個人データの第三者提供に当たっては、原則としてあらかじめ本人の同意を得ることとされていますが、法令に基づく場合など、一定の場合については例外とされています(法23条1項各号)。
捜査関係事項照会は、刑事訴訟法197条に基づく法令に基づく照会です。よって、事業者としては、個人情報保護法上、本人の同意を得ずに個人データを第三者に提供することができます。
ちなみに、弁護士会からの照会については、弁護士法第23条の2第2項の規定に基づく照会のため、この場合にも、本人の同意を得ずに個人データを第三者に提供することができると考えられます。
ユーザーからの損害賠償請求の可能性
例えば、ユーザーの個人情報を警察に開示します。そうすると、開示されたユーザーから、プライバシー権侵害の主張(損害賠償等)がなされる可能性があります。
この場合、事業者としては、警察からの要請に応じたのであるから、問題ないだろうと思うかもしれません。しかし、警察からの要請に応じたということが、プライバシー侵害の反論として機能しない可能性もあります。
警察は、事業者を守ってくれるわけではありません。そこで、事業者としては、適切な対処をする必要があるのです。
警察からの要請に応じるべき場合
例えば、ユーザーによって、明らかに刑事上の違法行為が行なわれているような場合には、事業者として警察からの照会に応じる必要があります。
例えば、以下のような場合です。
- 児童ポルノの投稿があった場合
- 覚せい剤などの違法薬物がやり取りされている場合
- ●●を破壊する、●●を殺害するといった犯罪予告
このような場には、犯罪行為であることが明らかですので、警察の照会に応じるべきでしょう。
要請に応じるか注意が必要な場合
注意が必要なのは、犯罪行為がなのか、評価が必要な場合です。
もちろん、犯罪行為かどうかは、警察・検察、最終的には、裁判所が決めるのですが、事業者としても、全く犯罪には該当しそうもないのに、何も考えずに、照会に応じるのはリスクがあります。
具体的には、著作権侵害や名誉棄損の場合には、注意が必要です。
これらも、刑事上の犯罪ですが「著作権を侵害している」「名誉を棄損をしている」というのは、評価が生じる問題なので、事業者としては、著作権侵害があるのか、名誉棄損的な表現であるのかを、ある程度判断することが必要です。
名誉棄損になるかは、人の社会的評価を低下させる表現があったかということが問題になります。しかし名誉棄損的な表現があっても、以下の様な場合には刑法上罰しないとされています。
- 公共の利害に関する事実
- その目的が専ら公益を図ることにある
- それが真実である
また、著作権侵害になるかどうかは、以下のような点を判断する必要があります。
- 類似性(似ているかどうか)
- 依拠性(元のコンテンツをもとに創作されたものか)
これらは警察から照会が来ても、そのまま応じるのではなく、自社でも権利侵害のある情報かを吟味する必要があります。
捜査関係事項照会書を受け取っても、落ち着こう
まず、大事なのは、警察からの捜査関係事項照会書を受け取っても、慌てないことです。
自社が悪いことをしたわけではないので、まずは落ち着いて、書面の中身を確認しましょう。その上で、詳細を警察に確認する、弁護士などに相談するようにしましょう。
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