IT法務・AI・暗号資産ブロックチェーンNFT・web3の法律に詳しい弁護士|中野秀俊
グローウィル国際法律事務所
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バーチャル(電子)株主総会の注意点を弁護士が解説

IT企業のための法律

株主総会もバーチャルで行う時代

新型コロナウイルスの影響もあり、株主総会も直接に集まらず開催されることが増えてきました。2020年に経済産業省から「ハイブリッド型バーチャル株主総会の実施ガイド」 が発表されました。

株主総会の電子化対応については、①招集手続関連の電子化、②議決権行使関連の電子化、③株主総会の場自体の電子化の3つのパートがあります。

企業の持続的成長や中長期的な企業価値の向上を実現する上では、企業と株主・投資家が建設的な対話を行うことが重要であると考えられているところ、実施ガイドは、対話プロセスの中でも、株主総会当日の会議体としての側面から検討されたものです。

バーチャル株主総会には、物理的な場所で株主総会(リアル株主総会)を開催することなく、取締役や株主等がインターネット等の手段を用いて株主総会に会社法上の出席をする「バーチャルオンリー型株主総会」と、リアル株主総会の開催に加え、インターネット等の手段を用いた出席・傍聴等を認める「ハイブリッド型バーチャル株主総会」があります。

会社法では、株主総会の招集にあたり、株主総会の「場所」を定めなければならないとしていることから、バーチャルオンリー型株主総会は難しい面があると考えられています。

そのため、現行法制で可能なのは、ハイブリッド型バーチャル株主総会です。

実施ガイドも、ハイブリッド型バーチャル株主総会について、現行法の枠内で何ができるか、商業上利用されている現在の技術を前提に、法的・実務的論点、具体的取扱いを整理しています。

バーチャル(電子)株主総会の法的論点

実施ガイドでは、「参加型」と「出席型」の概念を整理しました。

  1. リアル株主総会の開催に加え、リアル株主総会の開催場所にいない株主が、株主総会への法律上の「出席」を伴わずに、インターネット等の手段を用いて審議等を確認・傍聴することができる「ハイブリッド参加型バーチャル株主総会」
  2. リアル株主総会の開催に加え、リアル株主総会の開催場所にいない株主が、インターネット等の手段を用いて、株主総会に会社法上の「出席」をすることができる「ハイブリッド出席型バーチャル株主総会」

参加型と出席型の違いは、インターネット等で株主が法的に「出席」するのかという点です。

物理的出席とインターネットによる出席との各種の違いは、物理的な出席は同時間帯に1社にしかできないが、インターネットによる場合は同時間帯に複数社に出席することが可能です。

また株主が実際に会場に来訪して質問する場合と比べ、インターネットからのコメント送付は、心理的ハードルが下がる上、コピー&ペーストで同じような質問を同時に複数社に送ることも可能になります。

さらに、システムの不具合で会社と株主との通信にトラブルが起きることもあり得るが、その原因は、会社側の原因であるとは限らず、株主側の不具合に起因する場合もあり得ます。その他、物理的出席による総会との比較で各種の法的論点があるのですが、以下の視点が重要であるとの考え方に基づき、各種論点が整理されています。

  • リアル株主総会を前提に形成されてきた「あるべき実務」をネット参加者についてそのまま当てはめることはできない
  • リアル株主総会があった上での追加的選択肢としてバーチャル株主総会がある
  • リアル株主総会との違いに伴うバーチャル株主総会の制約を事前に明示しておく株主の不利益を緩和する

バーチャル(電子)株主総会を行う場合には、是非「ハイブリッド型バーチャル株主総会の実施ガイド」を参照してください。