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「医薬品や化粧品、健康食品についての広告基準(厚生労働省)」では「大学との共同研究」などの表現はOK?【2021年5月加筆】

インターネット法律

厚生労働省から「医薬品広告基準についてQ&A」が公表

2018年8月8日、厚生労働省から、医薬品や化粧品、健康食品についての広告基準が発表されました。

医薬品等広告に係る適正な監視指導について(Q&A)

医薬品、化粧品、健康食品は、広告の仕方について、薬機法(旧薬事法)のもと、広告基準が指定されています。

医薬品等適正広告基準の改正について
インターネットで化粧品、健康食品、美容商品を販売するには薬機法(薬事法)に気をつける!

今回は、新しくQ&Aが出されましたので、この内容について、見ていきます。

これもダメ?医療広告のNG表現

平成30年8月8日に厚労省から、広告に関する新たな通達がありました。

これまで問題ないとされていた「ドクターズコスメ」「大学との共同研究」「医師監修」という表現を見直す必要が出てくることが予想されます。今回は通達による規制の変更点を見ていきましょう。

新基準を読み解く

厚労省から発表された新基準では、化粧品広告で、「大学との共同研究」という表現が禁止されています。

しかし、「ドクターズコスメ」「医師監修」のような表現については明言されていません。禁止されている新基準は、以下の通りです。

  • 主体:大学、医師、学会が
  • 禁止される行為:共同研究、監修、開発

厚労省などの通達は、法適用のルールとなるため適用範囲を広げすぎないように、簡潔な文章になっていることが多く、記載のないケースが多いです。

記載の趣旨まで考えて読み解いていきましょう。

これまでの医療広告の規制と新基準のポイント

化粧品の広告規制(従前)

化粧品の広告規制は、薬機法(旧薬事法)の解釈基準である医薬品等適正広告基準に準じます。

この医薬品等適正広告基準においては、医師等の推薦の禁止事項について、次のように定めています。

  • 主体:①医薬関係者、②理容師、③美容師、④病院、⑤診療所、⑥その他医薬品等の効能効果等に関し、世人の認識に相当の影響を与える公務所、学校又は団体
  • 禁止される行為:指定し、公認し、推せんし、指導し、又は選用している等の広告をすること

医師や大学は「ⅰ主体」に該当しますが、共同研究や監修などは「ⅱ禁止される行為」には該当しないため、化粧品広告としてこれまで問題ないと考えられてきました

化粧品の広告規制(新基準)

化粧品のケースで、通達で明示的に禁止されたのは「大学との共同研究」です。

ただし、通達には「共同研究」という表現自体が、『医薬品等適正広告基準10の推せんに抵触する』との記載もあります。

よって、医師や学会などの共同研究という表現も、今回の基準に照らすと、違法ということになります。

また「ⅱ禁止される行為」についても、今回の趣旨が大学や医師など専門家の権威を借りる広告の警告なので、「共同研究」だけでなく「監修」や「認定」といった行為も含まれる可能性が高いです。

ドクターズコスメはNG?

ドクターズコスメ」という表現は、医師の「共同研究」は「監修」といった表記は、違反広告となるとあるので控えるべきと考えられます。

医師が開発」も、今回の通達の趣旨が大学や医師など専門家の権威を借りる広告の警告ということを踏まえると、違反広告となる可能性が高いと考えられます。

健康食品の広告規制(従前)

サプリなどの健康食品の場合は、これまでも病気の治療や予防、健康の保持増進の効果を明示又は暗示させることは、未承認の医薬品広告となり厳しく取り締まられてきました。

厚労省からの通達等でも、医師の談話、学説などを引用して、効能効果を暗示させることは違反広告となる旨の記載があります。

健康食品の広告規制(新基準)

健康食品は、これまでも病気の治療や予防、健康の保持増進の効果を明示又は暗示させることが禁止されているため、新基準による広告の取扱いに変更はないものと考えられます。

このような効能効果の暗示にならなければ「共同研究」や「監修」といったワードは使用しても、問題ないと考えられます。

総括

今回の厚労省の通達の趣旨は、専門家の権威を借りる広告に対しての警告です。

そのため、明言されていない表現や行為についても趣旨を踏まえて考えなければなりません。

最終的にNGな表現かどうかは広告全体から判断することになりますが、このような通達の改正も含めて規制を把握しておきましょう。