DeNAが運営する「モバゲー」の利用規約の一部が不当であるとして、埼玉県の適格消費者団体が規約に基づく契約の差し止めを求めていた訴訟で、東京高裁は規約の不明確性を認めました。
どのような利用規約は事業者が一方的に定められるもので、事業者側に有利に作ってしまう傾向にありますが、今回どのような条項が問題になったのでしょうか?
モバゲーの利用規約には、以下のような規定をしていました。
これらの規定が消費者契約法に抵触するものとして適格消費者団体が主張していたという裁判です。
適格消費者団体とは、消費者庁長官の認定を受けて、ユーザーの利益のために、法律上の差止請求権を行使する団体をいいます。
BtoCサービスをしている事業者は、法令違反があると同様の訴訟を提起される可能性があるので、注意が必要です。
消費者契約法では、事業者の責任の全部を免除、または責任の有無を事業者側に決定させる権利があるような条項は無効になります。
また事業者の故意または重過失による責任についても一部免除や責任の限度の決定を事業者に権利がある条項も無効とされています。
たとえば「いかなる理由があっても当社は一切の損害賠償責任は負いません」や「当社に故意または重過失がある場合でも賠償責任は負いません」といった条項です。
また、事業者が故意または重過失がある場合でも、「当社が負う賠償責任は●●円を限度とします」といった損害賠償の上限規定についても無効になります。
また、ユーザーの利益を一方的に害する条項も無効とされており、以下のようなことが挙げられています。
また上記とは逆に消費者が事業者に対して負う賠償責任を通常よりも加重する条項も無効とされています。
たとえば事業者に通常生ずべき平均的な損害額を超える違約金や年14.6%を超える遅延損害金の定めは超える部分については無効です。
改正民法の平成29年改正では、利用規約(定型約款)に関する利用規約規定が盛り込まれました。
120年ぶりに改正民法が成立!利用規約や約款についてのルールが明確になりました
利用規約では、利用規約を契約内容とする合意があった場合、または利用規約を契約内容とする表示を相手方に示した場合にはその約款のそれぞれの条項についても合意があったものとみなされます。
しかしやはりこちらでも一定の制限が設けられており、ユーザーの権利を制限し、義務を加重するもので、社会通念と信義則に反して相手方の利益を一方的に害する条項は合意がなかったものとみなされます。
本件で一審のさいたま地裁は「モバゲー会員として不適切であると当社が判断した場合」という条項について、著しく明確性を欠き、複数の解釈の可能性が認められ「判断」にあたって極めて広い裁量があるとして不当としました。
また、東京高裁は事業者は消費者にわかりやすいよう配慮する努力義務を負うと指摘しました。
近年ウェブサービスの利用規約にあたっては、本件と同様の免責条項や運営会社の判断によるアカウント停止措置条項が盛り込まれた規定が広く利用されています。
しかし、今回の訴訟で消費者に一方的に不利に解釈しうる条項は違法となる可能性が出てきています。
今回の判決で、ウェブサービス事業者は、今使用している利用規約を見直すことが重要と言えます。せっかく作成した利用規約が無効とならないように、事業者としては、きちんとした条項を作成するようにしましょう!