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宿泊イベントで関係する「旅行業法」法律的にどこまでOKなのか弁護士が解説【2021年4月加筆】

法律時事ニュース

旅行業法に抵触!?子ども向けの夏休み国内旅行企画が中止に

各自治体が主催する、子ども向けの夏休み国内キャンプ旅行企画が、旅行業法に抵触するおそれがあるとして中止される事態になっています。

神奈川)旅行業法違反?川崎市教委がサマーキャンプ中止

上記は自治体主催の場合ですが、民間事業者が宿泊イベントなどを主催する際にも、注意しなければならないのは、「旅行業法」です。

どんなイベントであれば、旅行業法に抵触するのでしょうか。

ポイントは「報酬」と「業」

宿泊イベントが、旅行業法上の旅行業に抵触すると、旅行業者としての登録が必要になります。

旅行業法上の「旅行業」とは、以下の2点であるとされています(法2条)。

  1. 「報酬を得て」
  2. 「法定の事業」を行う場合

旅行業法上の「報酬」とは

旅行業法上の『報酬』とは、何かというのが問題になります。

国土交通省の旅行業法施行要領では、経済的収入を 得ていれば報酬とされています。

もちろん、交通費や宿泊費など、イベント参加に必要な実費を徴収している限りは『経済的収入』はなく『報酬』ではないとされ、「参加を呼びかける広告費、通信費も含まれているのだとしても、それらが実際の出費である限り『報酬』ではありません」とされています。

旅行業法上で『報酬』に当たるのは?

ただし、以下のような場合には、「報酬」に当たるとされています。

企画旅行のように包括料金で取引されるものは、旅行者から収受した金銭は全て一旦、事業者の収入として計上されるので、報酬を得ているものと認められます。

また、行為と収入との間には、直接的な対価関係がなくても、次の場合には報酬を得ているものと認められます。

  1. 旅行者の依頼により無料で宿を手配したが、後にこれによるバックマージンを旅館から受けている
  2. あっせん事業等、旅行業以外のサービス事業を行う者が、当該サービスに係る対価を支払う契約の相手方に対し、その見返りとして無料で運送又は宿泊のサービスを手配している場合

ただし、バックマージンについて、参加者のために使用した場合(参加者の飲み物代など)には、「報酬」ではなくなります。

以上のことからすると、費用の内訳を明示せずに「旅行料金」や「参加費」などの名目で一括して料金を集めている場合には、上記「報酬」になります。

参加者から費用を徴収する場合には、実費としての項目と費用を明示して、集めるようにしましょう。

法律上の「事業」とは

旅行業に当たるためには、「法定の事業」を行うことが定められています。

ここでいう「事業」とは、どういう場合をいうのでしょうか?「営利目的」でないものも含まれるのでしょうか。

この点、旅行業法施行要領では、次の通りになっています。

国、地方公共団体、公的団体又は非営利団体が実施する事業であったとしても、報酬を得て法第2条第1項各号に掲げる行為を行うのであれば旅行業の登録が必要である

この要綱を見る限り、営利目的でなくても、上記の「報酬」に当たるのであれば「事業」になってしまう可能性が高いです。

また、法律上の「事業」とは、一般的に「反復継続する事業」のことを言います。

例えば、年1回だけの事業なら「反復継続する事業」とはいえないと思いますが、季節ごとにイベントを行う(年4回など)となると「反復継続」と言われてしまう可能性があります。

旅行業法の解釈の明確化も

観光庁は、今月中に自治体主催のツアーの解釈の明確化をする通知を都道府県に行う準備を進めていることを明らかにしました。

自治体のツアー実施が可能に、観光庁が都道府県に通知へ、旅行業法違反の指摘で解釈を明確化

上記はあくまで自治体主催のツアーのことですので、一般の事業者には直接当てはまらないかもしれませんが、一定の参考にはなります。
今後の法令の解釈の行方に注目です。