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ITスタートアップ企業にとっての株主間契約のポイント

IT企業のための法律

株主間契約とは

株主間契約では、投資後の発行会社、経営株主及び投資家の間での権利関係について取り決めたものになります。

中心的な内容としては、投資後の経営に関する事項や、情報開示に関する事項、投資家のイグジットに関する条項が定められています。

株主間契約は基本的には全株主と締結されることが多いですが、エンジェル投資家等の一部の投資家を含まないケースもあります。

そうした投資家を含まないようなケースであれば、当該株主間契約の当事者とならなかった投資家との間で株主間契約とは別に財産の分配に関する契約を結ぶことになります。

株主間契約における一般的な条項

(1) 優先株主等の定義

株主間契約では、立場の異なる多数の株主が当事者となりますので、第 1条において定義規定が設けられていることが一般的です。

普通株式、普通株主、優先株式、優先株主など株式の種類に応じた定義や、多数優先株主のように一定数の優先株主を指すような定義を設けてい ることもあります。

このように定義することで、承認事項の際に一部の株主のみで承認ができるようにするなど、投資家間での合意形成の方法を明確化したり、柔軟な対応ができるようにしたりすることができます。

(2)役員指名権・オブザーバー指名権

投資契約上で、役員指名権・オブザーバー指名権について定めることがありますが、 株主間契約においても、これらの権利を定めているケースがあります。

株主間で契約を締結しますので、一部の投資家のみが取締役指名できる旨を規定したり、その選任手続や解任手続に必要な措置をとるように定めが設けられたりします。

なお、主たる投資家であるリードVC(ベンチャーキャピタル)に取締役の指名権を認め、他のベンチャーキャピタル等にはオブザーバーの指名権が規定されることもあります。

(3) 売却請求権(ドラッグ・アロング・ライト)

この権利は、同時売却請求権のほか、「強制売却権」というような呼び方をされることがあります。

一定の要件(発行済株式総数の過半数を有する株主や、発行済株式の総数の2/3を保有する優先株主等の一定の株主の承諾その他)がある場合に、他の株主に対して買収に応じるべきことを 請求する条項になっています。

この条項の意義の一つは、ベンチャーキャピタル等の投資家がイグジットする場合に、具体的な買収提案があるものの、少数株主が反対しているようなケースで買収を受けることができないというような事態を回避することができるという点にあります。

この点は、投資家のみならずベンチャー企業の経営株主側にとっても有利に働くものといえます。

もう一つの意義は、投資家と経営株主側の意見が対立した場合であっても、投資家として買収提案に応じるよう請求することができるという点にあります。

ベンチャー企業側としてはどのような場合に行使可能か、すなわち「一定の要件」がどのように定められているかを特に確認すべきでしょう

これから会社を大きくしたい、あるいはもっと大きな買収提案を待ちたいと いうような状況で、同時売却請求権を行使され、経営株主側として株式を手放さざるを得ないという事態も想定されます。

そのため、「一定の要件」 を定めるにあたり、買収提案の規模の要件を設けたり、経営株主の承諾を追加したりするなどの対応も検討すべきでしょう。

なお、本条項は、反対する可能性のある株主全員に対して拘束力を及ぼ しておく必要がありますので、その意味において全株主を当事者とする株主間契約において合意すべき条項といえるでしょう。

(4) 売主追加請求権(タグ・アロング・ライト)

株主の一部が第三者に株式を売却しようとした場合に、自らも同一条 件で第三者に売却できるように当該株主に求めることができるという権利です。

多数派の株主がイグジットする場合に、少数株主がこれに追随して株式を譲渡することができますので、少数株主としてはイグジットの機会を確保することができるというメリットがあります。

当該第三者が当初以上の株式を引き取らないということも考えられますので、そのような場合を想定して、それぞれが売却する株式の数量を調整 するような条項や売主追加請求権を行使した者の株式から売却対象とするような条項が設けられていることがあります。

(5)他の株主等の参加

株主間契約締結時に存在した株主以外の第三者から出資を受けるような場合や株式譲渡を受けるような場合の規定です。株主間契約は基本的には全株主が当事者となり、それを前提とした契約となっています。

そのため、当該株主を契約当事者とするために、加入させるための条項が設けられています。