資産管理プラットフォームを運営するにあたり、事業者として法的に注意すべき点はどこにあるのでしょうか?
資産管理プラットフォームとは、ウェブやスマートフォン上で、個人が家計管理をしたり、複数の銀行や証券会社、保険会社等に分散している資産・口座情報をワンストップで管理することにより、個人による資産管理を可能にするもの(いわゆる「家計簿アプリ」)や、中小企業向けの会計サービス等をいいます。
日本においては、代表的なものとして、家計簿アプリ「マネーフォワードME」「Zaim」、クラウド会計ソフト「freee」等が存在します。
資産管理プラットフォームは、預金者の委託を受けて、インターネットを使用する方法により、「預金口座に係る情報を取得し預金者に提供する」(銀行法2条17項2号)ものであるため、電子決済等代行業者に該当します。
FinTechの進展に伴い、銀行システムの安定性・利用者保護を確保しつつ、銀行と電子決済等代行業者との連携および共同(オープン・イノベーション)を促進するための制度的枠組みを整備するため、2017年成立の改正銀行法においては、電子決済等代行業者および銀行の双方に一定の義務が課されています。
銀行法上、電子決済等代行業者が遵守すべき規制は以下のとおりです。
電子決済等代行業者は決済システムの安定性に影響を及ぼし、また一般利用者の口座情報等という機密性の高い情報を取扱う業務でもあることから、電子決済等代行業の登録制度が存在し、かかる登録を受ける必要があります。
電子決済等代行業者は、あらかじめ、インターネット等により、利用者に対し、以下の事項を明らかにしなければならないものとされています。
電子決済等代行業者は、各銀行との間で、以下の事項を含めた契約(API利用契約またはスクレイピング利用契約)を締結することとされています。
電子決済等代行業者は、電子決済等代行業を開始した時、また銀行等とのAPI契約を締結・変更した時等、半期ごとに一回、一括して当局に事後届出を行うことが義務付けられています。
また、電子決済等代行業に関する総勘定元帳を作成し、10年間保存する必要があり、事業年度ごとに報告書を作成し、賃借対照表・損益計算書を添付して当局に提出する必要があります。
資産管理プラットフォームを運営する事業者は、利用者の資産に関する情報をもとに、投資や保険等の分野への進出も検討しやすいと考えられるところ、近年では、投資運用等含めた多種多様な金融サービスをワンストップで提供する仲介業者に係る規制の検討が進められてきます。
従来、そのような仲介業者の横断的規制はなく、仲介の機能ごとに異なる規制が存在し、横断的な仲介サービスを提供する場合には、複数の登録等が必要となり、高い参入障壁が存在したためです。
そこで、2020年6月、金融サービスの利用者の利便の向上および保護を図る観点から、金融サービスの仲介を一つの登録で行うことができる「金融サービス仲介業」が創設されます。
そして、新たな仲介業に参入ようとする事業者には、仲介業務と電子決済等代行業を併せ営むニーズがあることを考慮し、情報通信技術を利用して金融サービス仲介業務を行う金融サービス仲介業者は、一定の要件を満たす場合、銀行法上の電子決済等代行業の登録申請書記載事項を記載した届出書を提出することで、銀行法上の登録をうけることなく電子決済等代行業を行うことができる特例が設けられています。